第62話 おかしい・・・さっき増えたばっかりだよね!?(2)

まえがき

ちょっと長いです。

***************


「で、何かな?なんか大事な話し?」

「・・・はい。とても・・・とても大事な話です。」


 部屋に着くまでに聞いたんだけど、何やら大事な話があるんだってさ。

 アンジェリカちゃんが。

 なんだろうね?


 アンジェリカちゃん、緊張でガチガチになってるけど、大丈夫かな?

 そんな中、突然アンジェリカちゃんの肩を桜花が揉んだ。


「うひゃっ!?お、桜花さん!?」

「アンジェリカさん。肩に力が入り過ぎよ。もう少し落ち着きなさい。」

「・・・す、すみません。無意識に強張っていたようです。ありがとうございます。」


 いや、本当に何?

 どうしてこんな仲良いの?


「う〜ん?なんだろう・・・なんか二人共仲が良いね。」


 そんな僕に二人は苦笑するだけで何も言わない。

 

「さぁ、頑張って。見届けてあげるから。」

「・・・はい!・・・龍馬さん!私の話を聞いて頂けますか?」

「う、うん。何かな?」

「私は・・・私は!龍馬さんの事が好きです!愛しています!」


 なんだって!?

 でも・・・真剣な表情だ。

 なら、僕も真剣に聞かなきゃ!


「・・・私は・・・500年の時を生きてきました。その歴史は、ずっと打倒マリアとして生きてきました。・・・この容姿を見たらわかると思いますが、恋も知らない年頃の頃に私はマリアに時を止められました。実験として。」


「私は、両親を殺され、時を止められ、絶望と復讐の中に生きてきました。そして、同じ様な思いを抱える仲間と出会い、今のエデンを作るに至りました。

復讐心は歳を重ねるにつれ、段々薄れていきました。おそらく、ティアやクリミア、レーアのような子供達の面倒を見る事で、精神的に成熟していったからだと思います。」


 うん、そうだと思う。


「ですが、根底にはやはり、常にマリアへの恨みと、恐怖、そして、マリアを打倒出来る力への憧れが渦巻いていました。・・・以前、私が部屋で膝を抱えていた時を覚えていますか?」

「勿論だよ。」


 忘れるわけがない。

 辛そうだったんだから。


「まれに、あのように、心に抱えるモノが表に出てくる時がありました。それは、自分でも、どうしてもコントロールしきれない心の叫びだったのだと思います。ずっとずっと一人で耐えてきました。耐えて、耐えて、耐えて、耐え抜いて、そして・・・あなたに出逢った。」


「あなたとの出会いは衝撃でした。たった20秒で強化兵を蹴散らす強さ。この世界の強者と呼ばれて来た私やクリミアですら、その威圧だけで沈黙させる強さ・・・そして、大和くん達を導き、見守る強さと・・・膝を抱える私をそっと抱きしめてくれる優しさ・・・私はあなたにどんどん惹かれていき、そして・・・愛してしまいました。」


 春休みの事だね。

 その後も、灯里ちゃんの時、健流くんの暴走の時・・・アンジェリカちゃんが辛そうだった時、か。

 ・・・そうだったんだ。


「私は、初めての恋で戸惑いつつも、日増しに大きくなるこの想いが止められなくなりました。そして・・・桜花さんに相談したのです。桜花さんは優しかった。私の身の上を聞いてくれて、私にアドバイスと、諦める必要が無いことを示してくれました。」

「・・・桜花・・・」


 そっか。

 桜花はとっくに気がついていて、認めていたんだね。


「良いじゃない。私はアンジェリカさんの事好きだわ。一生懸命だし、みんなを導こうという強さもある。それに・・・あなたも見ていたでしょう?健流がマリアの攻撃を逃げずに受け止めた時、死ぬかもしれないのに、自分も逃げずに戦ったのを。私はそういう人は信用できると思うわ。」

「・・・そうだね。」


 あの時。

 マリアがケントゥムの力を使った時。

 アンジェリカちゃんは最後まで健流くんを補助しようと頑張ってた。

 僕は、しっかりと見ていたよ。


「龍馬さん・・・私はあなたを愛しています。どうかこの愛を受け入れて頂けないでしょうか?どうか・・・一人ぼっちの私と共に歩んでくれませんか?お願いします。」


 アンジェリカちゃん。

 思えば、この子はずっと頑張っていたね。

 それでいて、みんなを支えようとしていた。

 くじけそうな時もあったようだけど、それでも、彼女の頑張りはよく伝わって来たし、優しさもよく分かった。


 彼女にも、幸せな人生を歩んで貰いたい。

 今までが不幸だったのなら、それを忘れるほどの幸せを。


「アンジェリカちゃん、顔をあげて?そして2つ約束できるかな?」

「なんでしょう?」

「この間、寂しかったり辛かったりしたら話てって言ったよね?これからは、僕以外の仲間にも出来るかな?」

「っ!!は、はい!出来ます!!」

「それと・・・複雑かもしれないけど、マリアとも仲良く出来る?」


 マリアも今は僕が幸せにしてあげる対象だからね。


「・・・出来る、と思います。わだかまりはあの時全て無くなったと思っています。」

「そっか・・・うん!わかったよ!アンジェリカちゃん、僕もいつも頑張っている君が好きだよ。そしてそれは愛に変わると思う。僕の婚約者になって下さい!お願いします!」

「えっ?えっ?なんで?なんで龍馬さんが頭を下げるのですか?お願いしてるのは私なのに・・・」


 混乱しているアンジェリカちゃんに、桜花が苦笑しながら言った。


「龍馬はね?受け入れる時は全部自分の責任にするのよ。それが龍馬の覚悟よ。だから遠慮はいらないわ。全力でもたれかかっても倒れないのは、アンジェリカさんも知っているでしょう?」


 アンジェリカちゃんは目を見開き、そして段々と嬉しそうな表情になっていった。


「こ、こ、こちらこそ!末永くよろしくお願いします!」

「うん、よろしくね?」

「・・・う・・・うう・・・」

「え!?なんで!?なんで泣いてるの!?」


 ええ!?なんで!?

 僕がおろおろしていると、そんなアンジェリカちゃんをギュッと桜花が抱きしまたんだ。


「よかったわねアンジェリカさん。それと、ようこそ。近い内に婚約者仲間に紹介するわね?・・・たくさんいるけど引かないでね?」


 大きなお世話です!

 ・・・言ったら殺されるけど。


「ばい”っ!大丈夫です”!!」

「ほらほら、そんなに泣かないの。可愛い顔が台無しになっちゃうでしょ?」

「う”う”〜・・・桜花さ〜ん・・・よかったよぅ・・・」

「よしよし。ほら、龍馬、何してるの?あなたも抱きしめてあげなさいよ。」


 あ、それもそうだね。


「う、うん・・・これからよろしくね?アンジェリカちゃん。」

「あ”り”がと”う”・・・龍馬さ”ん”・・・大好き”・・・」


 




 アンジェリカちゃんも泣き止み、回復魔法で赤くなった瞼を回復させた後、部屋に戻る僕達。

 アンジェリカちゃんははずむように歩いている。

 可愛いね。


 食堂に戻ってアンジェリカちゃんがガラッと障子を開き、


「みんな!やったよ!・・・ってなんだこれは!?みんな何やってるんだ!!」


 そんなアンジェリカちゃんの叫び声と、


「龍馬!見ちゃ駄目!!」


 いきなり目に衝撃!!


「ぐあっ!?目が!?目がぁぁぁぁぁ!?」

 

 なんでいきなり目潰し!?







 結局、どうも酔っ払って乱痴気騒ぎをしていたみたいで、長であるアンジェリカちゃんは大激怒!

 全員を正座させ説教をしていたよ。


 ・・・僕が怒られない側って珍しいかも。


 その後、正式に仲間入りをした事を伝え、またお祝いの酒盛りをしようとした幹部(主に女性)を止めて怒ってた。

 まぁ、笑顔で、だけどね。


 アンジェリカちゃん、しっかりと慕われているじゃないか。

 やっぱり君は一人じゃないよ。

 

 君にも素晴らしい仲間はいるんだ。

 ま、分かっているだけろうけどね。






 その夜。


「さて・・・どうしようかしらね・・・」


 桜花である。

 何故なら・・・


「う・・・ううう・・・」

アンジェリカちゃんが、三組横並びの布団に真っ赤になって戸惑っているみたい。


「アンジェリカさん・・・いえ、仲間入りしたのならアンジェリカと呼ぶべきかしら。あなたに決めさせてあげるわ。どうする?」

「・・・ど、どうしましょう・・・思い切って・・・いや、でも・・・」


 まぁ、急すぎるよね。


「・・・アンジェリカちゃん。そんなに気になるなら止めとく?僕はそれでも良いよ?」

「・・・いえ、女は度胸!一緒に寝て下さい!」


 え?

 大丈夫かな?

 まぁ、別にしなきゃいいのか。


「・・・僕は良いけど・・・」


 桜花を見る。

 

「何よ?」

「いや・・・なんというか・・・そんな心配しなくて良いよってさ。別に、一緒に寝たからって何かしようと思ってる訳でも無いしさ。そういうのは、アンジェリカちゃんの覚悟が決まった時で良いと思うんだ。無理しなくてもさ。」

「確かにそうだけど・・・ブツブツ(てことは私までおあずけって事じゃない・・・)」


 なんだか桜花がぶつぶつ言ってるけど・・・


「ん?桜花なんか言った?」

「べ・つ・に!なんでもありませんけど!?」


 なんで怒ってるの!?


「怒ってません!!」

「あ、あの・・・私は・・・覚悟を決めている・・・つもりです・・・けど・・・できれば最初は・・・」


 あ、ほら〜気を使わせちゃったじゃん。


「あ、そ、そうね。ごめんなさい。それは私が悪かったわ。・・・まずいわね、感覚が麻痺してきてるわ。・・・うん、そうね。ではこうしましょう。私は今から温泉に行って来るわ。そうね・・・一時間位のんびりして来ようかしら。だからその間に・・・ね?」

「え!?あの・・・は、はい!す、すみませんお気遣い・・・」

「何言ってるのよ。これは私の方が悪いわ。気を使えず、急かしたみたいでごめんなさい。ちょっと、みんなでいる事に慣れすぎたわ。駄目ね私・・・気をつけなきゃ・・・じゃ、行ってくるわね。」


 おお・・・珍しく桜花が狼狽している!

 まぁ、そうだよねぇ。

 最近、みんなでするのが増えちゃたから、なれちゃうよね・・・なんでこうなった?



 桜花が出ていき、アンジェリカちゃんと二人。

 緊張でいっぱいいっぱいになってるね。


「・・・あはは。こういう雰囲気はやっぱり慣れないなぁ。うん、少し話しをしない?」

「は、はい・・・その・・・すみません・・・」

「ん?別に謝る事じゃないんじゃない?」

「で、ですが・・・」

「うん、一旦落ち着こう。まず、僕が言いたいのはね?桜花を気遣ってしようと言うのであれば、僕は承服しかねるよ。」

「っ!!」


 これは僕のわがままだ。

 だって、あの時ですらそうだったんだから。


「だってね?僕はこういう事に、愛し合う以外の他の理由をつけたく無いんだ。ふ・ふ・ふ!この意思は筋金入だよ?なにせ命がかかった異世界での最終決戦前でも、同じ結論を出したんだからね!

「ふふふ・・・なんです?それ・・・」

「あはは。いや、婚約者の一人のお母さんがね?いざという時に踏ん張れるように、絆を深めなさいって発破をかけてくれたんだ。で、考えて出た結論がそれなんだよ。僕はどうしても、戦いを理由にそういう事をしたくなかったんだ。そんな事をしなくても、僕達の絆は負けないって思ってたしね。」

「皆さんは納得されたのですか?」

「うん。嬉しいって言ってくれたよ。」


 なんだか懐かしいなぁ・・・


「そうですか。本当に素晴らしい人達ですね・・・早く会ってご挨拶したいです。」


 アンジェリカちゃんも気になるよね。

 みんなの事は。

 よし!


「近い内に向こうに行ってみる?」

「え!?行けるのですか!?」

「うん。なんなら、僕と桜花の両親は、向こうに旅行に行った事もあるしね。アンジェリカちゃんも行こう?」

「はい!是非行ってみたいです!」

「よし。それじゃあ行こう。」


 いや、こうして話してるだけでも楽しいね。

 ん?

 アンジェリカちゃんが真剣な顔に・・・


「『グローアップ』」

「アンジェリカちゃん?」


 アンジェリカちゃんは能力を使って20歳位に成長した姿になった。

 こうして見ると・・・すっごく綺麗だな、やっぱり。

 

「龍馬さん。私の事、愛してくれますか?」


 勿論だよ。


「うん。これからは絶対に一人ぼっちにさせないよ。君もまた幸せになるんだ。いや、僕がして見せる。この先ずっと、ね?」

「龍馬さん・・・」


 アンジェリカちゃんを抱きしめる。

 そして、


「龍馬さん・・・ん・・・」

「アンジェリカちゃん・・・」


 お互いに口づけをし、そして・・・2人はそのまま布団の上で重なった。






「さて、それじゃあ今度は私の番ね?」


 桜花が帰ってきて、開口一番そんな事を言った。

 アンジェリカちゃんは今は満足して寝ているよ。


「まったく・・・いつからそんなエッチな女の子になっちゃったんだよ・・・」

「何よ。そんなのあなたのせいでしょうが。複数回するのも、複数でするのも、全部あなたがいけないの!」

「え〜?」

「変なスキルを貰って来るし、人数は次々増やすし、異世界とこっちでも私は気が休まらないのよ。少しはいたわりなさい!」


 ぐっ・・・!


「そ、それを言われると・・・何も言えない・・・」

「だったら態度で見せなさい。」

「わかったよ・・・ほら、桜花、おいで?」

「・・・龍馬ぁ・・・私だって不安に思うこと位あるんだからね?」


 だよね。

 ごめんね桜花。


「うん・・・ごめんね?こんな男で・・・」

「いいえ。私が欲しいのは謝罪の言葉じゃないわ。いっぱい愛して不安を無くして?」

「桜花・・・」

「龍馬・・・ん・・・」


 そして桜花とも一つになる。





 行為の最中、少しした時だった。


「アンジェリカ。あなたも来なさい。」


 突然の桜花の言葉。


 え!?

 てゆ〜かアンジェリカちゃん起きてるの!?

 ・・・ってそりゃ起きるか。

 桜花全然声押さえてないし。


「え!?え!?桜花さん!?ちょ、ちょ、ちょっと・・・あっ・・・待って・・・ああ!?」

「まったく・・・あなたはもう仲間なのよ?桜花で良いわ。後、敬語もいらないわ。」

「ひゃう!?どこ触りながら言ってるんですか!?あふ・・・ふあっ!?」


 桜花は、アンジェリカちゃんを捕獲し、色々いじくりまわしている。


「ほら。龍馬も!」


 でも、僕は分かっている。

 これは、アンジェリカちゃんが向こうでもすんなりこういう時に仲間入りできるようにするため、だね?

 本当に優しいんだからなぁ、桜花は。


 じゃあ、僕も頑張ろう。


「・・・はぁ、まったく桜花は・・・やれやれ・・・はむ。」

「あっ!?龍馬さんまで!?・・・だ、だめ〜!!」

「うふふ・・・可愛いわよアンジェリカ。はむ。」

「ひゃあああああ!?」












「・・・もう・・・だめぇ・・・」

「うふふ。アンジェリカ、寝言までこんな事言ってるわね。可愛い。」

「あのね桜花?初めてなのに二人がかり朝まですればそりゃそうなるでしょ?」

「あら?珍しく正論言うじゃないの。・・・ここ、こんなにしてる癖に。」

「うわっ!?い、痛いからそんなに力いれて握らないでよ!?」

「うっさいこのヤリチン!」

「酷い!?」

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