第135話 突然の闖入者(7)sideアゼル


 俺の名前はアゼル・リヒャルト・メイビスだ。

 名門メイビス公爵家の次期当主として日々精力的に活動している。


 どうもメイビスの人間は、昔ながらの貴族相手の正義の執行とやらに囚われており、実利有る活動をしていない。


 時には平民や弱いものを気にかけたり無駄なことをしている。


 俺はそんなメイビス家を改革して、3つある公爵家のトップに立ち、大公の地位を得ようと思っている。


 そのための根回しはしっかりしている。


 しかし、我が家の家臣の中では、俺は次期当主には相応しくないなどという噂をするものがいるらしい。

 

 そいつらは次男のアリオスを押しているそうだ。


 馬鹿な話だ。


 アリオスは当主には向いていない。

 未だにメイビスの使命とやらを大事にし、どうでもいい平民にも気をかけている馬鹿だからな。


 ちょっと俺よりも武の才能があるからと調子に乗っているのだ。

 そのくせ、俺を気遣うような事を言ってきたり、俺の振る舞いに文句を言ってくることがある。


 俺が当主になったらさっさと追い出してやる。

 

 そんな中、俺の派閥のプラーノ伯爵家の次男であり、俺の親友が、妹のリディアを嫁に欲しいと言ってきた。


 あんな隠し事も出来なくなるような女の何が良いのかわからんが、利権をいくつか融通すると言ってきたので、2つ返事で了承した。


 たかが妹と重要な利権では比べられるものではない!

 これはメイビス家の中での俺の功績として、今後も讃えられるものとなるだろう!


 意気揚々と親父に話に行くと、リディアは例のメイビスの任務とやらで不在だから、意思が確認出来ないため、保留にすると言ってきた。


 馬鹿な!妹の意思などどうでもいいではないか!この利益がどれほどメイビスを繁栄させるかわかっていないのか!?


 俺は頭の硬い父に説明した。

 そして、次期当主として利益ある話を持ってきたのに邪魔をするのかと問い詰めた。


 親父は渋々、前向きに考える事にしたようだ。


 脳筋の親父では即決断出来ないようだ。

 情けない。


 すると、どこで聞きつけたか、母が文句を言ってきた。

 

 元宮廷魔術師だかなんだかしらないが、どうせ見た目で取り入ったのだろう。

 話し方からもとろさがわかるだけに優秀ではないだろう。


 俺は母の話を無視し、勝手に進める事にした。

 女が家の事に口を出すなと言うのだ。


 俺の妻になる女には徹底させよう。


 それに妹はもう一人いる。

 政略結婚で更なる利益が見込めるだろう。


 話を順調に進め、後はリディアの帰宅を待って婚約を進める段階になって、親父から連絡があり、話を取りやめるように言ってきた。


 冗談ではない!!

 

 俺はすぐに出先から戻り、親父の書斎に怒鳴り込んだ。

 来客がいたが知ったことか。


 公爵家次期当主の俺が優先されるのは当然だ!


 そこには帰宅した妹と下賤な冒険者がいた。


 妹に縁談の話をしてやると、反抗してきやがった。

 妹の分際で生意気だ!

 お前らなど次期当主である俺の駒に過ぎんというのが何故理解できないのか。


 世間の奴らは妹は天才だともてはやしているが、見る目のない馬鹿ばかりだ。


 馬鹿な妹が家を捨てると言った。

 そんな許可をだすわけが無いだろうが!


 ちょっと頭を冷やしてやるか。

 リディアに痛い目を見せようと肩をつかもうとしたところ、冒険者が俺の腕を捻ってきた。


 痛い!

 身分を弁えずこんな暴挙に出るとは許せん!

 

 冒険者が俺を投げ飛ばしやがった。

 こいつは殺さなくては気が済まん!


 親父に直訴したら殴り飛ばされた。

 冒険者の諫言に騙されたようだ。

 俺を次期当主から外すとか気が狂ったことを言っている。


 馬鹿か?いや、馬鹿か。

 やはり脳筋では駄目だ。

 俺がメイビス家をなんとかせねば!


 親父が当主になりたければ冒険者を倒せと言ってきた。


 どういう・・・ああなるほど。

 財力と知力と暴力を持って当主の器を示せということか。

 親父もわかっているではないか。

 もとから当主は俺に譲るつもりであったようだな。

 俺を殴ったのは母達へのパフォーマンスか。

 女の尻に敷かれるとはなさけない・・・

 今回の件が終わったら、早々に当主の座を引いてもらおう。


 ルールは俺の自由にしていいそうだ。

 馬鹿め!

 俺はあえて1対1で戦うかの様に話を進めた。

 

 勿論俺は自分のツテを総動員するつもりだ。

 ちょっと金が高いがSランク冒険者にも話をつけて雇うとするか。

 親友からも兵を出させよう。

 俺専属の軍師であるカワキにもそれで作戦を組ませるか。

 

 まあ、奴は優秀だが、その必要は無いかもしれんな。


 なにせこのまま行けば100人対1人になるだろう。


 くくく・・・自分の知略が恐ろしくなってくるな。

 泣きわめく下賤な冒険者には俺がしっかりと止めを差しておくか。


 今から楽しみだ。



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ちょっと長くなっちゃいましたが切りのいいところまでということで。

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