第191話 僕のしたい事

「なんでよ!!」


 謁見の間の中に叫び声が響く。


 そちらに目を向けると、15、6歳位の、ネモス女王の髪を少しだけ短くしてセミロングをボブカットにし、女王をそのまま若くしたような女の子がいた。


「なんで助けてくれないのよ!お母様は命を捨てようとすらしているのよ!?罪もない人達が大勢死ぬのよ!?あなた強いんでしょ!?どうして・・・どうして助けてくれないのよ!」

「ガーベラ。控えなさい。」

「ですが!!」

「ガーベラ、二度は言いません。」


 女王様が言葉を強めると女の子は意気消沈して顔を伏せ、静かに涙を落としはじめた。


「娘が失礼を致しました。」


 娘!?

 この人この若さでこんな大きな子持ちなのか?

 僕が驚愕している女王様は言葉を続ける。

 その表情は毅然としたものだった。


「申し訳ございません。無理強いは出来ません。むざむざ危険に身を晒す必要はないでしょう。すぐに国を離れて下さい。ご足労頂きあり・・・「待って下さい」」


 僕はセリフに割り込む。

 女王様は驚いたようにこちらを見ている。


「依頼料は入りません。僕は既にセレスティア王から依頼を受けている。この国を助けて欲しいと。ですが、それも断わります。個人的に思う所が出来ました。あなたのような自分を犠牲にしてでも、民の事を守ろうとする人が苦しめられるのは間違っている。それに、この城に着くまでにも色々な景色や生きる人を見ましたが、とても素晴らしい国でした。だから僕は、僕の意思でこの国を救います。救いたいから救うんです。何も入りません。言葉足らずで申し訳ありませんでした。」


 僕がそう言うと、女王様は最初唖然としていたけど、理解できたのか、涙を流し口元を押さえていた。

 家臣の人達も涙を流していた。

 さっき叫んだ女の子も涙を流しながら「ありがとう、ありがとうございます。」と小声で言っている。


 僕はみんなの方を振り向いて、


「みんなごめんね。王様の依頼は断るよ。タダ働きになっちゃうけど・・・手伝ってくれる?」


 そう言った。

 すると、みんなはとても嬉しそうに、誇らしそうに、


「流石リョウマ!あたしが惚れた男だぜ!勿論手伝うさ!!金なんてどうだっていい。」

「リョウマお兄ちゃんかっこいいよ!大好き!」

「リョウマさん素敵だわ。私も微力ながら力になるわね。」


 そう言ってくれた。

 うん、やっぱりみんなも自慢の仲間だ。


「師匠・・・やっぱりあなたは最高です!私もパーティに入れて下さい!」

「それはダメ」

「なんでですか〜!!グレイスだけずるいです!!」


 僕は半泣きですがりついて来るウルトを手で制し、通信石でセレスティア王に話しかける。


「王様聞いてた?僕は依頼を断るよ。」

『聞いておったよ。まったく・・・お主らしいのぅ。じゃからこそ信頼できるのじゃがな。依頼の件はわかった。ギルドに事情を話して取り下げておくとしよう。そっちが終わったら個人的な礼としてお茶を奢るくらいならよかろう?』

「うん。それなら喜んで受けとるよ。みんなも嬉しいだろうしね。」

「セレスティア王!?」


 苦笑する王様の声が聞こえた女王様は驚いた声を上げた。

 実はあらかじめ通信石は起動させておいたんだよね。

 

 女王様はまだ固まっている。

 そりゃいきなり声が聞こえたらびっくりするよね。

 王様はそのまま女王様に、


『久しいの、ネモス女王。これはリョウマが作った、離れたところでも会話ができる魔道具じゃ。詳細は聞いておったよ。国としての支援はウルトだけになってしまってすまぬの。じゃが、リョウマがおればなんとかなるじゃろうて。今回の件が終わったら、一度話をするとしようか。詳しいことはリョウマから聞いてほしい。其奴は今の通り、金や名誉では動かぬし言うことを聞かせることも出来ぬ。動くのはただ仁義によってのみ。じゃからこそ信用できるのじゃがな。リョウマ、ネモス女王は信用できるお人じゃ。お主の事を話しても大丈夫じゃと思うぞ。』


 勿論わかってるさ。そのつもりだよ。


「・・・そのような魔道具を作ってしまうとは・・・驚きました。セレスティア王は信じておられるのですね。リョウマ殿を。もう戦争は終わったようにお話されていますもの。ですが、わたくしも信じてみようと思います。リョウマ殿のあり方はよくわかりましたから。」

『ははは。そうじゃろう?では快勝を祈っておるぞ。リョウマ、後は頼むぞ。』

「まかせてよ。王様はお茶菓子の事でも考えてくれてたらいいさ。」

『ははは!言いよるわ!じゃが安心したぞ!ではまたの。』


 そして通信は切れた。

 さて、本格的に話し合うかな。


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