閑話 その頃の桜花(4)

 足を止めたわたしに、お姫様?は話を聞いてくれると思ったのか、話し始めた。


「勇者様!先程は私の国の者がご無礼を致しました。わたくしの名前はレーナ・クリミナ・イヴァースと申します。この国の第2王女をしております。どうかわたくしの国をお救い下さい!」

「国を救う?頼む相手を間違えてるんじゃないかしら?私何も出来ないわよ。」

「いえ、あなたは勇者召喚によって女神セレス様に選ばれた勇者様です。あなたしか救うことは出来ません。」


 女神セレス・・・なんか聞き覚えが・・・う!!また頭が痛む?なんなの?


「・・・よくわからないけど、百歩譲って私がその勇者?とかだとして、なんで頭ごなしに言われて助けなきゃいかないわけ?私はあいつと違ってそんなお人好しじゃないわよ。」

「あいつ?とは?」

「・・・なんでもないわ・・・」


 あいつってだれだろう・・・やっぱり何か忘れてるわね、大事なことを。


「で、何故救わないといけないのかしら?私横暴な人って嫌いなのよ。」

 私がそう言うと、お姫様はシュンとした様子で謝ってきた。


「・・・はい。先程の宰相の言葉は謝罪いたします。申し訳ございません。そして現状なのですが、現在帝国は、他国より侵略を受けています。」

「侵略?」

「はい。理由もなく、宣戦布告もなく攻撃を受け、兵士が命を落としています。あなたにはその抑止力となって頂きたいのです。」

「人殺しはごめんだわ。」

「ええ。あなたはただ勇者としての力を示していただければ良いのです。絶対に敵わないと思わせる力。それを見せれば帝国に攻め入ろうとはしなくなるはずです。どうかお願いできないでしょうか。民をお救いください。お願い致します。」


 お姫様はそう言って私に頭を下げた。

 う〜ん・・・この子は嘘を言っているように感じないんだけど・・・なんか引っかかるのよね・・・頭のどこかで信じちゃいけないって思えるのよ。

 それに私は自分の目で見定めてから物事を決めるって決めたのよ・・・あれ?いつ決めたのかしら・・・ううう頭が痛い・・・どうも思い出そうとすると頭痛が酷くなるのよね・・・


「う〜ん・・・まあ取り敢えずあなた達の言い分はわかったわ。確約はできないけど。自分で見定めてからしか私は動く気はない。それでいい?」

「・・・はい。今はそれで結構です。よろしくお願いします。お父様それでよろしいですね?」


 お姫様がそう王様に言うと、一瞬顔を顰めたけど、その後に了承をした。

 ・・・この子は信用できそうだけど、この国はあんまり信用できなさそうね。

 どうもこの子とは別の思惑があるように感じられるわ。


「それで、私はこれからどうすればいいのかしら?」

「まずはこの世界の常識をご説明差し上げます。その後は、強くなるため訓練をして頂きます。」

「ふ〜ん。わかったわ。そういえばこの世界って魔法とかあるの?」

「ええ、ございます。それもご教示致します。」


 俄然興味が沸いてきたわ・・・出来るようになってあいつに自慢してやろうっと。

 そうそう、これはしっかりと通しておかないと。


「私からも王様に一つ要望があるわ。」

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