第198話 終結
シュエンの力は確かに凄い。
だけど、僕も今なら負けやしない。
僕は先程と同じように攻撃を捌くけど、シュエンは先程までのように素早く連続で攻撃出来ていない。
何故か?
それは、僕が捌く時に頸を流して捌いているため、勢いで崩れそうになるのを防ぎながら攻撃しているからだ。
さっきまでは出来なかったけど、封印を解いた今の処理能力と身体能力ならできる。
苦々しい顔をしているシュエンを他所に、僕は冷静に観察しながら戦う。
シュエンは段々と大振りが目立ってきた。
ここだ!!
シュエンの右片手袈裟斬りを、僕は体を左に半歩前進しながら左手で捌く。
そしてそのまま右手を握り込みながらシュエンの脇腹に当て一気に発勁!!
「ぐおっ!!」
これは寸勁という技で、ほぼゼロ距離からの攻撃になる。
食らったシュエンは体を折り曲げながら後ずさる。
しかし、シュエンはすぐに逆手で魔力弾を放ち反撃してきた。
僕は魔力弾を同じ様に魔力を込めた左手の平でいなしながら前に出る。
シュエンは驚きの表情を見せたが、すぐに連続で打とうとして来た。
させない!
僕はシュエンの剣を持つ右手の手首を掴み引っ張ると、体勢を崩したシュエンの魔力弾は明後日の方向に飛んでいった。
僕は掴んだ手をそのままに前進し、シュエンの背後に移動し、そのまま一本背負いをした。
プロレスで言う逆一本背負いだね。
掴んだ左手からシュエンの腕が折れたのが伝わってくる。
僕はそのまま頭からシュエンを地面に落とし手を離すと、大きく足を頭の上まで振りあげる。
「待っ!!」
「待たない。」
その足を静止するシュエンの首に振り下ろした。
首の骨を砕く音。
そしてシュエンは動かなくなった。
「シュエン様が・・・帝国の剣がやられたぞー!!逃げろ、殺される!!」
僕は周りを見回すと、帝国兵は後方に口々に叫びながら逃走している。
そっちにはアイシャ達がいたはずなのに・・・何かあったのかな?
でも、気配察知にアイシャとメイちゃんの力は感じる・・・
まだ戦っているのか?
戦っているのはアイシャだけか。
相手は・・・相手も中々強いな。
互角とは言わないにしろ、食い下がっているようだ。
僕はシュエンの懐から黒水晶を回収し、アイシャ達の方に足を向けようとしたところに、ガーベラが近寄ってきた。
「リョウマ!帝国兵はもういいわ!ネメ共和国の兵と話がしたいのだけど一緒に来てくれないかしら?・・・てどうしたの?」
「ガーベラ・・・無事で良かったよ。敵の後方にいたアイシャ達の方を敵兵が通り抜けているみたいなんだけど、何かあったのかなと思って。」
「ああ・・・なんかね、帝国兵が勇者が来たって言ってたわよ。撤退に協力してるらしいわね。アイシャさんが対応してるらしいわ。エルマさんが応援に行ったんだけど、作戦通りにして欲しいって追い返されたんだって。」
勇者か・・・
確かに今のアイシャと戦えるなら、かなり強いな。
どうすべきか・・・
すると、ガーベラが、
「リョウマ、迷ってるみたいね。アイシャさん達のところに行くべきか行かざるべきか。そうね。最悪こちらは私達だけでもなんとかならないこともないわ。心配なら向こうを優先してもいいわよ。どうする?」
と言った。
そうだなぁ・・・でも、気配察知に引っかかるってことは、無事な証拠でもあるんだよね。
勇者・・・勇者ね。
僕と同じ様に異世界から来た存在。
できれば同郷なら戦いたくは無いなぁ・・・
アイシャがヤバければそんなことも言ってられないけど、そんな感じもしないしなぁ・・・
向こうにはメイちゃんもいるし・・・
危なくなることはなさそうだけど、それはガーベラも同じことか。
ふむ・・・
よし!決めたぞ!!
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