第235話 ツカサと王竜と
「・・・なるほど。いや、にわかには信じがたい話ではあるのだが・・・しかし、グレイガルム殿やディバイド殿と交流があるのであれば信じぬ訳にもいくまい。」
「私もツカサ様に同じくです。荒唐無稽ではありますが・・・本当であると仮定するのならば、あの魔力に伴う圧迫感にも理解ができます。」
ツカサ様とマサオミさんは、半信半疑ながらも理解しようとしてくれていた。
まあ、確たる証拠も出せないしね。
これから信じてもらえればいいか。
「まあ、これから信じてもらえればいいです。そして、ここからが提案になるのですが、僕は転移が出来る魔道具を作り出せます。そして、それを使用すれば、個人的にグレイガルムさんやディバイドさんと会うことが出来ます。それに、ネモス小国のアネモネさんや、ネメ共和国のセルヴァン大統領とも会うことができます。ですので、魔道具を設置する許可が欲しいのです。但し、あまり多くの人に知られたくはないのです。理由は言わなくてもわかると思いますが・・・」
「で、あろうな。各国の首脳陣に会いに行けるほどのものであれば暗殺なども容易い。それに欲しがるものも多かろう。周囲が騒がしくなるだろうしな。」
「その通りです。先に申し上げた通り、僕には使命・・・とまでは言いませんが、やるべきことがあります。その為には不必要な注目は浴びたくありません。」
「ふむ。」
さて、本題中の本題だ。
「まず、ツカサ様が懸念されている、グレイガルムさんと会う前に話してみますか?」
「む?会わずとも会話できると申すか?」
「ええ、これを使えば。」
僕は通信石をストレージから取り出した。
そして、使用方法を説明し、実際に使ってみる。
「もしもし?グレイガルムさん?龍馬です。」
『おお、リョウマか。凄いなこれは!本当に声が通じるぞ。』
「今、目の前にツカサ様がおられます。ツカサ様はグレイガルムさんとの友誼に陰が差したのではと心配されておられます。会うまでに一度会話をしてみませんか?」
『なんだツカサめ。そのような心配などいらぬと言うのに・・・うむ。話そう。』
僕はツカサ様を見て覚悟を聞く。
「今グレイガルムさんの了承を得ました。覚悟はよろしいですか?」
「うむ。是非もない。」
僕は、周囲にも声が聞こえるオープンモードで、通信石をツカサ様に渡した。
「・・・儂は火の元の国の王ツカサだ。グレイガルム殿でよろしいか?」
『おお、ツカサの声であるな。さよう我こそグレイガルムよ。ツカサ、無事で良かった。』
「今回の件、我が国の者が真に申しわけないことをした!貴殿達竜種の方々にもご迷惑をおかけした!」
『うむ。しかしそれは既に終わったことであろう?詳細は未だリョウマより聞いておらぬが、この通信石にて会話出来るということは、こちらの満足のいく結果に他ならぬ。だからもう気にするな。』
「・・・かたじけない。」
『今後も竜の里と火の元の国の関係は変わらぬよ。安心せよ。』
「・・・ありがとう。」
『なに、そちと我の仲であろう。』
ツカサ様はグレイガルムさんの言葉に、涙を堪えながら礼を伝えた。
そばにいるマサオミさんも目元を拭っていた。
『ところで、リョウマ、聞いておるのだろう?』
「ん?何です?」
『先に言った通り、我のねぐらにツカサを招待できるのか?』
「ええ、ツカサ様が許可をして転移扉を設置できれば。」
ツカサ様がマサオミさんを見て頷きあってから、こちらを見る。
「リョウマ殿。是非お願いしたい。」
「わかりました。マサオミさんも一緒に行かれます?」
「可能であればお願いしたい。」
「はい。グレイガルムさん、ツカサ様の側近のマサオミさんにも許可出していい?」
『ふむ。ツカサよ。その者は信用できるか?』
「ああ。儂が今現在一番信用し、頼っておる者だ。」
『ならばかまわぬ。』
「ありがとうございます。王竜様。私はマサオミと申します。よろしくお願い致します。」
『うむ。これからもツカサを助けてやってくれ。』
「はっ!この命に変えても!!」
通信を終え、僕達はツカサ様の寝所に移動した。
そして、壁に転移扉を設置する。
扉の前には着物かけを置く。
ついでに結界魔法でぱっと見わからないようにする。
鍵を近づけると扉が出てくる仕様だ。
僕はツカサ様達に使用方法を教えた後、打ち合わせをし、転移の決行を夜とした。
その後僕は城を後にし、エスメラルダと合流する。
そして里に帰るのだった。
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