600文字 雪合戦

ルルルルルルル

600文字 お母さんは大人?

「すごい!お母さん雪だよ!辺り一面真っ白!」


「そうね。転ぶと危ないからあんまり走り回らないでね」


「はーい!」


そう言って娘は公園を走り回り、たまに転んでは洋服を濡らしている。子供だなと思う。


「あんた、娘が楽しそうなのにため息なんてついて」


「寒いし足が濡れる。良い事なんてないわ」


「そうね」


私の母、つまり娘にとってのお婆ちゃんは、何故か嬉しそうに笑った。


「なによ」


「昔はあんたもああやってはしゃいでたなって。確かこんな雪の日だったわ。」


「きっと大人になったのよ」


「あんたが?」


「ほら、現実的な事考えるから、大人は雪を喜べないって言うでしょ?」


「子供ねぇ」


「はぁ?」


「お婆ちゃんはね、雪が降って嬉しいの」


「なんで?」


「見てごらんなさいあの笑顔」


娘は無邪気に、楽しそうに雪の塊を転がしている。


「あんたが小さい時もそうだった。雪は子供を笑顔にさせる。大人ってのはね、自分の足が濡れようと、寒さに震えようと、それよりあの笑顔が見たいって、思える人だと思うな。」


勿体ぶった言葉に、私ははぁとため息混じりに返事する。


「あんたはせいぜい大人ぶってれば良いのよ。それでお婆ちゃんは満足」


そう言うと、朗らかに笑った。


「お母さーん!えい!」


「ぶっ」


娘が投げた雪玉が、私の顔面に当たった。

まったくもう、子供なんだから!


「やったなこの!」


私は雪玉を作って、娘にぶつけた。

お婆ちゃんは隣で笑っている。

まぁ、たまには雪も悪くないか。

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