第298話 崩壊の始まり

 明日は、いよいよセレス様の予想する日だ。

 でも、あくまでも予測・・・早まる可能性も遅くなる可能性もある。

 気を引き締めておかないと。


 僕は食事を取るために居間に行く。

 

「おはよ〜」

「おはようございます。」

「おはよう。」


 そこにはカエラさん達がいた。


「おはようございます。朝早いですね。」

「ええ、いよいよと思うと緊張してしまって・・・」

「カエラ様が、早く起きてゴソゴソしてたから、起きちゃったんだよね。」

「本当はまだ眠い・・・」

「し、仕方がないでしょう!明日で世界の行末が決まると思うと・・・!」


 まあ、気持ちはわかるかな。


「カエラさん、大丈夫ですよ。みんなこれだけ頑張っているんです。勿論カエラさんもね。だからきっと上手くいきますよ。一緒に頑張りましょう!!」

「・・・リョウマさんありがとうございます。あなたにそう言って頂けるとなんとかなりそうに思えますね。うふふ。」


 カエラさんは笑顔でそう言った。

 

「・・・ねぇ、カエラ様さぁ・・・」

「うん。完全にやられてる。ちなみに私も。」

「あんたはここに住みたいだけでしょ。」

「違う。それもあるけど、リョウマさんの人柄もある。」

「う〜ん・・・わかっちゃうのがなぁ・・・」


 オリビアさんとキリアさんが、ボソボソと何かを話し合っている。

 なんだろう?


 そうこうしていると、みんなも起きてきたので、食事が開始となる。

 ちなみに、ジードは起きてきた時・・・


「おはよう・・・」


 フラフラでげっそりしていた。

 そのかわりかシルヴァさん達は妙にツヤツヤだ。

 ・・・今日も搾り取られたのか。

 可哀想に・・・


「龍馬・・・お前も・・・いずれ・・・」


 聞こえません。

 聞きたくありません。

 僕は両耳を抑えてイヤイヤをする。


 視線を感じるので、周りを見ると、桜花やリディア達がじーっとこっちを見ている。

 僕は気づかないフリをしてそっと目を閉じた。


 食事を終え、みんなでまったりしていると、セレス様が、


「みなさん。お話があります。」


と、言った。

 なんだろう?


「今日までよく頑張ってくれました。そして、いよいよヴァリスが世界の崩壊を始めるであろう日の、前日となりました。ここまで頑張って頂いた皆様に、ささやかながら加護を与えようと思います。」


 加護か。

 決戦を前に、これはありがたいね。

 セレス様が目を閉じ、手を胸の前に組んで祈るようにする。


 ・・・セレス様の大きな胸が寄せられて思わず見ちゃう・・・


 ん?

 セレス様の頬が少し赤いような・・・

 はっ!?


「・・・龍馬さん。その・・・集中したいので、そのような事は思わないで頂けると・・・恥ずかしいので・・・」


 しまった!

 セレス様は心が読めるんだった!!


「龍馬?」


 ぎゃっ!?

 桜花に足の甲を思いっきり踏まれた。

 そして、例によってみんながお尻やほっぺをつねりあげる。


「ひたひ・・・」

「これは罰ですよリョウマさん。」

「そうだぞリョウマ。」


 口々に僕を責めるみんな。

 だってしょうがないじゃいか!

 セレス様綺麗なんだもん!

 あんなのつい見ちゃうよ!

 …あっ!?


「龍馬さんのいじわる・・・」


 ぐぅ・・・

 綺麗なセレス様が、そんな照れた顔してそんな事を言うのは反則だ・・・

 可愛すぎる・・・


 ぎゃあ!!

 更に抓られた!!


「は〜・・・龍馬よ。お主は後ろを向いておけ。話が進まん。」


 呆れたジードが、僕の頭を鷲掴みにして後ろを向ける。

 ううう・・・酷い目にあった。


 僕が後ろを向いた後はスムーズに進み、部屋に光が溢れる。

 おそらくセレス様から放たれているんだろうね。


 セレス様の加護は、みんなに行き渡ったようで、光が収まった。


「これで、みなさんは加護を得ています。効果としては、逆境における能力の向上と、即死攻撃の無効化です。」


 おお!

 これは中々良い加護を貰ったね!!


「但し、あくまで敵の能力による即死攻撃の無効化の為、物理的に首を撥ねられたり、頭部を損傷したりした場合は、即死してしまうので注意して下さい。」


 まぁ、そりゃそうだよね。

 不死ではないんだし。


 でも、もし、神の人形が即死攻撃を持っていた時には、無効化できるからこれは大助かりだと思う。

 みんな口々にセレス様にお礼を言っている。

 勿論僕もだ。


 その後は、昼食まで精神統一をするため、瞑想をしていたんだけど、その時、突然、

 バキン!

という音が外から聞こえて来た。

 その後も、ミシミシという音が聞こえて来る。

 まさか!?

 僕が外に出ると、空にヒビが走っていた。

 

 セレス様が叫ぶ!


「みなさん!始まりました!ヴァリスは予測を上回って来ました!すぐに準備を!!」


 一日早まったか・・・

 でも、みんなこの為に準備を進めて来たんだ!

 すぐに通信石で各国に連絡を取り、作戦を開始する。

 異世界に来て一年ちょっとか・・・

 今日、決着をつけてやる!!

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