第249話 桜花の考え sideリディア

 私はレーナ姫につきつけます。


「あなた方、帝国のせいで、どれだけの国が迷惑をしていて、悲劇が生み出されているのか知らないのですか?自分たちが悲劇の主人公だとは思わないことです。今回も王国に攻めてくる途中だったのでしょう?」

「そ、それは・・・」

「今回も、私達は国から依頼を受けて来ています。王は冗談めかしてリョウマさんに、国を滅ぼしても良いと言ってましたが、あれは本音でしょう。」

「・・・」


 レーナ姫は悔しそうに唇を噛んで黙りました。


「気持ちはわかるけど、そこまで言うことないんじゃないかしら?助けて貰っておいてなんだけど。」


 オウカさんがこちらを見ていいました。


「オウカさんは知らないのではないですか?帝国は既に、一つの国を攻め属国に落とし、その力でもう一つ国を攻めていました。私達が関わったのはその2つでしたし、阻止して取り戻しましたが、その時、攻め落とされた人たちが、どのような扱いだったか知っていますか?男性は戦争の道具にされ、女性は性の捌け口として、奴隷のような扱いでした。高齢の方は全て殺されました。今でも、属国になっている国は変わっていません。それを知っても同じことが言えますか?」

「・・・」

「う・・・うそ・・・」


 オウカさんはそれを聞いて愕然として、レーナ姫は顔色を青くしてへたり込んでいました。


「・・・どうやら、本当に知らなかったようですね。私達は、他国の王族とも親しくしていますが、どの国も、一方的に攻めてくる帝国に困っています。無くなっても誰も文句を言いませんよ。」

「「・・・」」

「リディアちゃん・・・?ちょっと言い過ぎでは?」

「グレイスは少し黙っていて下さい。」


 流石に二人共何も言えなくなったようです。

 でも、私は二人を黙らせることが目的ではありません。

 見定めたいのです。

 最初は黙っていたオウカさんですが、少しすると、私の目を見て言いました。


「例えそうでも、龍馬が何もしていない一般の人を殺すのは見逃せない。あいつは絶対に後で後悔する。だから止めないといけないわ。私が大事なのは、レーナには悪いけど、帝国じゃなくて龍馬よ。それを邪魔するのであれば・・・恩人でも相手になるわ!」


 それが聞きたかったのです。

 私は、身にまとっていた魔力を霧散させて、にっこり笑いました。


「はい。であれば協力しましょう。私達も目的は同じです。でも、しっかりと分かって欲しかったのです。私達がリョウマさんを止めるのは帝国のためでは無く、リョウマさんのためだと。そして、リョウマさんの恋人の、オウカさんの考えも知りたかったのです。ごめんなさい。」


 私はそう言って頭を下げます。

 

「良い性格しているわね。人を試すなんて。」

「これは私が独断でした事です。嫌うのは私だけにして下さい。他の人は無関係ですので。」


 私がそう言うと、オウカさんが苦笑しながら、


「・・・何言っているのよ。貴方達の関係がなんとなくわかったわ。にも関わらず、私に嫌われてでも、自覚させようとしたのでしょう?多分龍馬のために。嫌えるわけないじゃない。」


と言いました。


「・・・ありがとうございます。私もできれば仲良くしていきたいと思っています。お願いもございますので。」

「・・・そのお願い、聞くの怖いわね。でも・・・はぁ〜やっぱりこうなっちゃったか・・・」


 オウカさんはため息をついています。

 何故でしょうか?


「あいつを一人で自由にさせちゃったからよ。あいつはね、モテるのよ。それも、良い女って呼ばれるような人ばかりにね。本人は、自分は普通でモテないって思い込んでいるみたいだけどとんでもない!どれだけ私がガードして来たか!彼女の私がいても、あいつの事が好きになる人が増えていくの!まったく!!」


 どうやら、向こうの世界でも、リョウマさんはリョウマさんだった様です。


「詳しくお聞きしたいところですが、すぐに城に向かわなければ行けません。移動できますか?」

「そうね。早く龍馬を止めなきゃ!」

「お待ち下さい!」


 私達が移動しようとすると、レーナ姫が立ち上がって呼び止めました。

 

「帝国の自業自得だというのはよく分かりました。私も、この国には見切りをつけて脱出しようとしていたので。ですが、一般の人は関係のない人がほとんどです。ですから、止められるのであれば私も止めたい。私は転移魔法を使えます。今は城に帰る一方通行ですが。修行して、十人位であれば移動できます。私の魔法で移動しましょう。」


 覚悟を決めたレーナ姫がそう言いました。

 これは助かりますね。


「直接謁見の間に移動します。準備はいいですか?魔法を発動したら、魔力切れで、私は動けなくなります。止めるのは皆様お願いしますね。」


 周囲が光り輝く。

 さあ、リョウマさん。

 あなたを止めますよ!

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