閑話 独白(1) sideセレス

 私はセレス。

 この世界の管理者として、創造神様から任命された者です。


 私は長くこの世界の管理をしていました。

 長い管理者としての務めの中には、色々とありましたが、それでも、愛すべきこの世界の住人の為に頑張っておりました。


 管理者は私ともう一人、ヴァリスという者がいました。

 創造神様に、私の補助としてつけて頂いたのです。


 ヴァリスは、野心の強い面があり、神の座を狙っていました。

 管理者として世界の発展に貢献し、創造神様に認められる世界とした後に務めを終えれば、神に到れるのです。


 その為、よく私に、「発展に犠牲はつきものだ!世界の進化を進める為に、実験をさせて欲しい!」と直談判に来ました。

 しかし、彼の言う「実験」とは、その世界の人々を改造し、強制的に進化させようというものでした。

 そして、その為に、どれだけの命が失われようと構わないと言うのです。

 私は、それはとても容認できませんでした。

 ですので、彼の訴えは常に却下して来ました。


 私は、彼を世界に降臨させるのは危険であると判断し、亜空間で作業させ、世界の歪みがある場合に報告するよう指示をしていました。

 しかし、彼は諦めていなかったようです。

 ある日、私がエルフ族の一人と話をしていると、神殿の中にヴァリスが入って来ました。

 私は、彼が地上に来ることを許可していなかったので、何故地上に来たのか問い詰めました。

 すると、彼は、


「世界の歪みがあったので、報告しに来ました。」


と言いました。

 歪み自体は、数十年に一度の割合で発生します。

 大体の場合は、すぐに修正が効くものですが、中には、かなり大規模なものもあります。

 彼が直接報告に来るほどの歪みであれば、危険であると思い、私はすぐに確認しようと思いました。

 それがいけませんでした。


 私が、彼の表示した世界の様子を見ようと、のぞきこんだ所に、彼は後ろから、おそらく、かねてより準備していたであろう封印術式で、私を縛り上げ、そのまま亜空間ごと、神水晶に封じました。


 私はなんとかしようとしました。

 しかし、彼が準備していた封印はかなり強力なもので、中々解除できませんでした。

 なんとか亜空間自体は解除したのですが、神水晶の封印を解こうとした時、私から力が抜けている事に気づきました。

 どうやら、封印の鎖は私の力を吸い取り、神水晶も何らかの動力にされているようでした。

 

 こうなってくると、回復するそばから力を吸い取られ、とても神水晶の封印から脱することはできません。

 私はなんとか力の維持に努めました。


 そして、外の状態を確認する術を生み出しました。

 しかし、そこにあったのは更に私を絶望させるものでした。


 私の数少ない友人である、ジードくんが勇者に殺されました。

 それも、ヴァリスが偽装した、私の名前で発した神託の為に起こった事でした。

 その後も、腐敗していく教会や、おかしくなっていく人族の国、迫害されて行く人族意外の種族。

  

 私は、その光景に、何度涙を流したかわかりません。

 

 長い間、そんな光景を見ていました。

 そして、運命の日が来ました。

 

 ある異世界人が、次元穴でこの世界に来ました。

 一目見た瞬間、その人が善良な者であることがわかりました。

 管理者としての力で、彼の名前が三上龍馬と判明しました。

 私は、その瞬間に力を発し、彼がこの世界に来た事実をヴァリスから隠蔽しました。


 ヴァリスの手駒とされない為です。

 なんとか、彼がこの世界を良い方向に導いてほしい。

 

 そう思っていると、今度は帝国が勇者を召喚しました。

 勇者召喚は禁忌とした筈なのに・・・ヴァリスの手駒である教皇が、私欲の為に行ったようです。

 しかし、チャンスでした。

 私はそこに介入しました。

 私に残っていた力の大半をそこにつぎ込みました。


 そして、桜花さんと対面したのです。

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