第199話 勇者(1) sideアイシャ

 あたしはメイと一緒に後方の兵を潰しに来ている。

 すると、前方からすげぇ力が流れてきた。


 これは・・・敵の力か!

 こりゃ強えな・・・今のあたしじゃ多分勝てねぇ。

 リョウマに任せるしかねえな。

 

 あたしはあたしに出来ることを!


 そう思ってメイを見ると、メイもこちらを見て頷いた。

 言葉にしなくてもわかる。

 多分メイも同じことを考えたんだろうな。


 あたしとメイは兵を倒していく。

 すると、あたし達の後ろから馬が駆けて来るのが見えた。


 大体、数は100騎位か。

 増援にしては少ないが・・・来るなら容赦しねぇ!!


 あたしはメイに目配せすると、メイは風魔法を放った。

 相変わらずすげぇ威力だぜ!


 大半は消し飛ばしたが、数騎生き残っている。

 うん?あの先頭の女・・・強えな。


「勇者だ!勇者が来てくれたぞ!姫様も一緒だ!!『城壁』様もいるぞ!!」

「これで助かるかもしれない!!」


 帝国兵が口々に叫ぶ。

 そうか・・・あれが勇者か。

 

 リョウマと同じ黒髪を括りあげていて、その顔立ちは整っている。

 ぶっちゃけすっげえ美人だ。

 スタイルも良さそうだし。

 目は少しきつい感じ・・・気が強そうだ。


 勇者はあたしから少し離れたところまで来ると、大声で、


「撤退しなさい!!ここは私達が引き受ける!!」


と叫んだ。


 すると、帝国兵は一目散に逃げ始めた。

 こいつら・・・人の領土に攻め入っておいて好き放題してたのに、命惜しくて逃げるのかよ!

 

 あたしが追撃しようとすると、勇者が剣を抜いてそのまま魔法を撃ってきやがった。

 あたしは勇者を迎撃する。

 勇者はあたしの速さについて来やがった。

 でも、余裕があるわけじゃなさそうだ。

 こっちはまだスピード上げられるしな。


 メイの方を見ると、メイも着飾った女と魔法を打ち合っている。

 でも、そちらには大盾を持ったごついのがついていて、魔法を防いでいた。

 とはいえ、メイの方も余裕がまだまだありそうだ。


 あたしとメイは勇者たちと戦闘を継続する。


 勇者はかなり強いが、まだこちらの方が強いようだ。

 あたしは勇者を蹴り飛ばして距離を取る。


 メイの方も大盾の男を水で包み呼吸を出来なくして仕留めたようだ。

 着飾った女はそれを見て、涙を流しながら、「ラウス」!と叫んでいる。


 メイとあたしは隙をみて、前方から逃げてくる兵を倒していく。


 勇者は歯噛みをしながらあたしに、


「あなた達はもう戦う気がない人を殺そうとするの?最低ね。」


 そんな事を言いやがる。

 頭に来たあたしは、


「へ!人の国に攻めて来て、その土地の人を蹂躙しといて命惜しさに逃げる、最低なのはソッチのほうじゃねえか!よく言いやがるぜ!」


と言い返した。

 すると、


「嘘です!そんなのデタラメです!!」


という声がした。


「帝国は今そこら中の国から不当に攻められています!防衛がそんないけないことなのですか!!」


 そっちを見ると身ぎれいな女がそんな事を言ってきやがった。

 何いってんだこいつ?


「お前何言ってんだ?逆じゃねーか。帝国が理由なく諸国に攻め入って暴虐の限りを尽くしてんのにおかしなこというんじゃねーよ。」

「嘘です!」

「アホか!なんであたしが嘘をつかなきゃなんねーんだよ。あたしは嘘が嫌いなんだ!!。」

「そうです。メイでも知っています。今この国の人がどれだけ苦しんでいるのか、攻めて来ているあなたたちが知らないはずがないでしょう?そんな事でこちらは騙されませんよ!いくらお姉ちゃんが単純でも、です。」

「そうだろそうだろ・・・ってメイ、後で拳骨な!」

「酷いのです!本当の事なのにぃ!!」


「そんな・・・嘘・・・」


 着飾った女が呆然としている。

 勇者は何かを考えているようだ。


 すると、リョウマ達のいる方からすげぇ力を感じた。

 この力はリョウマだな!

 どうやら決めにいったようだ。

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