閑話 帝国の闇 side ドミニク
我はドミニク・・クリミナ・イヴァースである。
この帝国を統べるものだ。
我が帝国は神の啓示により勇者召喚を行い成功させた。
神によると、この勇者により、帝国は世界の覇者となれるとの事だ。
今、我は退室する勇者と娘のレーナを見ている。
「・・・どういう事だ!勇者召喚では隷属の呪いがかかるのでは無かったのか!答えよ宮廷魔道士長!!」
退室を見送った宰相のピピンは宮廷魔道士長を見て怒鳴っている。
だいぶコケにされていたからな。
「・・・その筈です。召喚魔法自体は間違いなく成功しております。勇者召喚の魔法は神の啓示にあった通りですので、誤りは無いはずです。ですが・・・あの様子では隷属は無効化されたようです。」
「では貴様は偉大なる我らが神ヴァリス様に不備があったと言うのか!!」
「そうは言っておりません。ですが、勇者召喚は神より新たな力を授かると文献にあります。もしかすると、呪いを無効化するようなスキルを得たのかもしれません。如何に神の力であれ、同じ神の力であれば及ばないことはございましょう。」
「ぐ〜うぅぅ・・・忌々しい小娘め!この私に向かってあのような態度なぞ・・・」
喚き立てる宰相を見ていると苛立ちが強くなった。
「控えよピピン。少し黙れ。」
「・・・ははっ」
我がそう命ずると宰相は大人しくなった。
馬鹿め。
今はそこは重要ではないと言うのに。
この男は優秀ではあるが、自尊心が強すぎるので、すぐに頭に血が上る。
幸い、逃げられるという最悪の状況は脱したが、帝国に都合の良い常識を教えるべき人材を教師にあてがおうとした目論見が外れてしまった。
残念ながらすぐにまた勇者を召喚することは出来ない。
今回の召喚ですら、内々に帝国民1000人を生贄に捧げているのだ。
時間を置かねばその事実が明るみになろうというものだ。
と、すればあやつには嫌がおうにも従ってもらい、戦争の切り札とせねばならぬ。
そう、レーナが言った侵略を受けているというのは嘘だ。
むしろ、こちらが積極的に周囲の国々に戦争をしかけ、死んでいるのは戦争に出た兵士たちだ。
ただでさえ被害は甚大なのだから、これ以上国力を減らすわけにはいかぬ。
幸い周辺国やセレスティア王国などは、領土拡大に興味は薄いらしく、積極的には攻め込んでこない。
あやつがものになれば国力を回復させ、周辺国家を支配できる状況が生まれるはずだ。
うまくコントロールせねばな。
レーナとは打ち解けられそうであった。
場合によってはレーナを暗殺し、他国がやったことにすれば仇討ちの為に力を使うかもしれんな。
・・・良い考えかもしれぬ。
我には子供も多数いるし、政略結婚なぞ今は考えておらぬしな。
であれば、常日頃から一緒にいさせて情が湧くようにしておくか。
最悪、勇者が敵となりそうであれば毒殺でも暗殺でもすれば良いだろう。
全ては我が神ヴァリスとの盟約である、真神教を世に知らしめ、セレス信仰から真神教へ信仰を移行させるためだ。
その為に、神ヴァリスは帝国に兵器として勇者召喚の秘術を啓示して下さったのだから。
場合によっては教会とも協力する必要も出てくるかもしれぬ。
あやつを消したらまた勇者召喚を行えば良い。
その為にはまた生贄が必要となるが・・・まあ下々の者は我が帝国のために命を捧げるのは当然の義務だ。
また国力は落ちるが背に腹は変えられん。
大義の為に命を落とすのであれば本望であろう。
いずれにしろ、まずは勇者に力をつけさせる。
そして、帝国の尖兵とするのだ。
我が覇道のために!
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