第147話晩餐会 拠点の庭の秘密 その1

「それについてちょっとご報告がありました。」

「何かね?」


 みんなが僕を見たのでコホンと咳払いを一つ。


「僕には転移魔法はまだ使えません。正確に言えば、使うための演算にすごく時間がかかり、使うにはとても時間がかかるし、労力が凄すぎて気軽には使えません。」

「ふむ、それで?」

「ですが、僕は付与魔法は使えます。そして、計算した演算結果を付与した転移点を繋ぐ物さえ用意すれば、後は魔力の問題だけです。そして魔力は魔石でプール出来るし、大気中の魔力を常時吸い取り貯める魔石もある。これを上手く組み合わせることができれば・・・」


 そこで言葉を切ると、アルザードさん、レイチェルさん、リディア、メイちゃんが目を見開く。


「まさか・・・」

「嘘でしょう?聞いたことが無いわよぉ?」

「それは書物の中にしか無いと言われる・・・」

「それってもしかして・・・」


 僕が頷く


「「「転移魔法」」」

「その通り。」


 要は、転移点を繋ぐ門Aと転移先に門Bを用意して、演算した結果をそれぞれに付与、もしくは刻印する。

 そして、魔石を設置してそこから魔力を吸うようにしておけば、起動の際の少量の魔力で門Aと門Bを繋げることができるわけだ。

 某どこで◯ドアとまでの自由度は無くてもDQの旅◯扉くらいの気軽さで移動できるようになる。


「これを僕の拠点の庭の地下に設置し、王都にリディアを送った時、同じ様に扉を作る。そうすれば行き来が容易になるし、いざという時には僕の拠点に逃げ込める。一石二鳥です。ちなみにテロア領にも扉だけは既に作ってあるので、後は演算した計算式の付与と、設置した扉を繋げるだけです。まだジラートさんの許可は貰ってないし、あの段階では拠点がどうなるかわからなかったので言っていませんでしたが。でも、そうすればリディア達もアルザードさん達も寂しくない・・うわ!?」


 リディアが胸に飛び込んできた!


「リョウマさん・・・・ありがとうございます。私達のことをこれほどに考えて頂いて・・・私は嬉しいです。大好き。」


 蕩けそうなリディアの笑顔と言葉に僕は真っ赤になっちゃった。

 う〜・・・ストレートに言われるのがこんなに威力があるなんて・・・

 まずいなぁ、これ・・・


 僕が固まっていると、アルザードさんが僕に頭を下げて、


「リョウマ、感謝する。これほどまで色々してくれるとは・・・最初私はあんな態度だったというのに・・・リョウマ、お前への頼みを決めたよ。」


 アルザードさんが頭をあげたので、しがみついてるリディアをちょっとずらして僕もアルザードさんに正対する。

 頼みっていうのは、アゼルを守れなかった責任に対する罪滅ぼしの事だね。


「どうかリディアとグレイスをしっかりと見ていてやって欲しい。そして手の届く範囲で守ってやって欲しい。今のリディアの様子を見ていて良くわかった。リディアが幸せになるにはお前が必要なようだ。必ず結婚しろとはいわん。だが、ちゃんと見ててやってくれ。お前に気持ちが湧いて初めて一歩進めるはずだから。」

「リョウマちゃん、私からもお願いするわぁ。リディアちゃんが初めて好きになった男性なのよ、あなたは。相手の方がどう言うかわからないけど、それはリディア達の仕事。あなたはちゃんと見ていてあげてねぇ。」


 ・・・そうかぁ・・・

 僕は目を瞑って考える。

 

 最初から相手がいるからってその人を見ないのは・・・逃げてるだけなのかもな・・・

 真剣に来ている相手にそれは失礼か。


「・・・わかりました。結婚するとはお約束出来ません。ですが、ちゃんと見て、ちゃんと考えて、逃げずに受け止める事はお約束します。勿論、付き合うとか手を出すとかそういうことではなく、心を受け止めるという意味です。しかし、これはご子息を守れなかった贖罪ではありません。これは真剣にぶつかってきているリディア達に失礼だと思ったからです。ご教示ありがとうございました。真摯に向き合います、」


 僕はそう言って、リディアから離れ、頭を下げた。

 僕の言葉に、リディア達は涙を流して喜んでいた。

 アルザードさん達も嬉しそうに笑っていた。


 その夜、みんなで楽しく食事を取り、遅くまで話し込んだ。

 そして、出発の日になった。

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