閑話 教会の動向

 僕が目を覚ましてから一ヶ月を越えた。

 僕の身体は、介助が無くても問題ないくらいには動けるようになった。


 みんなは、ちゃくちゃくと実力を伸ばしている。

 僕もリハビリがてら、みんなとの戦闘訓練を始めていた。

 今日は、買い物がてら王都に来ていて、昇格の通知を受け取ることになっていた。


 そうそう、桜花とレーナも冒険者登録をしたんだ。

 勿論Bランクからね。

 そして、エスメラルダはAランク、リディア、シエイラ、グレイスはSランクになったんだ。

 

 正直、Sランクへは早すぎるんじゃないかな?とも思ったけど、本部のギルマス曰く、「どうせ、すぐにSに上がるんだ。それだけの実力は示している。さっさと上げたほうがこちらの負担が減る。」と言っていた。


 それと、嫌な噂も聞いた。

 なんでも、「黒衣の天災」はとんでもない女好きで、ハーレムパーティを築いているってさ。

 失礼な話だよまったく・・・でも、それを聞いたみんなはクスクス笑うだけで、怒っているのは僕だけ。

 桜花なんかはむしろ納得しているように見えた。


 なんでさ!

 僕は女好きじゃないぞ!!

 確かにパーティメンバーは女の子ばっかりだし・・・好意を持っている人ばっかりだけど・・・うん、説得力が無いかも。


 いや、まだだ!レーナがいる!

 レーナはまだ、恋愛的な意味で僕を好きなわけじゃ無いはずだ!!

 うんうん、まだハーレムというわけじゃないぞ!


 僕は、みんなにそう言って、ハーレムじゃないことをアピールする。

 すると、みんなは苦笑いをしていた。

 レーナは・・・顔を赤くして俯いている。

 ほらね!

 多分怒っているんだよ!

 そんな風に、勝手にまわりから思われている事に、腹を立てているんだ。


 だから、僕はレーナに謝ったんだ。


「ごめんね。僕のせいでそんな風に思われてて。腹も立てるよね?」


 そう言うと、レーナは顔を赤くしたまま、両手をパタパタ振って、


「い、いえ、私は特に怒っていませんよ!むしろ・・・その・・・周りからもそう思われているんだなぁ・・・と、その、よく見ているんだなぁ・・・って・・・」


 ?

 よく見ているって・・・どういう事だ?


 僕が首を傾げていると、後ろから桜花に頭をはたかれた。


「はいはい。もういいじゃない。さっさと帰るわよ、このハーレム野郎。」


 ムキー!!

 なんでだよ!!


 僕が地団駄を踏んでいると、他のみんなが僕の頭を撫でて、なだめて来る。


「まあまあ、いいじゃないですかリョウマさん。ほら行きましょう?」


 そう言って、手を引かれてギルドを出た。

 むー・・・なんだか納得がいかない。

 これじゃ子供みたいじゃないか・・・


 ギルドを出て、王城に向かう。

 転移扉を使うためと、ディバイドさんから、教会の動向を聞くことになっている。

 

 謁見の間で、ディバイドさんと話す。

 

「リョウマよ。息災のようでなによりじゃ。それで、教会なんじゃがのう、どうも、戦力を集めているようじゃ。各国から諜報員を集中させているのじゃがな、傭兵なんかが続々と来ているようじゃ。そろそろ、大々的な動き、もしくは発表をするのではないかとの事じゃ。」

「へ〜・・・傭兵か・・・ところで、教会って確か、各国の中心に位置するように、国を構えているんだったよね?」

「そうじゃ。国の規模としてはかなり小さいのじゃが、位置的にはそうじゃな。」

「目的はまだ、不明なんだよね?」

「うむ。まあ、儂らは、色々教会の裏を知っておるからの。まず、良いことではないじゃろうのう。」

「そうだよね・・・まぁ、何が来てもいいや。正面から叩き潰すだけだよ。」

「それで良いと思うぞ。そう言えば、話は変わるんじゃが、お主の快気祝いはどうするんじゃ?」

「快気祝い?」

「うん?お主は知らんかったのか?そこのリディア嬢ちゃんから聞いていたんじゃが・・・」


 僕はリディアを見る。

 リディアは頷いて、


「そうです。近日中に、黒猫会を開こうと思いまして。名目はリョウマさんの快気祝いです。」


と、言った。

 みんなを見ると、笑顔で頷いている。


「教えておいてよ。」

「うふふ。そこはさぷらいずって奴で!」


 リディアは人差し指を立てて、首を傾げながらウィンクをする。

 いや、可愛いけども。


「一応、予定では5日後位を予定してますよ。是非お越しください。」

「そうか。楽しみにしておるぞい。」


 5日後ね。

 それじゃ、ちょっと手のこんだものでも作るかな。

 サプライズって事で。

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