第136話 決闘(1)


 僕たちは見届人のアルザードさんと僕の仲間たち、レイチェルさん、ゼパルさん、他私兵5人と共に決闘予定地についた。


 もう一人、暫定次期当主のアリオスさんもここにいる。

 見届人としてね。


 昨日の内に挨拶は済ませておいた。

 

 アリオスさんはとても良い人で、今回の話の流れを全てアルザードさんから聞いて頭を下げてきた。


「メイビスの者が本当に申し訳無いことをした。本当に一人で大丈夫なのか?」


 心配してくれるなんてやっぱり良い人だね。

 ちなみに、アリオスさんには僕の話はしてある。

 リディアがアリオスさんは信用できるって言ったからね。


 今後の協力も約束してくれたよ。


 さて・・・気配察知を使うと・・・いるいる。

 廃宿の中に100人近くいるなぁ。


 まあ、どうってことないけどね。

 

 ん?一人だけ強そうな気配の人がいるな。

 ちょっとは楽しめるかな?


 みんなは心配すること無く僕を見ている。

 まあ、みんなも、蹴散らすくらい余裕だろうしな。


 決闘する僕と、立会人のアルザードさんが建物に近づくと、アゼルと、あと二人の男が建物から出てきた。


「下賤な冒険者の分際で、この公爵家次期当主である俺を待たせるとは万死に値する・・が逃げずに来たことだけは褒めてやる。」


 ニヤニヤしながら見下してきた。

 こういう時は・・・


「あれ?今はまだ僕に勝ってないから、公爵家次期当主の話は無くなって、ただのアゼルになったんでしょ?もうボケちゃったの?」


 安定の煽りです!!


「貴様!!」

 

 アゼルはこめかみに血管を浮き上がらせながら怒鳴ったけど、隣の男に腕を引かれると、すぐに我に帰り、


「フン!そんなもの時間の問題だ!貴様を殺せば終わる話だからな。勿論貴様も貴族に楯突いて、ただで済むとは思っていなかっただろうが、バカ正直に一人で戦うとは。馬鹿にもほどがある!」


 そう言って、目線を隣の男に向ける。

 すると、隣にいた男が口を開いた。


「恐れ多くも公爵家次期当主にそのような口を開くとは・・・愚かな。私はアゼル様の親友たるプルーム伯爵家のイブル・プルームだ。あそこにいるリディア嬢の夫となる男でもある。なにやら貴様はリディア嬢に懸想しているらしいが身分を弁えよ!」


「おっしゃるとおりですな。私はアゼル様の腹心で軍師のカワキという。のこのこと出てきたようだが、こちらは我らの手駒も参加させて頂く。約定では複数の参加は認めないとは無いはずだ。よもや反対すまいな?」


 もう一人の男も名乗ってきた。

 

「別にどうでもいいですよ。結果はかわらないから。」


 僕が顔色変えずにそう言うと、腹心とやらは、馬鹿にしたように笑って、


「腕に自信がありそうだがやはり愚か者は愚か者か。アゼル様よろしいですか?」

「うむ。この馬鹿に現実を見せてやるが良い。」


 カワキはアゼルに確認を取ってから手を上げた。

 すると、建物から100人位に武装した男達が出てきた。


「どうだ?後悔しているか?だが、もう遅い。それに・・」


 アゼルは最後の一人に目を向ける。

 すると、その男は厳つい鎧に槍を持っていた。

 

 そして僕を見て、


「俺は、Sランクの冒険者であるゲルムスだ。今回はアゼル様の要請により参加することにした。悪いな。だが、冒険者であれば勝ち目のない相手には逆らわないものだ。多少やるようだが、馬鹿なことをしたな。手加減はできんからそのつもりでいろ。」


と、言った。


「ふはははは!どうだ!これが戦略というものだ!!後悔しても遅いぞ!!貴様は念入りに殺してやる!!父上!さあ開始の合図を!見事ご期待に答えて将来には素晴らしいメイビスをお見せしましょう!!」


 アゼルは既に勝ち誇っている。


 アルザードさんは苦虫を噛み潰したような顔をして、


「ここまで愚かとは・・・私はどこまで誤っていたのだ・・・とてもメイビス家を継がせられん・・・」


と小声で言った。


 ほんとにね。

 やっぱり甘やかすだけじゃ人間育たないんだなぁ。


 僕は呆れながら、ゲルムスに、

 

「別にいりませんよ手加減なんて。ブーメランって知ってます?」


と聞いてみたけど、


「ブーメラン?なんだそれは?なんだか知らんがせいぜい頑張るのだな。」


と言った。


 ブーメランないんだ。

 

 僕はアルザードさんを見て頷く。

 さて、蹂躙するか。

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