第204話 お疲れ様会(2)

 料理やなんかはリディア達に任せて僕はお出迎え。

 庭の地下にある、転移扉のある部屋の隅に机と椅子を設置し、そこで本を読んでいる。

 アルザードさんは「王を待たせるわけにはいかない」と、少し早めに来て、僕の前で同じく本を読んでいる。

 僕は本・・・特にラノベや漫画なんかが好きで、向こうの世界ではよく読んでいたんだ。

 こちらに来てから読めていないからそこは凄く残念だ。

 できれば早く読みたいものです。

 僕は特にファンタジー物が好きなんだよね。

 二刀流の黒色剣士の奴とか・・・

 金髪童顔吸血姫がヒロインの奴とか・・・

 幻想をぶち壊す人の奴とか・・・

 加速する世界で戦うのや骸骨な至高の主の奴、魔界から帰ってきた仙道使いの奴なんかもいいね。

 他にもいっぱいある・・・あー早く読みたい!


 ・・・ラブコメ?それは・・・こっそりと(大量に)読んでるんだけどナイショなのです。

 桜花にバレるのが恥ずかしいし、何言われるかわかったもんじゃない・・・だから桜花は知らないはず・・・知らないでいてほしい。


 と、そんな事を考えていたら転移扉に反応があった。

 開く前に光るんだよね。

 王城に設置した奴だな。


 扉が開き、中から王様と宰相さんとウルトが出てくる。

 王様は凄くワクワクした顔で、宰相さんは若干緊張が見られる。

 ウルトはもう慣れたようだ。

 しょっちゅう来ているからね。


「おお!リョウマか!凄いのぅこれは!!人生で初めて転移したわい!!」

「・・・人生何があるかわかりませんな。驚きです。」

「師匠。お疲れさまです!!」


 王様のテンションすっごいなぁ・・・

 宰相さんは無事についてホッとしているみたい。

 

 アルザードさんが緊張しながら挨拶しているが、王様は、「硬いことは無しじゃ!今日は無礼講じゃ!」とにこにこしている。

 アルザードさんは苦笑いで宰相さんはため息をついている。


 さて、先に案内するかなと思っていると、扉に更に反応があった。

 2つともだ。


 王様が興味深そうに見ている。

 すると、ほぼ同時に扉が開いた。


「・・・本当に違う場所に着くとは・・・。」


 先に入ってきたのはセルヴァンさんだ。

 そして・・・


「・・・凄いわねぇこれ。あらリョウマくんこんにちわ。」

「・・・ふぁぁぁぁ。これが転移?」


 女王様とガーベラも入ってきた。

 そして女王様は相変わらずでした。


「お招き頂きありがとう。人生で初めて転移を経験させて貰ったわ。初体験ね。わたくしリョウマくんに初めてを奪われてしまったわ。」

「ちょーい!言い方!!もうちょっと考えて!!」

「お母様・・・もう!」


 くすくす笑いながらぶっこむ女王様と呆れた顔のガーベラ。

 それを見て目を丸くするセルヴァンさんとアルザードさんと宰相さん。

 王様はケタケタ笑っている。


「直接会うのは久方ぶりじゃ。今日はお互い楽しませていただこうかのぅ。」

「ええ。セレスティア王も御健勝そうでなによりですわ。先日はありがとうございました。」

「よいよい。それで、そちらにおられるのがネメ共和国の新大統領のセルヴァン殿じゃろう?久しぶりじゃのう。」


 王様が女王様と話した後、セルヴァンさんに顔を向ける。


「はい。セレスティア王並びにネモス女王アネモネ殿。以前外交官をしていたセルヴァン・アンタレスです。この度は我が共和国がご迷惑をおかけして申しわけない。合わせて、お助け頂いたこと感謝いたします。」


 セルヴァンさんが頭を下げていた。 


「気にするでない。頑張ったのはウルトじゃ。リョウマは儂のお願いを断りおったからのう。まったく。」

「それでも、それはとても素敵な理由でしたわ。わたくしは感動してしまいましたもの。」

「まぁ儂も聞いておったからの。ありゃ無自覚人たらしじゃ。」

「ええ、そうですわね。見事にたらし込まれましたわ。夜が切なくなるくらいに。」

「本当にあやつはイヤラシイ奴じゃて!ドスケベじゃ!!」


「何いってんだエロジジイ!女王様も変なこと言わないで!」

「あっはは。リョウマくんも形無しじゃないか!こりゃ面白いな。」

「セルヴァンさんも笑ってないでなんとか言ってやってよ!」

「リョウマくん。諦めるんだ。国家のトップに立つ人達に弁で勝てるわけないじゃないか。」

「ええ!?裏切り者〜!」


 僕が突っ込むと三人共笑っていた。


「リョウマ・・・お前、王にエロジジイとか・・・」

「リョウマも全く変わりないわね。安心したわ。」


と愕然とするアルザードさんと苦笑するガーベラが言う。

 王様がその様子を見て、アルザードさんに気にするなと告げる。


「アルザードよ。儂とリョウマは私的な場では同格じゃと思っておれば良い。お主とリョウマの関係と一緒じゃ。しかしお主もジラートの奴も見る目があるのぅ。リョウマと友人関係なのじゃろ?気のおけないこの感じは、儂らの立場じゃ中々得難いものじゃて。のう?ネモス女王よ。」

「はい。そのとおりですわ。楽しくて嬉しくてつい夜這いしてしまうくらいには気に入っていますのよ。もっともガーベラ達に邪魔されてしまったけれど。」

「よ・夜這い?」

「ひょほほほ。やるのうネモス女王よ・・・う〜んなんか硬いのう。よし!ネモス女王が良ければ私的な時には儂の事はディバイドでよい。セルヴァン殿やリョウマたちもの。勿論アルザードもの。敬語もいらん。」

「あら、でしたらわたくしもアネモネで良いですわ。リョウマくんもわかったわね?」

「僕もセルヴァンで良いですよ。」


 怒涛の様に決まっていくプライベートルールと、アネモネさんの衝撃発言でアルザードさんは目を白黒させている。

 助け舟を出すか。


「はいは〜い。わかった。わかりましたから取り敢えず家に行きましょう!」


 そうして地下室を出て母屋に向かうのだった。

 ・・・既にカオスだ・・・僕はガーベラの顔を見てお互いにため息をつくのであった。

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