閑話 お風呂 sideリディア

 今、私達女性陣はみんなでお風呂に入っています。

 これは、アネモネ様とガーベラさんが一度体験したいと言ったからです。


 作法を含めて教えるために、みんなで入ることになりました。

 アイシャやグレイス、ウルトさんはみんな汗だくですしね。


「これがお風呂・・・良いわぁ・・・とっても良い。やっぱりリョウマくんに絶対作ってもらわなきゃ。」

「・・・はぁ〜・・・これ鍛錬後に入ったら最高だなぁ。今も似たようなものだけど。」


 ネモス小国のお二人はお風呂に嵌りそうですね・・・ウルトさんも既にお風呂の虜になっていますし。


 それにしても・・・アネモネ様はとても美しいわね。

 さっきのしゃんぷーとりんすで更に髪にも磨きがかかったし、お優しくも愛嬌のある顔立ち、神がかったボディライン、すらりと伸びた足・・・女性としてとても憧れますね。

 ガーベラさんもその血を色濃く引いているようで、とても綺麗。

 ウルトさんも、スラリとしていて、顔立ちはとても整っています。

 ・・・リョウマさんよく我慢していますね。


「それにしても、最高の環境ねここは。美味しい料理、素敵なお部屋。快適な設備、完璧と言って良い防備、なによりここにはリョウマくんがいる。わたしもここに住みたいわ。」


 ・・・どこまで本気なのでしょうか?

 この人は私に似た気配を感じます。

 半分本気で半分冗談といったところでしょうか・・・


「お母様それどこまで本気?」

「勿論100%本気です☆」


 違いました。

 私よりもっと上手です。


「でも、そうも言ってられないのが本当のところなのよねぇ。ホント帝国は面倒くさいことしてくれたものね。」


 ため息をつくアネモネ様・・・こんなところも絵になりますね。


「とはいえ、おかげでリョウマくんというとっても良い男を見つけられたしね。ガーベラ頑張るのよ!お母さん応援しちゃうわ!」

「な・なに言ってるのよ!私もう断られたじゃない・・・」


 アネモネさんの言葉に後半をしょんぼりしながら話すガーベラさん。

 気持ちはよく分かりますね。

 でも、


「そんなに気にしなきゃいいんじゃねーか?」


 アイシャさんが代弁してくれました。


「なんでよ・・・」

「だって、あたしたちだって断られたことあるんだぜ?それに・・・」

「それに?」


 アイシャさんがウルトさんを目配せします。

 みんなの視線がウルトさんに行きます。


「うん?私はまったく諦めていませんよ。何せ最高の師匠ですし、最高の環境ですから。ライバルのグレイスもいますし、アイシャ殿も強い。それに師匠に言ったお慕いしているという言葉に嘘はありません。最高の男と出会ったのに諦めるのは女が廃ります!」


 気合の入ったウルトさん。

 それを見てガーベラさんは少し考え込むと、私を見ました。


「ねぇリディアさん。リョウマの彼女がいる事は知っているのよね?気になったりしないの?」


 その答えならもう出ています。

 私はシエイラを見ます。

 シエイラはにっこり笑いました。


「私も最初はなんとか籠絡して、リョウマさんから告白して貰えないかなと考えていました。ですが、そこのシエイラが先に突撃したのです。」

「ええ、私はどうしてもリョウマさんと一緒にいたかった。振られても何度でも言う決意でしたね。諦めるなんてできそうにありませんでした。ですから想いを伝えようと思ったのです。それに・・・リディアとグレイスさんが燻っているのもわかりました。でも、ここで言わなければ後悔すると思ったのです。だから酔って無理矢理巻き込んだのです。」


 そうでしたね。


「あの時は正直焦ったな。でも、リョウマに気持ちを知られた事で思い切る事ができたのには間違いない。すぐに腹は決まったよ。」


 苦笑しながらグレイスが言います。


「みんな考えすぎだぜ。良い男がいて好きになった。つがいになりたいと思うのは当然だろ?ならビビっててもしょうがねぇじゃねえか。」

「そうです。メイもそう思います。」


 まあ、この二人はどさくさに紛れてつがいの契りを結ぼうとしましたからね。

 行動力ナンバー1でしょう。


「私の場合も同じですね。種族を救われたお礼と称して押しかけました。」


 エルマさんの話は聞いています。

 流石は長寿種族、強かですね。

 とはいえエルマさん良い人ですから全然良いのですけど。


「私は皆様と少し事情が違います。死別した幼馴染によく似ているリョウマ様に惹かれ、接している内に気持ちが入ってしまいましたが、どちらかといえば伴侶となるよりも、お使えしたい気持ちが強いので。ですがそれもリョウマ様の人柄あっての事ですから。かなり強引に立場をモノにしました。」


 ルーさんはそうですね。

 実は一番油断できないかもしれません。


 色々聞いてガーベラさんは考え込んでいます。

 それまで聞き役に回っていたアネモネ様が、


「ガーベラ、あなたは今まで武術は努力したけど、恋愛はとんとして来なかったから、どうしたら良いか分からないかもね。でも考えてみて。技や魔法を極めようとして、一度失敗したら諦めるのかしら?何度も努力するのでは無くて?」


 そこで一度言葉を切って更に続けられました。


「確かにリョウマくんの言うことは筋が通ってるわ。それに耳障りの良いことを言ってごまかしてるわけではないのもわかります。」

「なんでわかるの?」

「そりゃそうよ。これだけ魅力溢れる子達が、どうぞ食べて下さいって言っているのに、手を出していないのよ?でも本当は凄くやせ我慢している部分もある。それはわたくしに反応した事からも明白よ。強靭な理性と誠実さで、押さえつけているだけ。かといって、非常にもなりきれない。情が涌いた子を命がけで守ろうとしている事からもはっきりしている。だとしたら・・・押さえるべきはリョウマくんじゃない。わかるかしら?」


 流石ね。

 国家元首なだけはあるわ。


「・・・わかんない。」

「ほらね。あなたそっちを頑張らなすぎたのよ。他のみんなはわかっているわね?」


「「「「「「はい。(ああ。)」」」」」」

「?私はわかりませんが・・・」


 ウルトさん以外はルーさんを含めてみんなわかっている、というか実践中です。


 そんなウルトさんとガーベラさんに向けて、アネモネ様は立ち上がって指を二人につきつける・・・アネモネ様・・・自信があるのはわかりますが少しは隠しましょうよ。


「押さえるべきは彼女のオウカさんよ。そちらが許可を出したら多分リョウマくんは拒否が出来ない。だからとにかくチャレンジして一緒にいる許可を貰うのよ。後はなし崩しでいける!・・・はず。」


 堂々と言い放つアネモネ様・・・最後に「はず」がついていましたがキメ顔です・・・全裸で。

 とはいえその通りではあるのですよね。

 リョウマさんを見続けてわかったことがあります。

 リョウマさんは『実は流されやすい』。

 

 但し、情が涌いている人に限る、ですが。


 さて、そこまで聞いたガーベラさんの反応は・・・


「そっか。そうよね。私諦めるのやめるわ!!今回はダメだったけど、会う度に迫ってみる!!諦めるなんて私らしくない!!」


 気合が入ったようです。

 頑張って下さいね。

 ガーベラさんとも仲良くできそうですし。


「ガーベラ様!共に頑張りましょう!!待ってろグレイス!私も同じ立ち位置に立ってやるからな!」


 ウルトさんは元から変わらないわね。

 グレイスも苦笑している。


 アネモネ様はうんうん頷きながら呟く。


「よかったわ。これでネモス小国も安泰ね。ガーベラがうまくリョウマくんの所に潜り込めたら、わたくしにもワンチャンあるかもしれないですし。ワンチャンあれば大人の魅力で・・・」

「お母様!?」


 前言撤回。

 一番侮れないのはこの女王様かもしれませんね。


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