第222話 竜の宴

 宴が始まった。

 ・・・始まってしまった。


 竜はみんなお酒に強いようで、かなり強いお酒をがばがば飲んでる。

 僕の所にはひっきりなしにお礼を言う竜達が来る。


 勿論僕はお酒は飲んでいないんだけど、それでもずっと列が出来るのはきつい! 僕はみんなに助けを求めようとちらっとみると・・・エスメラルダさんと談笑する仲間たちの姿が!!


 裏切ったな!

 僕の気持ちを裏切ったんだ!

 父さんと同じで裏切ったんだ!!

 

 ・・・はぁ〜神話になる少年ごっこしてても仕方がないか・・・

 

 僕はお礼の列の解消のためどんどん盃を合わせて行く・・・中身果実水だけど。

 ひとしきり終わったのでげっそりしながら、チャプチャプするお腹を押さえてグレイガルムさんの所に行く。


「大人気じゃないか。」


 グレイガルムさんは僕を見て笑いながらそう言う。

 笑い事じゃないですよ!

 きついんです!!


「まあそうムスっとするな。他の者も感謝しているのだ。」

「そりゃわかりますけど・・・中にはエスメラルダさんを泣かせるなよ!とか言う人も混じっていたのできつかったです。」

「はははは!それは甘んじて受けてくれ。親としても同じさ。」

「・・・ですが、僕には・・・」

「うむ。それもわかっている。だがなリョウマ。人に限らず気持ちというのは止められぬ。我々竜でも同じだ。だから、諦めるにしろ諦めないにしろ、どう納得するかが大事なのだ。だから番(つがい)になれとは言わぬ。受け止めてやってほしい。その結果うまくいけば我は嬉しいがな。」

「・・・そうですね。どう答えがでるかはわかりませんが、僕も逃げないことだけは誓います。」

「うむ!それで良い!」


 グレイガルムさんはそう言って笑った。

 それにしても竜の人達(?)も気持ちの良い人ばかりだ・・・というか、そうじゃない人は反逆して離反したのか。


 この人ともうまくやっていけそうだな・・・そうだ!!


「グレイガルムさん。そういえばね、僕のホームがセレスティア王国にあるんだけどさ、そこの王様やネモス共和国の女王様、ネメ共和国の大統領とも同じ様な気兼ねない友人関係を結んでいるんだ。だからさ、その和に入らない?きっと気が合うと思うよ。」

「ほほう!それは面白そうじゃないか。リョウマの友人達ならば仲良くやれそうだな。しかし、そうなると空を飛んで行かねばならぬが驚かせてしまうのではないか?」

「ふ・ふ・ふ!そこはね。僕が作った転移扉を使えば大丈夫!」

「ふむ?」


 こうして僕はグレイガルムさんに転移扉設置の許可を貰うのだった。

 場所はグレイガルムさんのねぐらの奥。

 グレイガルムさんは嬉しそうにしていたけど、急に悲しそうになった。

 どうしたんだろう?


「・・・それならば、是非火の元の王であるツカサも連れていってやりたかった。」


 ツカサ・・・明らかに日本名だね。

 そういえば火の元の国は勇者が作った国だっけ。

 名前が日本風なのはそのせいかな?


「ツカサは今どうしているのだろうか。あやつはセレスティア王国の王をかなり気に入っており、いつも我に話していたのだ。だが、もう長いこと会っておらん。今生きているのか死んでいるのか・・・」

「グレイガルムさんも仲良かったんだね?」

「うむ。初代国王によく似ており、数少ない気があった者だ。勿論お主もな。」

「そっか・・・実は僕はセレスティア王国の王様から依頼を受けていて、急に鎖国した火の元の国の調査をする予定なんだ。それに、ワグナ達の件もあるからそれも解決しようと思っている。だからもし生きていたらグレイガルムさんの事を話しておくね。可能なら助けになるよ。」

「・・・すまない。余計な事を言ったかも知れぬ。」


 グレイガルムさんは申しわけなさそうに言った。

 まったく!


「何言ってるのさ!盟友なんでしょ?一方的な関係じゃなくてお互いがお互いを思い合うのが盟友なんだ。だから僕はグレイガルムさん達、竜の為にも頑張るよ!」


 僕がそう言うと、グレイガルムさんは目を少し見開き、その後で微笑みながら、


「・・・ありがとう。お主はやはり優しいな。エスメラルダの目に狂いは無かった。お主なら娘を任せられるよ。」


 そう言うのだった。


 そうして夜は更けていく・・・

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