アリス【主人公】の転生 9.5

 気が付くと、アリスは立っていた。しかし、先ほどまでいたテントのベッドではなく、まったく知らない空間、どこを見渡しても真っ暗の空間に気づいたら立っていたのだ。


(あれ?ここどこ?私さっきまでベッドで寝てたよね?つか暗い!)


「ちょっと龍さーん!ここどこ?なんか変な魔法使ったんでしょう!?」


 この世界に来て出会った人は龍しかいないため、何度も名前を呼ぶ。しかし答えない。


「もう!なんなのよここは!?真っ暗だしひんやりしてるし!なんにも見えない!」

「ふふふふ」

「…っ!」


 不意に感じた寒気と気配、そして女性?と思わしき声にびっくりする。ゆっくり声のする方へ振り向くが何もいない。


 だが、分かる。見えなくても少しづつこちらに近づいてくる気配を体が感じ取れる。すると、何もない真っ暗な空間から真白くすらっと伸びる華奢な腕が自分に向かって伸びてきたのを見るとすぐに離れようとする。


「っ!うそ!」


 離れようとするアリスだったが、何故か動けない。見えない何かに体を固定されているかのように。


 白い腕はアリスの顔を触ると、どこからともなく声がする。


「へえ、あなたが…、ふうーん、面白いわー」


 声は女性のようだが、どこか妖艶で冷たく重く、心に深く突き刺さるような声色だった。


 アリスはもはや声を出すことは愚か、抵抗もする気も起きない様子だった。


「残酷ねえ―、まだ小さいのに、大きな使命を負わされちゃったのねー、ふふふ」


(お、大きな使命?)


「そうねえー、早く魔法使いとして成長しなさいー、そうしないとー…」


 少しずつ声が近づいてくる。そして…、最後は耳元で。


「みーんな、死んじゃうわよー!ほーら!アハハハハ!」


 白い手はアリスの心臓めがけると突き破ろうとする。


 恐怖の臨界点を突破したアリスは思いっきり叫び、自由を得ようとした。


「ああああああ!」



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