第241話 尋問の結果

 概ね、二時間程で、帝国兵を、壊滅させることが出来た。

 僕たち個人個人の力も、かなり上がっている。


 みんな、一生懸命頑張っているからね。


 生き残りを集めてみると、50人位捕まえることが出来た。

 逃げ出したのは・・・気配察知を使う限り、ほぼゼロの筈。

 なんせ、この結果を、できれば、帝国に持って帰って欲しくないからね。


 今から僕たちが行くのに、必要以上に警戒されて欲しくないから。

 僕は、ふてぶてしく座り込んでいる、帝国兵の責任者に向き直る。


「さて・・・それじゃあなた達、帝国の計画を教えてくれる?」

「馬鹿め!誰がしゃべるか!俺は偉大なる帝国の貴族だぞ!矮小なる王国の・・・ブッ!?」


 僕は横面にビンタを放つ。

 アゼルと同じで、貴族はどうも居丈高で好きじゃないや。

 その分、尋問するのは、気が楽になるけどね。


「正直に話さないと、永遠に続くよ?もう一度聞くけど、目的は?」

「うるせ・・・がっ!!」

「目的は?」

「話すわけ・・・がっ!」

「なっ・・・!!」

「まっ・・・!?」

「はな・・・っ」

「ちょっ・・・!?」


 何度も続けていると、少しおとなしくなった。


「まだ言わないなら次は指を折ろうっと」

「待て!話す!話すから!」


 僕の言葉に、流石に責任者も慌てたようだ。


「ん?じゃあ話して。嘘ついたら分かってるよね?」

「も、勿論だ!俺たちは先遣隊だ!この砦を制圧したら、本隊を呼ぶ予定だった。」


 ふむ。

 やっぱりね。


「その薬はどうしたの?」

「あれは、王から下賜されたものだ。兵には全員配られている。」

「ふ〜ん。で、本隊は今どうしているの?勇者もいるの?」

「・・・本隊は、こちらに向かっている筈だ。勇者もいる。」


 そこで、視界の中にいたリディアが、首を横に振る。


 ベキッ!


「ぎゃあああぁぁぁぁ!?」

「さっき言ったよね?嘘ついたら次は指を折るって。こちらは嘘を見抜けるんだ。もう一本折る?」

「・・・」


 バキッ!


「ぎゃああああ!わかった!わかったからもうやめてくれ!」


 こいつ根性無いなぁ・・・軍の責任者じゃないの?

 

「本隊は、未だ帝国王都付近にいる筈だ!勇者は来ていないと聞いている!勇者は王からの戦争参加の要請を、拒否したとして、教会の大司教に制裁され、まだ動けない筈だ!!」

「制裁?何したの?」

「お、俺も見ていたわけじゃないから、詳しくは知らない!だが、帝国上層部の面前で、手ひどく痛めつけられたと聞いた!本当だ!」


 戦争参加を拒否した・・・か。

 どうやら、まともな神経をしているみたいだね。

 アイシャもまっすぐな性格をしているみたいだって言ってたし・・・


 でも、それなら、保護した方が良いかも。

 こっそり潜入して、連れて帰るかな。


 そういえば、勇者の名前はなんて言うんだろう?

 アイシャは、聞き取る前に、転移されちゃったって言ってたけど。


「勇者の名前はなんて言うの?」

「そ、それは・・・」

「言えない?」


 僕は目を細める。

 すると、責任者は顔色を変えた。


「言う!言います!勇者の名は・・・」

「名は?」

「オウカ!勇者オウカだ!黒髪の長い女勇者だ!これで良いだろ?もうやめてくれ!これ以上は知らない・・・ひぃっ!?」


 は・・・?

 今こいつなんて言った?


 桜花だって?

 黒髪

 長髪

 アイシャの話では刀を使う

 性格はまっすぐ


 あの桜花なのか?

 あの桜花を・・・痛めつけただって・・・?


 僕の身体から、無意識に膨大な魔力が溢れ出す。

 威圧された責任者は、失禁して、悲鳴を上げて後ずさりしている。


「リョウマさん!?」

「リョウマ!」

「リョウマっ!くっ!?落ち着けって!!」


 僕の魔力から来る威圧で、リディア達も苦しそうにしている。

 王国の砦の兵たちは、みんな腰が抜け、へたり込んでいた。


 アイシャが僕の肩を掴んで、無理やり僕を振り向かせた。


「「「「「「!?」」」」」」


 みんなが後退りして僕を見ている。

 意を決した様子で、リディア達が僕に話しかけてくる。


「リ、リョウマさん、落ち着いて下さい!まだ、あのオウカさんと、決まったわけではありません!」

「そうだリョウマ!まずは落ち着くんだ!」

「リョウマ!あたしだってあの勇者を制裁したって奴は許せねぇ!だけど、ここで、今怒っても仕方がねぇだろ!」

「リョウマさん!とにかく深呼吸して下さい!」

「リョウマくん!大丈夫!何があっても私達が力になるから!心配なら助けにいきましょう?だから落ち着いて!」

「リョウマお兄ちゃん、怖い顔はやめよう?いつもの優しい顔に戻って?」

「リョウマ様!わたくしもメイちゃんと同じく思いますわ!まずは冷静におなりになって!!」


 ・・・ふ〜。

 僕は、みんなに言われた通り、深呼吸を繰り返し、冷静になるように努める。

 ・・・そうだ。

 落ち着け。

 冷静になる訓練は、ジードの所で散々やったじゃないか。


 まだ、桜花と決まったわけじゃない。

 でも、そんな非道な事をされているなら、助けなくちゃ行けない。

 すぐに帝国に向かおう。


 そして、もし・・・もし、帝国にいるのが桜花だったなら・・・




 一人残らず滅ぼしてやる。

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