閑話 その頃の桜花(6)
この世界に来て1ヶ月がたった。
魔法も使えるようになったし、戦闘技術も向上している。
と言っても、戦闘技術はそんなに苦労しなかった。
どうも私は、ここに来る以前から実践的な訓練を積んでいたようだ。
戦闘教官が驚いていた。
廻流剣術。
これが私がここに来てから思い出した事の一つだ。
今使っているのは剣だけど、私の技術はこの剣を使用するものでは無いと思う。
帝国には無かったけど、刀が本来の武器だと思うのよね。
今は騎士相手に1対多の訓練中。
「オウカ!頑張って!!」
訓練を見ているレーナの声が響く。
この1ヶ月、レーナとはかなり仲良くなった。
あの子は裏表があまりなく、すごく私を慕ってくれる。
どうも、歳の近い友人がいなかったみたいで、友達というのに憧れていたみたい。
レーナの常識の授業で、だいぶこの世界の事がわかったけど・・・やっぱりおかしいのよね。
どうもレーナ以外の私と接する帝国の人との間に意識にズレがあるように感じる。
他の人は凄く選民思想に溢れていて、他の国の人や民族を見下してる感じがする。
仲良くなろうと思えないのよ。
それに私に何か隠している感じもする・・・やはり信用できないわね。
魔法の授業も順調よ。
基本となる基礎魔法はもう完璧だし、レーナの話だと勇者補正のためか魔力量も普通の人とは比べ物にならない位あるらしい。
これならあいつに自慢してやれる・・・
ズキッ!
うっ・・・
『あいつ』が誰かは未だに思い出せてはいないのよね・・・でも私にとって凄く大事な人だというのはなんとなく思い出せた。
ふと周りを見回すと、騎士たちがへたり込んでいる。
もう平均的な騎士であれば相手にはならないようね。
でも、まだまだ油断は出来ない。
「どうやら多た1対数の戦闘も問題なさそうですな。ならば次は私と戦って頂こう。」
こいつだ。
年齢は50代前半。
身長は190センチを超えてて鍛え込まれた筋肉。
白髪を短く刈り込んだ頭に騎士鎧を着込んでいる。
右手には大剣を持ち、左手には大盾。
帝国が誇るという騎士の中の騎士といわれ、『城壁』の異名を持つラウス。
私はまだこいつに勝ったことはない。
その強さには敬意を評する・・・けど、
「今日も異教徒狩りをしてきましてな。命乞いをしてきたので惨たらしく止めをさしてやりましたわ。弱い奴らの相手はストレスが溜まって仕方がない。解消させてもらおう。」
・・・これだ。
強さをひけらかして他者を見下す。
慈悲も無い。
人格的にはとても尊敬できない・・・というか嫌い。
「・・・ご期待に沿えられるよう努力するわ。」
「そう願おう。」
まずは、帝国で一番強くなる。
行動を起こすのはそれからだ。
私の予感が確かなら、こいつらは絶対良くないことをしようと画策しているはず。
その時自分・・・とレーナを守れるようにしなきゃね。
その為にもこの『城壁』を倒せるようにしなきゃ。
他にも強者はいる。
帝国の全ての強者を倒せるようになったら帝国を脱して自分の足で世界を廻ろう・・・レーナも連れて。
私は身体強化魔法を全開にする。
こいつを乗り越えられないようでは話にならない。
正直今すぐ勝つのは無理だ・・・だけど諦めない。
私が私の可能性を信じないでどうする。
強くなって『あいつ』にまた並び立つんだ!!
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