第244話 桜花の誤算 side桜花

 私とレーナと侍女のアナさんは、準備をして正門に向かったわ。

 そこには、本隊の兵士が隊列をなしていたの。


「遅いぞ!」


 一際豪勢な鎧を着た奴が私達に怒鳴って来る。


「うるさいわね。あなた誰よ?」

「何!?俺は今回の遠征の総大将を努めるギランだ!貴様!この俺に向かってなんと言う態度だ!」

「だから何?あなたの言うことを聞く、義理はないんだけど?」

「貴様!聞いているぞ!貴様は大司教様から制裁をされ、ボロ雑巾のようになったらしいな!また同じ目にあいたいのか!」


 こいつも知っているのか。

 

「ふ〜ん。で?あなたがするのかしら?できるの?本当に?」

「貴様ー!」


 ギランが掴みかかってくる。

 私は、その手が届く前に抜刀して、首筋に刀をつきつける。


「ぐっ!?」

「勘違いしてないかしら?私は、別にあなたに負けることはないんだけど?それとも、ここにいる兵士全員でかかってくる?私もただじゃすまないかもしれないけど、あなたはまぁ戦争に行く前に死んでるでしょうね。一番最初に。」

「くっ!・・・わ、わかった!わかったから武器をどけろ!」

「何偉そうにしているのよ。私は、あなたの言うこと聞くようには言われてないわよ?戦争に行けと言われただけ。わかったかしら?」

「わかった!わかったからどけてくれ!」


 私は刀を首筋から外す。

 ギランは忌々しそうに私を見てから、


「・・・取り敢えず、今から出発する。最後尾からついて来い!」


 そう言い放ち兵を出発させた。



 歩く事、一時間位たったわ。

 最初は、兵士達は、私達を警戒して見ていたけど、今は警戒も緩んでいる。

 街から外れ、少したったところまで来た。

 左手側には森がある。


 ここね。

 私は、レーナに目配せする。

 レーナは頷いた。

 アナさんも、既に事情をレーナから聞いているので、今から、私達がする行動が何かわかっている様で、緊張が見られる。

 

 私達は、兵士達の隙きを見て、森の中に入った。

 そして、ひたすら走る。

 このまま、森の奥に!

 バレても、散発的に来る兵士なら、私だけでもなんとかなる。

 そうして、少し開けたところまで来たところで、アナさんが限界を迎えたので、少し休憩することにする。

 どうも、まだ兵にはバレていないらしく、追手もない。

 よかった・・・なんとかなりそうね。


「どこにいくつもりだ。」

「「「!?」」」


 その時、後ろから声が聞こえた。

 振り向くと、そこにはペインがいたの。

 そんな・・・不在だって言ってたのに!


「もう一度聞く。どこにいくつもりだ?」

「・・・あなた、出かけていたんじゃなかったの?」

「貴様が、素直に言うことを聞くか確認するために、後方より気配を消して監視していたのだ。」

「そう・・・つまり、私達は、あの豚達にだまされたってことね。」

「よもや、あれほどの目に遭っても、心が折れておらぬとはな。」

「お生憎様。これでも勇者ですし?」

「ならば、再度、同じ目に遭わせて、次こそ心を折ってやろう。」

「レーナ、アナさんを連れて逃げなさい!」

「オウカ!私も戦います!」

「駄目よ!その子は戦えないでしょう!?逃げて!」


 私は、冷や汗を流しながら、ペインを見る。

 完全にしてやられたわね。

 でも、やるしかない!


「聖剣召喚!来なさい!『雪月花』!」


 私の手の中に、雪月花が現れる。

 その瞬間、私の能力が、膨れ上がるのを感じた。

 ペインは、眉を潜めて、


「・・・どうやら、何かスキルに目覚めたようだな。だが、結果はかわらぬ。」

「それはどうかしらね。」


 私は一気に飛び込んだ。

 勿論、身体強化は全開だ。


「廻里流剣術『旋風』!」

「むっ!?」


 ペインの障壁を切り裂く。

 よし!行ける!


 ペインは、私の斬撃を半身で躱した。

 そして、そのまま突きを放って来る。


 私は、その突きを刀で払おうとした・・・が、払えない!?


「くっ!?」


 そのまま、床に伏せるように転がり、すぐ跳ね起きる。


「障壁を切れたからといって、勝てるとは思わない事だ。」


 こいつ・・・なんて身体しているの!?

 刀で切れないなんて・・・何かからくりがある筈!


 負けてたまるもんですか!

 私はまた、ペインに切りかかった。

 私は、勝って、龍馬の所に行くんだ!!

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