第44話 夏休みのおもひで〜長いキャンプの終わりに〜
「終わった・・・僕はもう・・・疲れた・・・よ・・・」
真っ白に燃え尽きた龍馬は、今、早苗の運転する車の後部で揺られている。
リディア達は、最後の力を振り絞った龍馬が、なんとか魔力を放出し、向こうに送り返していたので、車の中には、行きと同じ人員しかいない。
帰る直前のリディアの言葉が、龍馬の脳裏に刻み込まれる。
「良いですかリョウマさん?流石に今回の様に、半裸の女性に追っかけ回されるのは許容出来ません!反省して下さい!!」
「・・・はい。」
「次、同じ事があったら・・・ふふふ・・・リョウマさんの・・・あちらを、みんなで代わる代わるいじめ抜こうと思います。」
「ひぃ!?わ、わかりました!気をつけますぅ!!」
龍馬は、お尻を押さえて後ずさる。
それをじ〜っと見つめるリディア達。
・・・どうやら、冗談では無いようだ。
「それでは、オウカ、それとサナエ、ヒトミ、ヒロミ、リカ、近い内に、向こうで会いましょう。案内しますから。」
打って変わって、優しい表情になったリディアが、早苗達4人を見ると、4人は嬉しそうにした。
・・・どうやら、この4日間で打ち解け、そして・・・龍馬の扱いにも慣れた様だった。
こうして、帰路についている6人。
自然と、話はこの4日間の話となる。
「しかし・・魔法と言うのは凄いものね・・・疲れがまったく無いわ。」
運転する早苗がしみじみと言う。
「そうですね。痛みもありませんし。」
助手席に座る瞳がそれに答えていた。
「そうやね〜?これから、何かあったら、龍馬っちか桜花ちゃんをた〜よろっと!」
「だ、駄目だよ宏美ちゃん?必要最低限にしようねって言ってたじゃない。」
「そうよ?それが目当てでこういう関係になったって思われるのは嫌でしょ?」
「じょ、冗談ですって!!桜花ちゃん!?龍馬っち!?違うからね!?」
後部座席に座る宏美が、そんな風に言うのを嗜める梨花と早苗。
慌てて桜花と龍馬を見る宏美。
桜花は苦笑した。
「まぁ、そうね。問題に過失が無い限りは力になるわよ?だからそんなに慌てなくて良いわ。盛り上げようとしたのもわかっているし。」
「・・・あはは。ば、バレてるか・・・うん、そうする。ところで・・・」
龍馬を見ると、寝てしまったようだ。
かなり疲れていたらしい。
と、言うのも、お仕置きの時は、回復魔法を使うことは、禁じられているのだ。
「龍馬っちかなり頑張ったんだね〜。」
「まぁ、そうね。いつもの事とは言え、今回はかなり頑張ってたでしょうね・・・人数も一気に4人も増えたし。」
「・・・それについては、私達は何も言えないわね。」
「そうですね・・・まぁ、後悔もしていませんが。」
「う、うん。後悔どころか・・・幸せだって思うよ?」
宏美の言葉に桜花が応え、早苗と瞳と梨花が納得する。
運転している早苗以外が、微笑んで龍馬を見る
早苗も、運転席で、頬を緩ませている。
そんな時、桜花が真剣な顔で、バックミラー越しに早苗を見た。
「早苗さん。もし、この関係で誰かに何かを言われたら、絶対に隠さず、教えて下さい。私や龍馬なら、なんとか出来ると思います・・・いえ、違うわね。なんとかしますから。」
そんな桜花の気遣いを、早苗はとても嬉しく思った。
そして、
「桜花さん、違うわ。早苗、よ?」
「え?」
「あなたは正妻なのでしょう?だったら、私達は呼び捨てで呼ばなきゃ駄目だわ。歳なんて関係ないもの。現に、私よりずっと歳が上のエルマさんやセレスさんを呼び捨てで呼んでいるでしょう?」
「・・・わかったわ。これからはそうするわ、早苗。でも、勿論、公的には敬称で呼ばせて貰うからね?」
「ええ、そうしてくれると嬉しいわ。それと・・・ありがとう。もし、何かあったら、ちゃんと言うわね?」
「ええ。私も頼りにしているわ。常識的な面では、私よりもずっと頼りになるもの。お願いね?」
「勿論よ。任されたわ。」
2人は笑顔で話をしたのだった。
「・・・ふぁ〜・・・」
「あ、起きたね。龍馬っち!」
「よく寝てたね龍馬くん。もうお家着くよ?」
目を覚ました龍馬に、宏美と瞳が声を掛ける。
「そっか・・・ん?家?どこの?」
答える龍馬は・・・その言葉に違和感を感じた。
何故なら、当初の予定では、駅で解散の予定だったからだ。
「それは勿論龍馬くんの家、だよ?」
「へ?」
龍馬の疑問に、梨花が、答える。
ますます混乱する龍馬。
「はい、到着っと。桜花さん、お願い出来る?」
「はい。運転お疲れ様でした。少し待ってて。」
「ちょ、ちょっと?何が・・・」
早苗が運転する車が停車すると、車から桜花が降りて、龍馬の家に入っていく。
そして・・・
「ほら、龍馬くん?行くわよ?」
「???」
全員が降車し、早苗に促され、自宅に入っていく。
そして、そのまま居間へ行くと・・・両親が呆れた顔で座っていた。
「・・・と、言うわけで、この4人が新しく龍馬の婚約者になりました。」
「はっ!?」
「「「「よろしくお願いします。」」」」
愕然としている龍馬を他所に、瞳達が頭を下げた。
それを龍馬の両親は、苦笑しながら見た後、「こちらこそ、よろしくお願いします。」と頭を下げ、呆れたように龍馬を見た。
「お前・・・学校の先生と同級生の可愛い子たちまでなんて・・・」
「・・・本当に見境無いわね・・・皆さん、こんな龍馬ですが、よろしくお願いします。」
「・・・」
龍馬は何も言い返せない、というか言い返す資格も無い。
ガクッと肩を落とすのだった。
その後は、両親を交え、談笑をする。
「しかし・・・それぞれの親御さんは納得するのかね・・・」
「そうね・・・どうなのかしら?早苗さん?」
「・・・難しい、と思います。ですが、納得して貰おうと思っています。お義父様、お義母様、私達は、この関係になる前に、龍馬くんに突きつけられた事があります。」
「・・・何をかね?」
「それは、寿命の消失と、世界からの隔絶についてです。ですが・・・私達は、それすらも受け入れ、今があります。ですから・・・最悪の場合、両親との関係性が消失するのもやむ無し、と思ってはいます。もっとも、なんとか納得して貰おうとは思っていますが。」
「・・・早苗さん、駄目だよそれは。」
「龍馬くん?」
龍馬は口を挟んだ。
不思議そうにする早苗。
「僕がそれぞれのご両親の所に行って、納得して貰うまで通うよ。それが責任を取るって事だと思う。だから、触りだけ話しておいて。瞳も、宏美、梨花も、ね?」
「「「龍馬くん・・・」」」」「龍馬っち・・・」
その決意をした表情に、4人が頬を赤く染める。
そんな面々を見て、龍馬の父の明良と、母の実花は桜花を見た。
「桜花ちゃん・・・ごめんね?こんな息子で。」
「はぁ・・・桜花ちゃんにだけでも、貰ってくれたらいいなと思ってたらこんな風になっちゃうなんて・・・まったく龍馬ったら・・・」
申し訳なさそうに言う明良達に、桜花は綺麗な笑顔で、
「良いんですよ。惚れた弱みですから。それに、こういう所も格好いいですし、ね?龍馬がモテないよりも良いのでは無いですか?」
「限度がなぁ・・・」
「それよねぇ・・・」
「そこ!うるさいですよ!!」
しみじみと言う両親に向かって、龍馬が文句を言う。
ジロリと桜花が龍馬を見た。
怯む龍馬。
「龍馬、私のお義父さんとお義母さんに文句を言わない!!」
「・・・はい。」
そんな龍馬と桜花のやり取りに、全員で笑い声をあげるのだった。
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これで、キャンプ編は終わりです。
次回は、ちょっと異能が全てを変えた日、のクライマックスに続く話を入れようと思います。
おそらくそれで夏休み編は終わります。
その後は、その結末のせいで、また龍馬の婚約者が増えてしまう話になると思います。
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