アリス【主人公】の転生 15

「ふうぅぅ…やっぱ最高…日本人といえば風呂でしょ」


 友里との菊生寮案内ツアーが終わると、簡単ではあったが友里の手製の晩御飯を食べ終わると、自分の部屋に案内される。


 寮内は結構豪華な内装に関わらず、個人の部屋はこじんまりとしていた。


 アリスは最初、その光景に唖然する。


『最初みんな見たときはびっくりするんだよね、内装が豪華なのに部屋小さくない?って。でも、広い部屋が好きな人とかシンプルな部屋が好きな人とかいっぱいいるからデフォルトはこの大きさなの。最初はあたしか龍君に頼めば魔法で部屋の大きさとか内装とか自由に変えられるから言ってね。でもある程度魔法使うのなれてきたら自分で自由にリフォームしちゃっていいからね?』


 とのこと。


 その後、明日も早いという理由から寝るためにお風呂に行くよう勧められたアリス。


 だがお風呂が凄かった。


 作った人間の趣味なのか、それとも色んな意見を合わせた結果なのかは定かではないが、旅館の大浴場並みだ。


 しかもやはりここも内装がものすごく綺麗だ。過去に一流の建築家かデザイナーが転生でもしてきたのだろうかというぐらいだ。


「しっかし広いなー、内装すごいし。銭湯とか旅館とかのお風呂等のデザインを掛け合わせた感じだなあ。それに浴槽もひっろいなー!これ普通に泳げんじゃね?」

「本来はマナー違反だけど私は気にしないから大丈夫だよ!」

「ほひ!?」


 慌てて振り返る。そこには生れたままの姿、俗に言う裸で立っている友里がいた。


「どうしたの?」

「いやー、どこから聞いてたのかなって…ははは…」

「んんー?全部ー!」

「ですよねー」


 恥ずかしくなったアリスは湯船で泳ぎ始め、友里は体を洗い始める。


「………」


 アリスは泳ぎながら友里を観察する。


 体を洗っているので前こそ見えないが、後ろ姿だけでも十分だ。


 ただ見えはするのだが……。


(後ろ姿だけだけど友里さん…スタイル良すぎね!?すらっと伸びた足…今日抱き着いた感じだと胸も大きいはず…いやー同じ女性としてあこがれるわー。んんん…)


 私は無意識に自分の胸と比べてしまった。


(…いやいやいやいや私まだ15だよ?これからだって!ま、まあ私ぐらいの年齢で大きい子はいるけど…)


「どうかした?」

「へ?え?うひゃあ!」


 体を洗い終えた友里の体がアリスの目の前に現れる。


 そして、抱き着いたときに感じた二つの双丘が目の前に現れたのだ。


「う、うっほほーい」


 自然に友里さんの胸と私の胸…私の視線が行き来する。


「え?あ!まさか胸?いやー別に面白いもんでもないよ?肩凝るだけだし、みんな見てくるし。まあ役に立つこともあるっちゃあるけどね」

「ふふふ、それは持たざる者の気持ちが分からん人間の言い分っすよー」

「でも、アリスちゃんはまだ15でしょ?15でそんな大きい子は居ないと思うよ?大きくても少し膨らんでいる程度じゃないかな?多分大丈夫だよ!もう少し大人になれば大きくなるって」

「ハハハ、ソウナレバイイデスネ」


 友里の言葉に何も感じなくなったアリスは静かに泳ぎを再開した。


「もう!変な空気になっちゃったじゃない!アリスちゃんこっち来て!」


 友里はアリスの手を掴むと湯船から出る、すると湯船の近くのドアへ歩いていく。


「ちょちょちょっと友里さん!?どこ行くんですか?」


 友里がドアを開ける。


 すると……。


「え?外?ていうか露天風呂?なんで?」


 アリスが見たのはこれまた大きな石造りで出来た露天風呂だった。


 上を見ると星空が輝いている。


 ただ一つ違うとすれば露天風呂の外に出た時の寒さを再現するためなのか、巨大なファンと冷房が設置されている点だ。


「友里さん…ここ外ではないですよね?機械あるし」

「そう正解!ここは室内に魔法で露天風呂を再現した場所なんだ!旧世界じゃ露天風呂作ろうとしても時間かかるし都市に作ろうと思うと場所の制限が出ちゃうからね、室内に作ろうとしても絵を描くだけでリアル感ないじゃない?でもこの世界ならそれができる!ってことで作りました!」


(なんでもありだなおい…)


「さあ!星空…まあ魔法で星空っぽく見せてるだけだけど、露天風呂に入ったら悩みとか吹っ飛ぶんじゃない?」

「は、はあ」


(まあいい入ってみるか)


 言われるがまま、露天風呂に入り空を見上げる。


 すると、旧日本の都会ではまず見られな星空が広がっているのだ。


(確かに癒されるなこれ…今4月だから春の星座か…まあ旧世界の星座も覚えてないから意味ないけど。ていうかそもそもこの星空がこの世界のなのか旧日本のなのかすら分からないけど)


「どう?綺麗でしょ?」

「そうですね……。……友里さん、一つ聞いていいですか?」

「何?」

「この世界に来るてん…識人は全員ユニークを持っているんですよね?私は女性で唯一聖霊魔法を…しかも一人で全部…」

「そうだね」

「じゃあ師匠は?不老不死がユニークだとは思えないし…ある女性の呪いとか言ってたから…じゃあ師匠のユニークは何なんですか?」

「あれ?聞いてない?聖霊魔法や闇の魔法以外ならいくらでも使えるの…言い方を変えると魔素量が無限なんだ」

「へ?どういうこと?」

「この世界の住人は…って言ってもまだ調べられてないから全員とは言えないけど、少なくとも私たちは皆魔素を持っているわ。その魔素が無いといくら杖を持っていても魔法が使えないそれどころか意識を失う…それは分かるよね?」

「はい」

「でも、今でも個人の魔素量を測定するすべがないのよ。わかる方法は魔素量……アリスちゃんが聖霊魔法を魔素量限界まで使って気絶したでしょ?つまり一回気絶するまで魔法を使わないと個人の魔素の量も分からないの。でもこれも曖昧でね」

「なんでですか?」

「個人の総魔素量の最大値は魔法を使えば使うほど増えていくんだけど、これにも個人差があってね。そもそも生まれた時の魔素量すらバラバラだからどれぐらい鍛えればどれぐらい増えるかっていう客観的なデータがまだ取れない状態なの。だから龍ちゃんのユニークに関してもほぼ永久的に魔法を使えはするけど、じゃあ客観的にどれぐらい魔素があるのかは分からない。とりあえず無限に魔法を打てるユニークとしかわかってないの」


 ここでアリスは聖霊魔法を使った時のことを思い出す。


「じゃあ私があの時、聖霊魔法が使えたのは何のユニークなんですかね?」

「うーん、それは分からないかな。この世界の…今の日本の技術でも体内の魔素の位置や量を見つけることは出来てないし、人の中にある魔素は一種類だけで杖で魔法を使うときに聖霊魔素に体のどこかで変換されるって説もあれば聖霊魔法を使える人は普通の魔素以外に聖霊魔法の魔素もあるって説もあるからわかんない!」

「なるほど」

「だからアリスちゃんのユニークが何なのかは分からない。でも聖霊魔法を使えるユニークであることは間違いない。これが何を意味するのかは私にも龍君にも分からない。でもなにかしら意味はあるんでしょうね」

「そうですか…でも、私のユニークが何であれこの世界にこの力を持ってやってきたのはやっぱり意味があるんですよ!そう考えた方が面白いし…ってあれ?」

「ん?どうしたの?」


 アリスは何故か分からないが無性に時計を確認したくなった。


 体内時計が告げているのだ、もう寝る時間だと。


 だが時計が無いことが分かると、遅れるよりは良いかと湯船から出ようとする。


「そろそろ上がりますね、のぼせそうだし…それに明日も早いんで!」

「え?もうそんな時間?あ、ここに時計なかったんだ。置いておこうかな。じゃあ今度は学校で会おうね!」

「へ?私が行くのは魔法学校じゃないの?」

「そうよ?あたしはそこの事務員だから」

「あ、そうなんだ…。じゃあ学校でまた話せるね!おやすみなさい」

「おやすみー!あ、アリスちゃん!」

「なんです?」


 友里は拳をアリスに向けていた。


「頑張ってね主人公!」

「……はい!」


 アリスも突き返す。


「よく男がやってるじゃない?一度やってみたくて…」

「ははは、なるほど」


 そのままアリスは髪を乾かし、自室へ戻って行った。

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