第30話 修学旅行(7)

【ボス!こいつです!こいつが昼間のガキです!!】

【こんなヒョロっちいガキにやられたのか?お前らダセェな!お前らはあの女と犯るのは最後だ!情けねぇ!!】

【そんなぁ・・・】


 ・・・アイツは昼間見逃した奴か。

 やっぱり僕のせいだなこの状況。

 

 まぁ、良い。

 ここで潰す。


 僕は、この建物を結界で包む。

 これで、こいつらは逃げ出せない。


【くだらないこと言ってないで、さっさと終わらせよう。こっちは修学旅行中なんだ。】

【あ?旅行中だ?ギャハハハ!お前の旅行はここで終わりだよ。人生最後の旅行は楽しかったか?これからあの世を旅して来い!お前ら!殺せ!!】

「三上くん!逃げて!!」


 こいつらの言葉が分かったのか、ビリビリに破かれた服で先生が叫ぶ。

 先生怖いだろうに・・


「大丈夫ですよ先生。」


 僕はそう言って、男たちの方に歩いて行く。


【死ね!!】

【お前がね。】


 僕は頭に鉄パイプを振り下ろして来た奴の顔面を殴り飛ばした。

 男はそのまま壁際まで吹っ飛んで、崩れ落ちた。


 一瞬男たちの動きが止まる。

 その隙を逃さず、目の前にいる三人の男の股間を蹴り上げた。


【ぎゃあ!!】

【うがっ!?】

【があっ!?】


 玉を潰した感触。

 三人は泡を吹いて倒れた。


【何やってやがる!】


 一際ひときわデカい奴が叫んでいる。


 すると、ナイフなんかで武装した奴と、中には銃を持っている奴が出てきた。

 

【死ねぇ!!】


 パン!

 パン!!

 パン!!!


 発砲して来た男を放置し、僕は銃弾を躱しながら、そのまま横に居た男達の中に突っ込む。


【う、撃てねぇ!?】


 手当たり次第殴り倒していると、一人ナイフを持って突っ込んで来た奴がいた。


【おら!!死ね!】


 僕は、ナイフの刀身を指でつまむ。

 男は、全体重を乗せているのに、僕に指で止められているのに驚愕していた。


【う、嘘だろ!?なんだこいつ!?】

【残念。さようなら。】


 僕はそのまま身体を捻り、男の顎を蹴り上げた。


【う、動くなぁ!!】


 声がする方向を見ると、先生にナイフを突きつけている男がいる。

 あれは昼間見逃した男だ。


【この悪魔め!てめぇが動いたらこの女の命は無いぞ!!】

【おお、よくやった!おい!さっさとその男を撃ち殺せ!!】


 ボスがそう銃を持っている5人に指示を出した。

 

【馬鹿だなぁ。】


 僕がそう言った瞬間に、一斉に発砲される。


 パン!パン!パン!パン!パン!パン


「三上くん!!」

【やったか!?】


 おっとそれはフラグです。

 僕はナイフを先生の首に突きつけていた男の背後に移動済み。

 その腕と頭を掴む。


【ひっ!?なんで・・・】

【僕は言ったよね?次は許さないって。】

【ば、化け物!!】

【そうさ、僕は化け物だよ。じゃあね。】


 僕は、腕を握り潰し、そのまま男の頭を床に叩きつけた。


「先生、大丈夫?これ羽織ってて?」

「三上・・・くん・・・」


 先生は涙を流しながら僕にしがみついた。

 僕はジャージを先生の肩にかける。


「先生、もう少し我慢しててね?すぐ終わらせるから。」

「あ・・・」


 僕は安心させるように笑顔でそう言った後、先生の手を外し、その直後に、銃を構える男の前に移動した。


【なっ!?】


 思わず指に力が入ったのだろう。

 驚いて発砲する男。

 僕は首を傾げて銃弾を躱した。


【当たらないよ。】


 そして、男の腹に肘を打ち込む。 

 すぐに、他の銃を持っている男たちを睨みつける。


【な、なんだこいつ・・・】

【弾を躱したぞ!?】

【化け物だ!】

【うるさいよ。お前ら。】


 僕は箭疾歩せんしっぽで一人倒し、そのままもう一人に裡門頂肘を放つ。

 そして飛んでくる弾丸を躱しながら他の男に近づいた。


【あ、当たらない!?なんでだ!?あが!?】

【はや・・・ぐえっ!?】


 これで後一人。

 

【おし・・・まいっと!】

【がはっ!!】


 ふぅ。

 後は、ボスとか言われてた奴だけか・・・あ、そばにまだ5人位いた。


【てめぇ・・・もしかしててめぇも超能力をもってるのか?】

【超能力?なんの話?】

【とぼけるな!!これを見ろ!!】


 ボスはビリヤード台を片手で持ち上げる。

 中々力持ちだね。


【これが俺の超能力の『剛力』だ!てめえも捻り潰してやるぜ!!】

【ボス!頼みます!その化け物を殺して下さい!!】

【ボス!!】


 外野がうるさい。


 異能持ちだったのか。

 まあなんでもいいや。

 取り敢えず・・・

 僕は指先をボスに向けてちょいちょい、とかかってこいアピールをする。


【さっさと来なよボスゴリラ。あっ君とゴリラを一緒にするにはゴリラに失礼か。さっさと来なよ粗大ごみ。】

【てめぇ!!!】


 怒り狂って僕に突進してくるボス。

 僕は、両手を腕に上げる。


【捻りつぶしてやる!!】


 ボスはその手を僕の手に合わせた。

 俗に言う手四つという奴だ。

 馬鹿だから単純に乗ってきた。


【この俺に手四つを挑むとは・・・馬鹿め!!】

【馬鹿はあんただよ。さっさと力を入れなよ。】

【なんだとこの!・・・ふぬぬぬぬぬぬ!!この・・・!?】

【まだ?早くしなよゴミ屑。】

【う、う、嘘だ・・・ぐぬぬぬぬぬぬ・・・!!】

【ねぇ、もう力を入れても良いの?】

【嘘だ!嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!!】


 ボスは必死に力を入れるが、僕は微動だにしない。

 当たり前だね。

 僕、身体強化使ってるし。


【え・・・ボス?】

【冗談ですよね?】

【こんな時まで・・・まったく冗談好きなんですから!】


 こいつの仲間が引きつった顔でそう言う。

 じゃあ現実を見せましょう。


【それじゃちょっと力を入れるよ?それ。】

【があああああああ!?】


 僕は段々とボスを押し込んでいく。

 ボスは既に片膝をついており、仰け反ってきていた。


【ほら、早くしないと潰れちゃうよ?】

【ま、待て!待ってくれ!!悪かった!俺たちが悪かった!!許してくれ!】

【え?駄目に決まってるし。】

【ヒイッ!?ぐぎゃああ!!】


 僕はそのままボスを床まで押し込んだ。

 途中、背骨が折れた音が聞こえたけれど、知ったこっちゃない。


【ヒィィィ!?ボスがやられた!?】

【悪魔だ!悪魔が来た!!】

【逃げろ!!!】


 5人が一斉に逃げ出す。

 でも、もう遅い。


【で、出られない!?】

【なんでだ!!出してくれ!ここから出してくれ!!】


 僕は一歩一歩近づいていく。

 そして、


【僕からは逃げられないよ?】

【【【【【ヒィィィィィ!?】】】】】


 一人残らず制圧するのだった。





 僕は携帯を取り出す。


『はい、アンジェリカです。どうされました?』

「・・・あ、掛かった。僕です龍馬です。あのねアンジェリカちゃん。実は、修学旅行中にさぁ・・・」


 僕は経緯を説明する。

 何せ、異能犯罪者を普通の警察に任せて良いのかわからなかったからだ。


『・・・わかりました。で、あれば、信用できるそちらの組織に任せましょう。こちらから連絡しておきます。』

「ごめんね?よろしく頼むよ。」

『しかし、三上さんは今修学旅行中でしたね。受け渡しをどうしましょう・・・』

「ああ、なら、明日の朝まで眠らせておくよ。明日の朝まで絶対に目覚めないから。それに、建物にも入れないよう結界を張っておくね?解除は・・・そうだな、明日の朝6時でどうかな?それで、こいつらが目覚めるのは7時で。」

『わかりました。先方に伝えておきます。本来はこちら側の仕事でしたのに申し訳ありませんでした。』

「いいよ。こっちだって先生が攫われたんだからさ。それじゃあよろしくね?」

うけたまわりました。』


 ふぅ。

 これでよし!

 後はこの建物内に『ディープスリープ』の魔法を掛けて、結界で覆えばオッケーだね!


 僕は先生に近づく。


「さぁ、先生。帰りましょう?」


 僕は先生に手を差し伸べた。


「っ!三上くん・・・」


 先生は少し躊躇した。

 そりゃそうだよね。

 怖いよね、こんな事できる人なんて。


「あははは・・・ごめんなさい先生。僕、怖いですよね?すみません気が利かなくて・・・」

「っ!!違うわ!!」

「せ、先生!?」


 先生は僕の胸に飛び込んできた。

 うわっ・・・やわっこい感触と匂いが・・・


「違う!違うのよ!三上くんが怖かったんじゃない!ただ、あなたに見惚れてただけ!」

「えっ・・・」

「もう駄目かと思った。誰も助けてくれない、大勢の男たちに汚されると思った!でも・・・そこにあなたが来てくれた!あなたが普通じゃなくても良い!!来てくれたのはあなただけなの!!だから・・・だからありがとう・・・怖かった・・・怖かったの・・・ううううぅぅぅ・・・」


 先生は僕の胸で泣き始めた。

 僕は先生が少しでも安心できるように抱きしめてあげた。

 桜花・・・みんな・・・ごめん。

 これは下心じゃないんだ!

 慰めているだけなんだ!

 浮気じゃないんだ!!


 だから、許して下さいお願いします。



 15分程抱きしめて、目と顔が赤くなった先生と一緒に帰ろうと思って気がついた。

 ・・・どうやって帰ろう?

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