第133話  突然の闖入者(5)

 いきなりアゼルの顔面を殴りつけたアルザードさん。

 アゼルは倒れ込んだまま呆然としている。

 そしてアルザードさんは口を開いた。


「私が間違っていた。跡継ぎの長男だからと甘やかし過ぎたようだ。これではメイビスの使命をとてもこなせるとは思えぬ。皆、済まなかった。特にリディアとリョウマ、そしてその仲間達、不快な思いをさせて申し訳ない。」


 そう言って頭を下げた。


 僕たちはそれを見つめる。

 でも、大貴族たるアルザードさんが頭を下げることには誠意が感じられた。


 すると、アルザードさんは僕としっかりと目を合わせ、


「まず、今を持ってアゼルは廃嫡しメイビスの当主にはしない。次期当主は次男のアリオスとする。続いてリディアの縁談は私が責任を持って破棄してくる。安心して良い。そして私は責任を取って、今後5年以内にアリオスに当主を継がせ隠居しよう。それを持ってけじめとしたい。」


 うん・・・目に濁りは一切ない。

 この目なら信じられる。

 元は正義の執行者の一族のはずだからね。

 過ちに気づいたのならもう大丈夫かな。


 リディアを見ると僕を見て頷く。

 リディアの『眼』のお墨付きだね。


 そしていると、アゼルがわめき始めた。


「何故だ!!俺は貴族として当たり前の事をしているだけだろう!!古臭いメイビスの慣習に振り回されていては取り残されるだけだ!!利用するものがあれば誰でも利用すべきだろう!!そんな冒険者風情に騙されるな!!」


 そんな貴族こそメイビス家に処断される対象となるの位、部外者の僕にでもわかるんだけどなぁ・・・リディアもレイチェルさんもため息をついて呆れている。


 すると、アルザードさんが僕に視線を合わせた後、アゼルを見てこう言った。


「アゼル、一度だけチャンスをやろう。そこにいるリョウマと決闘をし、勝てたら前言を撤回してやる。」


 アゼルは最初唖然としたが、すぐにニヤッと笑って、


「そう言うことですか・・・いいでしょう。おい!そこの冒険者!ルールはこちらで決めるがいいな!持てる全ての力を持って戦う、これでどうだ?」


 僕を見る。


「別に何でもいいですよ。結果は変わらないし。」

「ふん!偉そうに。参加するのはお前だけでいいんだな?」

「ええ」

「よし!決まりだ!!では2日後にするか。これは決闘と同じだ!生死は問わず。いいな!」

「勿論いいですよ。ああ、そうそう場所ぐらい決めさせてもらっていいですか?」

「っち!いいだろう。」

「なら、場所はアルザードさん達が言っていた廃宿がある所でどうでしょう?」

「廃宿?・・・ああ、あのいわくつきの所か。・・・別に良いぞ。」

「ならそれで。アルザードさん、良いんですね?」


 

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