第190話 ネモス小国の女王

 僕たちは余分な寄り道をせずにネモス小国の王城に向かった。

 ネモス小国は風光明媚で、きれいな風景が至る所にあった。

 そのうちみんなで観光に来たいなぁ・・・

 

 道中すれ違う人や、農業をしている人達はみんな笑顔だった。

 とてもいい国だということが伝わってくる。

 本当は戦争で不安なんだろうなぁ。


 王城に到着して、城の門番に王様からの親書を渡す。

 すると、すぐに中に通された。


 僕たちは謁見の間に通されたんだけど、凄く物々しい感じ。

 みんなピリピリしてるのがわかる。


 ネモス王は既に玉座についていた。

 ・・・女性!?女王ってこと?


 そこには20代後半位の長髪のきれいな女性がいた。


「皆様、遥々とセレスティア王国よりいらしていただき、まずはお礼を申し上げます。わたくしはアネモネ・クレイ・ディア・ネモス。ネモス小国の女王をしています。本当にありがとうございます。特に今回の件、王国の誇る五剣姫のウルト殿と、それを越える強者のSランクパーティの方々を派遣していただいた事感謝しております。」


 深々と頭を下げる女性。

 礼儀正しい人なんだな・・・いきなり人を試したどこぞのエロジジイとは大違いだ。

 綺麗だし。


「早速本題とさせて頂きます。すでにお聞きしていると思いますが、現在ネメ共和国が戦争を仕掛けて来ております。共和国から逃亡してきたネメ共和国の上層部の話ですと、裏には帝国がおり、帝国の剣と呼ばれるかの者が軍を率いているとの事です。残念ながら、我が国は戦力に乏しく、徐々に攻め込まれております。わたくしの命と引き換えに軍を引いてもらえないか打診しましたが、拒否をされました。どうかお力をお貸し願えないでしょうか。

負け戦になる可能性はとても高く、巻き込んでしまうことは申し訳ないと思っています。ですが、帝国に隷属すればその先の略奪は苛烈を極めるでしょう。わたくしはなんとしても民を守りたい。わたくしはどうなっても構いません。わたくしに支払えるものはなんでも支払います。どうか協力して下さい。」


 ・・・この人は強い人だ。

 泣きたいだろうに気丈に我慢して僕たちみたいな平民にも頭を下げて懇願する。

 それもこれも民を守るため。

 自分を犠牲にしてでも守りたいんだ。


 僕が強くなった理由は僕が考えた事を貫き通したいからだ。僕は今この女王と、この国を助けたいと思っている。

 戦争はしたくない。

 最初は断るつもりだった。

 できるなら・・・人も殺したくはない。

 でも、理不尽に全てを略奪しようとしているのなら・・・僕は戦う。

 自分を犠牲にしてでも他者や国を守ろうとしている人が嘘をつくわけがない。

 略奪から国を守る。

 それが僕がこの強い女性にしてあげられる唯一の事だ。

 だから・・・


「その依頼はお受けしません。」


 僕がそう言うと、女王は悲しそうに目を布伏せた。

 僕が続きの言葉を口にしようと口を開きかけた時、


「なんでよ!!」


 その瞬間謁見の間に怒気を孕んだ声が響いた。

 そこにはきれいな格好をした美しい女の子がいたんだ。

 

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