第245話 ペイン side桜花

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


 私は、なんとかペインの猛攻を凌いでいた。

 だけど、まだ、ペインの身体のカラクリには気づいていない。


「よもや、ここまで粘れるとはな。先日とは雲泥の差だ。勇者というだけはある。だが、我には通じん。」


 落ち着け。

 次で見定める!


 「廻里流剣術奥伝が一『不知火』!」


 これは廻里流剣術の奥義の一つ。

 廻流の剣は、全身の筋肉を利用し斬りつけるため、神速とも言える速さでの斬撃なの。

 この、『不知火』は、五芒星を書くように袈裟斬り、斜め切り上げ、横薙ぎ、逆袈裟斬り、切り上げと流れるように斬撃を放つ技だ。

 

 私は、ペインの身体を注視する。

 すると、斬撃が当たる瞬間に、身体の表面に、オーラのような膜が斬撃を防いでいる事に気づいた。


 ペインは、完全には防げなかったようで、若干の切り傷をつくることができた。

 その傷は、斬撃が重なった所だ。


「ようやく、仕組みがわかったわ。オーラを鎧のように纏わせ、斬撃を防いでいたのね。そして、私の斬撃であれば、連続には防げない。」

「ほう、気づいたのか。だが、それでなんとかできるのか?」

「なんとかするしかないじゃない。」


 難しいが、なんとかするしかない。

 最悪、極限を使うしか無い。

 できれば、逃げ切る為に、使いたくはないんだけど・・・


「なるほど。ならば、また絶望を与えよう。『身体強化』」

「え!?今まで使っていなかったの!?」

「そういう事だ。」


 なんてヤツ!


「さて、いくぞ。」


 ペインは一気にこちらに突っ込んでくる。

 早い!


「くっ!?」


 私は飛び退って躱すが、ペインが詰めて来る方が早い!

 使いたくないとか言ってられない!


「『極限』!」

「もう、切り札を切るのか!」


 私は極限の使用により、ペインの動きについて行く!

 このまま押し切る!


「では、次の絶望だ。」


 ペインはそう言って、懐から薬を取り出した。

 まさか!?

 私は、薬を飲ませないように、飛び込む。


「馬鹿め。」


 突然、ペインは前方の空間に突きを放った。

 その瞬間、私は、前方から来る衝撃波に、吹き飛ばされた。


「遠当て。焦ったな?まだまだ甘い。」


 くっ!?

 ペインは薬を飲み終えてしまった。

 そして、溢れ出るペインの力。


「それ、吹き飛べ!」


 急速に接近したペインの蹴りで吹き飛ばされる!


 私は木々をへし折りながら飛ばされる。

 飛ばされている最中に、ペインが追いつき、2度ほど追撃を受けた。

 

「ぐっ!!」


 そして、森の外まで飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

「なんだ!?」


 外には兵士が大量にいた。

 まずい・・・


「どうした?そこまでか?」

「だ、大司教殿!」


 ペインも森から出てきた。

 ギランが驚いた声を上げた。


 その後は、私は一方的にサンドバックになった。

 やっぱりかなわない・・・でも・・・私は・・・こんな所で死ねない!


「廻里流剣術奥伝の二『紫電』!」


 私は最後の力を振り絞り、奥義の一つ紫電を放った。

 これは、旋風の歩法に合わせ、特殊な一蹴りと腕の振るい方で、旋風を越えた速度で出す、片手一本突きだ。


 ペインの喉元を狙ったこの突きを、ペインは首のひねりで躱す。

 若干掠ったようで、鮮血が飛ぶが、仕留める程ではない。

 

「惜しかったな。だが、身の程を知れ。」


 ペインは、躱し様、拳をハンマーの様に、上から私の背中に叩きつける。

 

「がはっ!?」


 私は地面に叩きつけられた。

 そして、極限が切れる。

 

「さて、先日と同じ様に、躾をしてやろう。」


 ペインは私の頭を踏みつける。

 それを見て、ギランが嘲笑していた。


「はっ!勇者なんて言っても、大司教様の足元にも及ばないじゃねーか!情けねぇ!」


 兵たちも蔑んで笑っている。

 

「やめて下さい!もうやめて!」


 レーナが来てしまった。

 

「レーナ!逃げて!私は良いから!」

「まだ、叫ぶ元気があるか。」

「ああああああああぁぁっぁ」


 ペインの踏みつけが強くなる。

 意識が・・・

 こんなところで・・・



 その時、朦朧とする意識の中で、浮かんできたのは、セレス様の力で龍馬の夢と繋いだ時の龍馬のセリフ。

『困ったら僕の名前を呼んで!心だけでも助けに行くから!』

 龍馬・・・助けて・・・龍馬・・



「龍馬!」


「ぐほっ!?」


 急に踏みつけの力が無くなった。

 私は顔を上げ、見上げる。

 するとそこには・・・私の大好きな彼氏が立っていた。


「貴様ら・・・よくも・・・よくも桜花を・・・覚悟しろ。」


 龍馬が来てくれた・・・

 私はその瞬間、ほっとしてしまい、意識を失った。

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