第248話 龍馬の恋人 桜花 side リディア
私達は、先行したリョウマさんを追いかけました。
行く先々にいる帝国兵を蹴散らしながら。
時折、進む先から轟音が響いて来ます。
おそらくリョウマさんですね。
少しすると、轟音は止み、帝国の兵士も見なくなりました。
代わりに地獄のような惨状が眼前にあります。
えぐられた地面や、大穴、ちぎれ飛んで、焼け落ちた兵士の亡骸。
これで、この先に、何が待つのか、想像が付くというものです。
先程から、前方に何かとてつもない力の塊がいるのが、把握できます。
私達には、リョウマさん程の、気配察知はありませんが、ここまでも届く威圧感が、その存在を知らせてきます。
おそらく、懸念は的中したのでしょうね・・・
みなさんの顔を見ると、誰もが険しい顔をしています。
すぐに追いつかなくては。
私達は先を急ぎます。
すると、ふと、存在感が無くなりました。
どういうことでしょうか?
構わず進むと、そこには三人の女性がいました。
内一人は、力なく倒れ伏しています。
黒髪・・・やっぱり・・・
私達が駆け寄っていくと、一人の侍女服を着た女性が、
「誰です!?」
と誰何して来ます。
その声で、私達の存在に気づいた女性が、こちらを見ました。
綺麗な女性です・・・この方は片時も休まず、回復魔法を使用しています。
「あなたたちは・・・・」
「失礼を。私達は、セレスティア王国所属のシャノワールという冒険者パーティの者です。」
「王国?何故王国の冒険者がここに?」
「それよりも、お聞きしたいことがあります。ここに、黒髪の男性が来ませんでしたか?」
「彼の仲間ですか!?止めて下さい!彼を止めて!」
その女性は、必死に懇願して来ました。
止める?
「リディア。そこで倒れているのが勇者だ。それに、そっちのは確かこの国の姫さんじゃなかったか?」
アイシャがそう言いました。
「あなた!?戦争の時の・・・?」
「てことは・・・そこに倒れているのがオウカか?チッ!!最悪だぜ!!」
「オウカを知っているの!?」
やはり・・・と、いうことは、先程の巨大な力は、激怒したリョウマさんですね。
こうしてはおれません。
「お聞きなさい。このままではこの国は滅びます。彼にはそれができる力がある。」
「なんで・・・なんでそんなことを!?」
「そこに倒れているオウカさん・・・彼はその恋人です。恋人がひどい目にあえば誰だって激怒するでしょう?」
「オウカの恋人・・・?それって・・・リョウマという人ですか?」
「そこまではオウカさんに聞いていましたか。であれば、すぐに回復して追いつきましょう。多分、彼を止めるには、オウカさんの力も必要です。メイちゃん。」
コクンと頷くメイちゃんと共に、近づき回復魔法を施します。
すると、少ししてオウカさんが目を覚ましました。
「ここは・・・レーナ?・・・と誰?」
オウカさんがこちらを見て言いました。
「はじめましてオウカさん。私はリディア・リヒャルト・メイビス。リョウマさんの冒険者パーティの仲間です。」
「龍馬の?・・・そうだ!龍馬はどこ!?」
オウカさんは起き上がりました。
「リョウマは多分、この帝国の城の方に行ってるぜ。しかし、まさかこんな風に再会するとはな。」
「あなたは・・・アイシャね。そっか・・・・龍馬の仲間だったの・・・え?城の方に行った?何しに?ペインは?」
「はじめましてオウカさん。私はシエイラ・テロアといいます。ペインという人は知りませんが・・・おそらく、この国を滅ぼしに行ったのでしょう。」
「えっ!?」
シエイラの言葉にオウカさんは絶句しています。
無理もありませせんね。
「龍馬がそんなことするはずが無い!あいつは度が過ぎたお人好しなのよ!?」
「私は、以前顔を合わせたわね。エルマよ。そうね、それは私達も知っているわ。でも今回は違う。痛めつけられた恋人のあなたがいた。それに、私達は、前にもあなたが、教会の大司教とやらに、痛めつけられたのを聞いた。リョウマくんがそうするのも無理もないわ。」
「嘘!?止めなきゃ!!」
エルマの言葉に、オウカさんは焦りだしました。
何か心当たりがあるようですね。
「あいつは、基本、無害なのよ。でも、許容できる範囲を越えた敵には容赦しない。レーナ!ペインはどこに行ったの!?」
「・・・オウカ!ペインは・・・激怒していたリョウマ様にボロボロにされて連れて行かれました。おそらく転移でしょう。オウカ・・・どうしましょう・・・帝国が・・・国が無くなる・・・」
レーナ姫がボロボロと泣き出しました。
しかし、ここはしっかりと言っておかなければいけませんね。
「国は滅びてもいいのでは?」
「なんですって!!」
レーナ姫はこちらを睨みつけてきました。
ここは勘違いを正すのと一緒に見極めさせて頂きましょう。
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