第311話 VS神の人形(3)sideアイシャ グレイス

sideアイシャ


「不遜なる獣人め!貴様を切り刻んでくれる!!」


 あたしの目の前に、男型の人形がいる。

 見た目に反して性格は最悪だ。

 多分作った奴の性格が悪いんだろうな。


「けっ!ほざいてろ!!あたしは狼人族のアイシャだ!逃げも隠れもしねぇ!てめえの御主人様と違ってな!!」

「我が神を愚弄するか!!獣人風情が!!」

「うるせぇ!てめえこそ、人形風情があたし達に態度がでけぇってんだ!スクラップにしてやるよ!!」


 人形が飛びかかって来る。

 この人形は手に鉤爪を装備してやがる。

 技量は・・・まぁそこそこだが、速さと耐久力は半端ねぇ!!

 油断はできねぇな。


 こっちは連戦で体力もかなり消耗してるしな。

 でも、ここで引いたら女が廃るってんだ!

 リョウマはまだ頑張ってる筈だ!

 だったらつがいのあたしが泣き言ってられねぇ!!


 あたしは疲労している足にムチをいれて速度をあげる。

 速度は・・・疲れている分こいつの方が少し早えぇ。


 だけど、こっちだってエルのあねさんに鍛えられてんだ!

 多少速度で劣っていても、ついていける!!


 高速で鉤爪が振るわれて、あたしを切り刻もうとする。

 でも、あたしは上手く躱し、蹴りで応戦していた。


「中々やるが、私の方が速いようだな。貴様の強さは速さにあるのだろう?諦めて肥料になれ!!」

「抜かせ!多少遅くてもこっちの方が技術があんだよ!!てめえこそガラクタになりやがれ!!」


 こいつは速い!

 でも・・・


 あたしは躱す、躱す、躱す!!


「何故だ!こちらのスペックの方が上の筈だ!!」

「はっ!!てめえらの魂の籠もってねぇ攻撃なんかにやられるかよ!!」

「くっ!?この!!」


 焦って大振りしやがった!!

 ここだ!!


「せやぁ!!!」

「ぐは!?」


 あたしは思いっきり蹴り上げる。

 まともに蹴りをくらったこいつは真上に吹っ飛んだ。

 ここで決める!!


「砕け散りやがれ!!『餓狼』!!」


 あたしは疲労により、段々動きが鈍くなって行く足に気合を入れ、連撃を咥えていく。

 ピキッ!!

 ぐっ!?足から変な音がしやがった!!

 でも、ここで止めるわけにはいけねぇ!!

 

「あああああああぁっぁぁっぁぁ!!!!!」


 あたしは足を止めず連撃を続ける!!

 段々砕け散っていく人形。


「馬鹿な!この至高なる私が・・・」

「黙りやがれ!!てめぇのどこがそんな存在なんだ!!ただの粗大ごみだっつーの!!とどめだ!!『餓狼双牙』!!」


 あたしは、餓狼の勢いそのままに両手で諸手突もろてづきを放った。

 これはあたしの修行の集大成だ。

 足技の連撃からの手技。


 もう足は動かねぇ。

 直撃した諸手突きは、人形の顔面を撃ち抜いた。

 そして、そのまま人形は砕け散った。


「よっしゃああああああああああぁぁぁ!!」


 あたしはへたり込みながら両手を上げる!!

 リョウマ!!

 やったぜ!!


side グレイス


「しっ!!」


 私は連突きを放つ。

 しかし、敵もさる者、バカでかいハルバートを使うこの人形は、上手く私の攻撃を逸らしていく。


「・・・器用なものだな。そんなデカブツで私の攻撃をいなすとは。」

「我々は至高の存在だ。貴様程度の攻撃など、どうとでもなる。」

「ほう。言ってくれる。ならば!!『オーラブレード、モードヒュージ!』」


 私は剣に魔力を通わせ巨大化させる。


「吹き飛べ!!『スプレットブラッシュ』」

「ぐおっ!?」


 そのまま高速の切り払いをする。

 人形は防御したが、まともに食らって後退する。


「隙あり!『モードエクステンド』!」

「くっ!!」


 私は後退した人形に剣を伸ばしてそのまま突きを放った。

 人形はハルバードで逸らしたが、躱しきれずその顔に切り傷を負う。

 出血は無いがな。


「おのれ!神の所有物たる我らに傷を!!」

「ふん。貴様らは口を開けばそればかりだな。そんな心を持たぬものに負けるものか。」

「貴様!!」


 人形はハルバードをむちゃくちゃに振り回した。

 かなりの高速で、周囲に風刃が発生している。

 ハルバードそのものは躱せるが、風の刃が私の身体にどんどん切り傷を増やしていく。


「このまま細切れにしてくれる!!」

「させるか!!」


 私は再度剣を巨大化させ、ハルバードに合わせる。

 ガキィン!!!

 

「ぐおっ!?」

「くっ!!」


 腕が痺れる!!

 馬鹿力め!!


「くっ!!止めだぁ!!」


 人形は頭上でハルバードを高速で回し、その勢いのまま唐竹割を放ってきた。

 受けきれない!!


 私は咄嗟にバックステップした。

 連戦で疲労が限界になり足がもつれそうになる。

 ここが生死の境目!!


 私は倒れ込むように後ろに飛ぶ!

 なんとか躱せた!

 だが、ハルバードは地面に激突し、周囲に岩を飛び散らす。


「がっ!!」


 私は岩が直撃しふっ飛ばされた。

 

「死ねぇ!!!」


 人形がハルバードを引き抜き突っ込んでくる。

 私は痛む身体にムチを打ち、跳ね起きた。


「こんなところでは死ねない!やっと理想の男に出会えたんだ!!受け入れて貰えたんだ!!お前なんかに殺されてやらん!!」

「ほざけぇ!!」

「リュース流剣術奥義!『サウザンドトラストォォ』!!」


 私は超速の連続突きを放つ!!


「ぐっ・・・う・・・う・・・」


 人形は徐々に削られながらも前に出てくる。

 そしてハルバードの間合いにまで近づいた。


「はぁぁぁぁ!」

 

 人形はハルバードを振り上げた。

 

 負けない!負けられない!!ここで負けたら悔やんでも悔やみきれない!!

 女の意地を!!


「舐めるなぁぁ!リュース流剣術奥義!!『スラッシュ オブ ソード』!!」


 私は上段から一刀両断する!

 人形はハルバードを掲げて防ぐが、そのままハルバードを両断した。

 そして、身体を斬る、が、まだ動く!


「これでラストォォォォ!!リュース流剣術奥義!!『メテオトラスト』ォォ!!!」


 私は最後の力で超速で相手に突っ込み、そのままの勢いで突きを放った。

 この技は捨身技だ。

 これを外せば私はおそらく死ぬ。

 死中に活!!


「ぐ・・・はっ・・・馬鹿・・・な・・・」


 直撃を受けた人形は、胴体に大穴を開け、そのまま塵となった。

 私はそのまま足をもつれさせ転倒する。


「勝っ・・・た・・・」


 なんとか仰向けになり、手を上にあげガッツポーズをした。

 はぁ・・・リョウマ!

 やったぞ!!

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