心霊現象と恋愛の修羅場が怖い件。

第1話 恐怖の団地に行ってみよう!!

投稿サイトで一つの団地が話題にあがりました。曰くその団地は四方が墓地に囲まれており、昼間から暗い雰囲気を漂わせているという。



数多くの入居者がいるが、しょっちゅう怪奇現象が起きる為、不気味がって直ぐに退去してしまう人も多いのだそうだ。それでも格安の家賃目当てで入居する人間も多く、未だに数多くの怪奇現象が伝えられ続けている。


その中でも有名な話が一つある。

301号室の住人は夜遅くに仕事から帰りアパートの階段を登ろうとした時、「お兄さん、お兄さん遊びましょう…」

と背後から子供が声をかけてきた。住人はビックリしてパッと振り返ると黄色のカラー帽子を鼻のところまで深く被った小さな子供が立っていた。こんな夜遅くに外に出ている子供を一瞬不気味に思ったが住人は優しく声をかけた。

「坊や、ママはどうしたんだい?」

「ママはね、もういないの…」

「いない?」

「ずっとまえにね、ぼくのことがきもちわるいってすてたの」

そう言うと黄色の帽子を取り住人へと顔を向けた。何とその顔には数え切れないほどの無数の目が覗かせた。

「うわああああああ」

住人は叫び慌てて階段を駆け上り自分の部屋に急いで逃げ鍵をかけた。

何とか自分の部屋に逃げられたと安心した時、耳元で「お兄さんも僕を捨てるんだ…」



「と、これが団地に潜む恐怖の子供って話です。どうです眞上まがみ先輩、興味ありませんか?」

須永美鈴すながみすずは今の怪奇現象の噂の話をした後、そう問いかけた。

「と、言われてもなぁ…、その団地何処にあるか分かってるの?」

「勿論です、埼玉の川鳴かわなき市です」

と我が物顔で腕を組んでいる。

「遠っ!まぁ確かに興味はあるんだけどさ、あんまり遠出するのも面倒臭いよなぁ」

「何言ってるんですか、ずっとボッーとしてるだけじゃ、名門暁月あかつき大学心霊サークルの名が泣きますよ」

と須永は机をばんっと叩く。

暁月大学の心霊サークルは十数年前にとある村の心霊写真を撮り、かの有名な心霊雑誌やテレビに紹介された事があるという実績があり、その時は部員も二十名程いたという。が今は部員も俺を含めて3名とギリギリで存続しているに過ぎない。

「今、このサークルにも実績が必要なんですよ!!その為にも行きましょう、埼玉の田舎といっても電車で行けば2時間くらいですから日帰りで行けますし」

「分かった、分かった。そしたら次の土曜にでも行くか、あいつ今日来てないけど呼ぶのか?」

「しーちゃんですか?数少ない部員なんですから当たり前じゃないですか」

しーちゃん、羽原詩織はばらしおり。もう一人の部員である須永美鈴と同じく一年生だ。

ちなみに俺は唯一の男性部員で二年生である。私が入部した時は先輩に男性部員もいたし同級生もいたが先輩たちは卒業、同級生は何故か退学やら、他のサークルに入ったからと来なくなり二年時には俺一人でサークルをどうしたものかと考えていたが新入生で二人が入ってきてくれたおかげで無事存続しているという訳だ。そんな恩義と元の気の弱さも相まって後輩に頭が上がらないという訳だ。


「先輩、何でボーッとしてるんですか」

物思いにふけっていると何時の間にか美鈴が俺の目の前に立ち仁王立ちをしていた。

「わっ、急に目の前に来たらビックリするだろ」

「先輩がボーッとしてるのが悪いんじゃないですか」

「と、とにかく、土曜だろ?取り敢えず大学前に集合で良いんじゃないか?」

「全くもう…先輩遅刻しがちなんですから当日はしっかりしてくださいよ!!」

こうして俺は後輩二人といわく付きの団地へと向かう事になった。それがあんな事になるとは知らずに…。

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