第33話 急転直下(2) 異能が全てを変えた日 裏サイド 

今回も少し長いです。

流し読みで構いません。

一応龍馬視点で書かれ、この時点での推測なんかも書かれています。


あと、瞳達の絡む夏休みの計画に途中少し触れています。

こちらだけ読んで頂けている方には、大事な所はそこだけだと思います(笑)


あとがきもあります。

今後の予定・・・キャンプの話に触れています。

では、どうぞ。

*********************


「三上さん、本当にありがとうございました。」


 今、僕はアンジェリカちゃんの組織の執務室にいる。

 健流くんは現在、医務室で休んでいる状態だ。

 一応、目覚めたら連絡を貰う事になっているので、一度帰宅するつもりだよ。

 

 神力『空間』もかなり把握できたから、それを使えばすぐに来られるしね。


「良いんだ。健流くんは僕の弟分だからね。気にしないでよ。」

 

 頭を下げ続けるアンジェリカちゃんに頭を上げて貰う。

 さて、それよりも・・・


「アンジェリカちゃん、僕には気になる事が一つある。」

「なんでしょうか?」

「それはね、魔女の今いる場所なんだ。」

「・・・現在調査中なのですが、一向に判明しません。一体どこにいるのか・・・」


 僕はアンジェリカちゃんの調査結果の詳細を聞いた。


 これは・・・おそらく異界にいるね。

 いくらなんでも、神出鬼没すぎる。

 そして、管理者であるシータさんに把握出来ない異界・・・となると・・・もしかしたらセレスの時と同じ様に、管理者の補助者が関係しているかもしれない。


 僕が考え込んでいると、


「あの・・・三上さん?何か気になることでも?」


と、控えめに聞いてきた。

 そんなに気にする必要無いのにね。


「ああ、ちょっとね。確信を持ったら言うよ。さて、僕は一度戻るかな。」

「あ、はい!ありがとうございました。大和くんが目を覚ましたらすぐにご連絡します。」

「よろしくね。」


 こうして、僕は執務室を後にする。

 

 部屋に飛ぶと、


「で、どうだったの?」


 桜花が既に待ち構えており、僕のベッドに寝そべっていた。

 ・・・ごくりっ

 はっ!?いかんいかん!今はそんな事を考えていては駄目だ!


「お、桜花。そっちの話から聞くよ。こっちはちょっと込み入った話になりそうだからね。」

「・・・ふーん。わかったわ。じゃあ・・・」


 ぽんぽんとベッドの脇を叩く。

 ・・・え?まさか添い寝しろと?

 今そんな事したら・・・


「早く来なさいよ。何してるの?」

「お、お邪魔します・・・」


 くっ!?流石勇者(?)!手強い!!


「・・・もう。後ですればいいから、まずは話をしましょう?」


 見透かされてる!?


「わかり易すぎよ。それは後で、ね?」


 ・・・先じゃ駄目かな。


「駄目。」


 相変わらず心を読むよね・・・


「さて、じゃあ私の方から話すわね。」


 桜花は学校で瞳達と話した事について説明してくれた。

 要は、夏休み中にキャンプに行きたい!という事と、リディア達と会ってみたいという事(引率者は小森先生らしい)だった。

 それと、定期的に勉強会を開いて欲しいというものもあったらしい。


 僕や桜花は成績上位者だからね。

 瞳はともかく、宏美や梨花が教えて欲しいらしい。

 

 まぁ、良いんじゃないかな。

 僕も軽く勉強しておいた方が良いだろうし。


「じゃあ、キャンプに行くときに、リディア達を連れて行くってのはどうかな?」

「良いんじゃないかしら?問題は・・・」

「どっちでするかって事かな?」

「ええ」


 どうしようかな・・・向こうに行けば、こちらでの僕達の事を知っている人もいなくなるから、先生は気楽に過ごせそうだけど・・・いざって時に連絡がつかないのはまずいよね・・・

 その事を桜花に話すと、桜花も納得した。


「じゃあ、今回はこちらにしましょう。」


 これで、桜花の件は終了だ。

 続いて僕の方の話しを桜花に説明した。


「・・・なるほど。となると、シータさん?に確認する必要が出て来るわね。」

「そうなんだ。だから、健流くんが目を覚ましたら、一度しっかりと話した後、時間を見て、シータさんに話しを聞こうと思うんだ。桜花も来る?」

「勿論よ。こちらの管理者にも挨拶しておきたいと思っていたのよ。」



 こうして、情報交換は終了した。

 さて・・・


「龍馬・・・」


 可愛い僕の婚約者と仲良くしようかな。




 翌日、アンジェリカちゃんから連絡が来たので、『空間』で執務室に飛ぶ。

 すぐに、健流くんのいる医務室に向かおう。


「おはよう健流くん。もう大丈夫そうだね。」

「兄貴!?おざっす!」

「あれ!?龍馬さん、家に帰ってたんだよね!?」

「どうやって・・・」


 健流くんと灯里ちゃん、それと綺麗な女の子が僕に驚いていた。


「まぁ、それはおいおい。まずはアンジェリカちゃんの話を聞こうよ。」

「では・・・これからの事について話そう。・・・後、三上さん・・・アンジェリカちゃんはちょっと・・・せめて部下の前では・・・」


 僕がそう言ったら、アンジェリカちゃんが恥ずかしそうにそう言ったんだ。

 そうなの?


「あれ?駄目?う〜んじゃあどう呼ぼうかな・・・アンジェちゃん?・・・いや、アンちゃん?・・・何が良いかな・・・」


 僕が悩んでいたら、アンジェリカちゃんは更に顔を赤くして、


「い、いえ!アンジェリカちゃんで良いです・・・それよりも話を進めても良いでしょうか・・・?」


 というので、そのまま話しを進めさせて貰った。


「んっん!それでは大和くん。みんなの反対を押し切って探し回った感想はどうだったかな?」

「・・・心配をかけた、と思ってる。特に姫乃と灯里には頭が上がらねぇ・・・すまなかった。」

「わかっているならいいさ。君が一人で行動しても状況は改善しない。それがわかって貰えて良かったよ。」

「・・・ああ。ただ、なんとかしなきゃいけねぇって思いは今でも変わって無い。ただ、その方法が見つからねぇんだ。」

 

 健流くんはかなり反省しているようだね。

  

「そうだね。それはその通りだと思う。今、エデンでも、組織の諜報部を使って情報を集めてるけれど、それでも情報が出てこない。そうなってくると、日本じゃなく海外か・・・それとも・・・」


 あ、それについては僕から話そう。 


「多分異界にいるよ。」

「異界・・・というのはどういう所なのでしょうか?」


 アンジェリカちゃんも知らないか。


「異界、もしくは亜空間と言い換えても良いかな。今この世界と連続していない空間って感じかな?そこにいると思うよ。」

「・・・なんで兄貴はそんな事わかるんだ?」

「そりゃ、色々経験してるからね。予想くらいつくさ。」


 みんなは困惑してるね。


「龍馬さん・・・桜花ちゃんもそうですけど、何者なんですか?」


 ああ、灯里ちゃんが核心を聞いてきたか・・・言っちゃっても良いか。

 桜花の許可も貰ってるし。


「勇者でもなんでもないただの迷子・・・ってもう違うか。そうだなぁ・・・ここじゃない世界に迷い込んで、そこで色々あって強くなったんだよ。じゃなきゃ帰ってこられなかったからね。」

「・・・異世界転生って奴?いや、この場合、異世界転移か。」

「そうそう!灯里ちゃんの言うとおりなんだよ!いや〜大変だったんだよ?むこうには1年以上居たし、修行は更に別の異界で、多分数百年やってた筈だし、悪い神様倒さないと戻れないし、押しかけられるし・・・」

「押しかけられる?」


 あ!?余計な事まで言っちゃった!


「あっ!?いやいや!それは関係ないんだけど、とにかく大変だったんだよ。それで、帰還の術式を考えてこっちに戻ってきたんだ。時間をある程度調整して、桜花が行方不明になった3日後くらいにしてね」

「・・・なるほど、信じ難いですが、わかりました。それで、それほどの力をお持ちなのですね。」

「えっ!?アンジェリカさんもう信じたんですか!?」

「・・・それだけのものを見せられた・・・というか経験させられたからね・・・」


 ん?アンジェリカちゃんが何か遠くを見てる?

 何見てるの?


「・・・兄貴なら、なんとか出来るんですか?」


 ・・・だいぶ心が弱ってるね。

 ここは先輩としてしっかりと話さないと!!


「多分ね。」

「だったら!!」


 健流くんが必死に頼み込もうとする。

 でも、それじゃ駄目なんだよ。


「でも、僕が解決する事はないよ。」

「っ!!なんで!?」

「この物語は君たちの物語だ。僕は、君たちではどうにもならない事は手伝うかもしれない、でもこれは違うよ。」

「だけど!!」

「健流くん。君の友達がいなくなった経緯は、灯里ちゃん達に聞いたよ。」

「っ!!」

「正直、僕は女の子の考え方にはうといから、何故そうなったかは分かるとは言えない。でもね?そこに君の責任が無かったとも言えない。」

「龍馬さん!!それは魔女が!!」


 灯里ちゃんも反論してきた。

 でも、違うんだ。


「灯里ちゃん。確かに魔女が関係しなかったとは言わない。何せ、健流くんがえ~っと如月さんだったね?君を気絶させる為に殴ろうとした時まで、健流くんにはなんらかのパスが通っていたからね。おそらく魔女だろうけど。こちらの動きは筒抜けだったと思うよ。苦しんでる健流くんを見て嘲笑ってたんじゃないかな?」

「「「「!?」」」」

「ああ、今はもう遮断してるから心配しなくていいよ。」


 そう、あの後桜花と話しあったんだけど、魔女はかなり性格が悪いわしい。

 だから、状況を把握してたんじゃないかって結論になったんだ。


「でもね?それでも、その女の子をそこまで追い込んだのは健流くんの態度もあったと思うよ。不安にさせる何かがあったんじゃないかな。」


「正直、僕に女の子関係の事は何も言えない。いや、本当に何も言えない。今日もこの後・・・ううう・・・」


 言えないよね・・・僕には言う資格が無いんです!

 でも、僕は悪くない!

 僕は悪くないぞ!!

 増やすつもりが無くても増えていくんだ!

 なんか元人妻達も僕を狙ってるんだ!!

 ・・・なんでかなぁ・・・


「あ、兄貴?」


 あ、いけない!


「はっ!?い、いや、なんでもないんだ!桜花やみんなが怖いとかでは無いんだ!!決して寝させて貰えないとかしぼり取られるとかでは無いんだ!!うん!!」

「みんな?」

「「「・・・」」」


 うっ!?女性陣が僕をジト目で見てる!?

 まずい!

 

「そ、それで続きだけど、健流くん。僕が今回その子を助けたとして、君はそれで自分を許せるのかな?」


 とりあえず本題に戻して誤魔化そう・・・

 

「・・・多分許せないと思います。」


 そうだよね。

 自分の力の無さのせいで、友だちが利用されるなんて許せるわけがない。


 ここからは更に推論だけど・・・


 僕は、桜花と出した結論、敵の狙いは健流くんの絶望と精神支配している子達の利用方法を話した。


「僕はね。思うんだ。魔女のやってる事は勿論許せないよ?出来ればこの手で叩き潰したい。でも、それは君が、君たちが成長する為の経験を奪ってしまう事になる。」

「成長・・・」

「魔女には腹が立つよね?だったら、君たちが魔女の理不尽を全て正面から叩き潰してやれば、魔女にとってこの上無い屈辱となる筈だ。僕がやっても、魔女より明らかに強い者がやっても意味がない。君達やアンジェリカちゃんがやってこそ意味がある。どうせ魔女は君たちの事を下に見てるだろうからね。」


 これは僕の本心だ。

 うん、みんな目に活力が戻ってきたね。

 よし、じゃあ計画を話そう。

 そうだな・・・まず、シータさんと話しをして、あんまり早いとそれはそれで健流くん達の準備・・・生き残れるだけの力を身につけてもらわなきゃいけないし・・・キャンプもあるから・・・よし!


「いいかい?夏休みの・・・そうだね、8月の15日を過ぎても魔女に動きが無ければ、僕が強制的に魔女の異空間に干渉する。そうする権利もあるし手段もある。そうすれば、異変を察知した魔女たちから出てくるよ。そこで決着をつけると良い。」

「そして・・・その子たちを助けたら、僕の所に連れて来ると良いよ。必ず元に戻してあげるからさ。」

「・・・はい!その時はお願いします!!」


 健流くんも気合の入ったいい顔になったね。


「うん!大丈夫だよ。僕達だって、何度も理不尽を乗り越えて来て今があるんだ。君たちだってきっと乗り越えられるさ。そんな強さを持ってるよ。健流くんも、健流くんを支える灯里ちゃん達も、勿論アンジェリカちゃんもね。」


 アンジェリカちゃんもいい顔になった・・・ってなんで顔赤くなってるの?


 この後、鍛える為に桜花の家の道場に通うこととアンジェリカちゃんの力に触れると、

 

「わ〜!?それは・・・いいですから!!その事には触れないで下さい!!」

「でも・・・」

「わかってます!わかってますから!!」


 何故かアンジェリカちゃんは焦ってた。

 なんで?

 まぁ、いいや。

 それより・・・


「さて、僕は僕の出来る事をするとしようかな。」


「兄貴のやる事ですか?」

「うん、どうも魔女に力を貸している存在がいるみたいだからね。そっちは僕の仕事になりそうだ。何せ、この世界の神様が決めたルールを破っているみたいだからね。僕が手出ししても良さそうなんだ。多分魔女の異界にも関係がありそうだし。」

「どうするんすか?」

「ん?決まってるよ。」


 そんなの決まってる。

 可愛い後輩や、一生懸命頑張ってる人を馬鹿にするような、蔑ろにするような奴に遠慮はしない。


「僕の可愛い弟分とその友達に手を出したんだ。きっちり責任を取って貰うとするさ。強制的に、ね。目には目を、歯に歯を、理不尽には更なる理不尽をってね。」


 しっかりと絶望して貰うとするよ。


****************

という事で、一旦裏サイドはストップ。

次話はキャンプに行くための事前の話合いの回です。


ここからは、キャンプ回が続きます。

まだ、どれくらいの長さにするか決めていませんが、瞳達がついにメンバーと会う事になると思います(笑)


お待ち下さい。

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