第193話 不思議な男の子 sideガーベラ
「私も連れて行って!」
私は反射的にそう叫んでいた。
私はこの国が好きだ。
自然も。
民も。
そして家族も。
そんな私の大事なものを守るために、このリョウマ殿達は別行動して帝国を叩くという。
正直、正気なのかと思ってしまう。
誰が考えてもたった5人で万を越える敵と戦うなんて。
私は王女だけど、正直跳ねっ返りである自覚はある。
良く言えば元気、悪く言えば・・・じゃじゃ馬。
だけどその分、訓練には力を入れてきた。
努力に努力を重ねて、この国で有数の力を持っているという自負もある。
だからリョウマ殿達の力になれると思った。
だけど・・・
「それはできないよ。」
リョウマ殿は拒絶した。
「なんで!?私こう見えて強いんだよ!?あなた達の力になれると思う!!」
そう必死にアピールする私に、リョウマ殿は首を振って、
「ガーベラ様はおそらく強いんだと思う。一般的な人の中ではね。多分、五剣姫の次点になるくらいには強いんじゃないかな?だけど今回の戦いは戦争だ。死ぬリスクは最小限にすべきだ。ましてやガーベラさんはこの国の王女でしょ?手酷い傷でも負ったら取り返しがつかないんだ。戦争が終わってもそれで終わりじゃない。ガーベラさんや王女様の闘いはその後が本番だよ。」
諭すようにそう言った。
でも・・・納得できない!
「でも!!」
齧りつくように粘る私にリョウマ殿は真剣な顔をして、
「・・・ガーベラ様。あまり言いたくないけど、こう言わないと多分君は納得しないかな。足手まといだ。君を守りながらでは勝てるものも勝てなくなる。」
私はショックを受けた。
そして怒りが沸いてくる。
私のことをよく知らないのになんでそんな事がわかるのよ!
言い返そうとする私は、リョウマ殿の表情を見て言葉を詰まらせた。
・・・なんでつらそうな顔をしてるの?
「ガーベラ様。君は多分この国が好きなんだよね?だからそれを戦争に巻き込んだ帝国が許せないんだ。その気持ちはよく分かる。それに、僕たちだけで戦わせる事に申し訳無さを感じているんじゃないかな?でもね?僕たちも同じ理由で戦うんだよ?この国を守りたい。好きになれるであろうこの国を。自分たちの意思で戦う以上、君がそこに申し訳無さを感じる理由なんてないんだよ。だから・・・聞き分けてほしい。僕たちは決して命を捨てに行くわけでは無く、この戦いに勝利するために行くんだ。その為にガーベラ様が出来るのは僕たちと共に前に出ることじゃないんだ。」
「・・・・・・」
「どうかわかって欲しい。こんな事を言う僕の事を嫌ってくれて構わない。お願いします。」
そう言って頭を下げるリョウマ殿。
あなたが頭を下げる必要なんてないじゃない・・・
まわりを見回すと、何も言わずじっと私を見つめるお母様。
目を見開き無言でいる宰相。
苦笑しているリョウマ殿の仲間たち。
もう一度リョウマ殿に視線を戻す。
リョウマ殿は頭を上げこちらをじっと見ている。
表情は依然として申し訳無さそうに・・・それでいて決意に満ちた目をしている。
・・・そんな顔されたらわがまま言えない・・・断れないじゃない・・・
「わかったわよ。」
「ホント!?」
私が了承するとホッとしているリョウマ殿。
でもやられただけじゃ悔しい。
「そのかわり私の事を様付けで呼ぶの禁止ね。」
「え!?」
目を丸くして焦ってるリョウマ殿。
ちょっと可愛いじゃない。
「じゃ・じゃあ・・・王女様?」
「なんでそうなるのよ!」
「・・・女王様?」
「それじゃお母様といっしょじゃない!!それに女王じゃないし!!」
「ガーベラ・・・さん。」
「さんもいらない。」
「いや・・・でも・・・王族だし・・・」
「いらない。」
「・・・ガーベラ。」
「よし!私もリョウマって呼んで良い?ていうか呼ぶから!!」
「・・・わかったよ。」
渋々そう言うところは気に入らないけど、でも・・・
「これからよろしくね!リョウマ!!」
仲良くできそうね。
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とある女王と宰相の内緒話
女王「・・・ねぇ・・・これはもしかするのかしら。」
宰相「そうですな・・・ようやく男勝りのガーベラ様にも春が・・・感無量でございますな。」
女王「良い男だものね。わたくしだってさっきの謁見の間での言葉にはくらっときたわ。」
宰相「素晴らしい若者ですな。」
女王「・・・わたくしも貰ってもらおうかしら?」
宰相「・・・なりませぬ!」
とある黒猫パーティの会話
姉「・・・なぁ。」
エルフ「・・・ええ。」
妹「リョウマお兄ちゃんまた・・・もう!」
エルフ「あれで無自覚なんだもの。はぁ〜・・・」
2位「師匠・・・私もパーティに・・・そしていずれは・・・」
姉「・・・こっちにもいやがった。」
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