第224話 宴の夜 in 竜の里(1)

 ふは〜疲れた・・・

 

 宴も終わり、僕たちはグレイガルムさんのねぐらの奥に、簡易拠点を設置する許可を貰った。


 ストレージから簡易拠点を設置し、リビングのソファでぐでっとする。

 それにしても・・・エスメラルダさんのお母さんが、エスメラルダさんが生まれた時に亡くなっていたとは・・・

 グレイガルムさんから聞いたんだけど、エスメラルダさんのお母さんはそれは美しい竜だったらしい。

 グレイガルムさんには王としての責務もあったので、あまりエスメラルダさんに構ってあげられなかったらしい。

 でも、そのせいで、エスメラルダさんに寂しい思いをさせてしまったと言っていた。

 出来れば幸せにしてあげて欲しいとも。


 僕は考える。

 僕には桜花がいる。

 僕は桜花が好きだ。

 でも、僕を慕ってくれている女の子達がいる。

 みんなとても魅力的で良い子だ。

 ・・・ぶっちゃけ僕もみんなに絆されて気持ちが無いとは言えない・・・

 ダメだね誤魔化しちゃ。

 僕はみんなも好きなんだと思う。

 流石にエスメラルダさんはまだ友人と思っているけど・・・でも時間の問題なのかもしれない。


 はぁ〜・・・僕はこんなに気が多い男だったのか。

 凹む・・・

 でも、みんなはそんな僕を好きだと言ってくれるんだ。

 だから、格好悪い所は見せられない。

 みんなにふさわしい男でいたいと思う。

 

 だから僕も逃げない。

 こう考えていることを僕からも桜花に言うべきだ。

 例えそれで愛想を尽かされても・・・傷つけることになったとしても。

 それが僕を好きになってくれたみんなへの、僕の誠意だ。


 そんな事を考えていると、リディア達が来た。

「リョウマさん。お風呂にお湯を張りましたよ。」


 ああ、そっか。

 準備してくれたんだね。


「ありがとう。僕は最後でいいからみんな先に入ってよ。」

「いえ、私達は一緒に入りますし、エスメラルダに入浴方法を教えながらになるので、先に入っちゃって下さい。」


 お?呼び捨てで呼び合うようになったんだね。


「そっか。それじゃ先に貰おうかな。」


 そう言って僕は風呂に向かった・・・様子を伺っているみんなの目にも気づかずに。


 

 身体を洗ってお風呂に浸かる。

 僕はお風呂が好きなので、ホームの風呂も、簡易拠点の風呂も大きく作っている。

 やっぱり足が伸ばせる風呂は最高だ!


 はぁ〜・・・こうしていると疲れが抜けるなぁ・・・

 3日後、将軍との待ち合わせ場所で、火の元の国の事がある程度わかりそうだし、それまではどうするかな・・・


 そんな事を考えていると脱衣所に人の気配を感じた。

 それも複数。

 何か忘れ物かな?


「リョウマさん、お湯加減はいかがですか?」


 リディアのそんな声が聞こえた。

 気にしてくれてたのか・・・そんなのいいのに・・・


「ああ、最高だよ。気にしてくれてありがとう。」

「いえいえ、それじゃ入りますね。」

「はー・・・い?」


 え?今なんて?

 ガラガラっと音がして引き戸が開けられる。

 ぎぎぎ・・・っと音がなっていると思われるくらい、恐る恐るそちらに顔を向ける。


 するとそこには・・・みんながバスタオルを巻いた状態でいる!?


「な・な・な・・・」

「さて、リョウマさんお背中流しに来ました。」


 言葉が出ない僕に悪びれもせずリディアがそう言う。

 しかし、その頬は赤みがさしている。


 他のみんなを見ると、堂々としているのはアイシャとメイちゃんとグレイス。

 モジモジしているのはシエイラとエスメラルダさん。

 赤みがさしているけどしっかりこちらを見ているのはリディアとエルマ。


 何してるの〜〜〜!!!???


「何でいるの!?」

「さっき言ったじゃないですか。って。だから入りに来ました。」


 一緒に入るって僕と!?


「ぼ・ぼ・僕はもう出るよ!」

「逃しません!!」


 みんなで出入口を通せんぼする。

 ううう・・・今素早く動いたらタオル落ちちゃうし・・・

 でもなぁ・・・

 

 そんな僕を見てリディアはふっと笑って、


「リョウマさん。そんなに深く考えないで下さい。何もここで事に及ぼうとしているわけでもありません。私達さっきみんなで、お互いの出会いとどう助けられたかを話していたのです。そこで、みんなでリョウマさんの為に何かをしたいと思ったのです。ですが、今のところ、私達はリョウマさんの背中を守れる程強くありません。ですので、せめてお背中を流そうと思っただけです。」


 どんな理屈!?


「どうかこれくらいはさせて下さい・・・私達が嫌いじゃなければ。」


 うう・・・その言い方はズルい・・・


「わ、わかったよ。じゃあ・・・お願いします。」


 そういう訳で僕は背中を流されることになった。

 いや、どういう訳なんだろう・・・


 椅子に座って背を向ける僕にみんな順番に「いつもありがとう」と言いながら背中を洗ってくれる。

 は、恥ずかしい・・・

 みんなの手で撫でられる度にドキドキする・・・

 一通り終わると泡を流してくれておしまい。

 

 緊張からため息がこぼれたけど、ようやく終わりだ。


「じゃ、じゃあ僕出るね。みんなはごゆっくり。」


 僕が出ようとすると、


「待って下さい」


と言ってリディアとシエイラが僕の両手を掴む。


「折角だから一緒に湯船につかりましょうそうしましょう。」


 なぬ!?一緒に入るですと!?


「大丈夫です。今日は不作法ですが、タオルを巻いたまま入りますから。」


 そういう問題じゃないんだけど!?

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