第132話 突然の闖入者(4)

「長男が可愛いのはわからなくもないですが、人には適正があります。アルザードさんには悪いですが、僕は彼では荷が重いと思いますよ。」 


 僕がそう言うと、アルザードさんは僕を睨みつけ、


「・・・お前に何がわかる!子供も持たないお前が!」


と言ってきた。


「ええ、正直僕にはわかりません。僕にも親がいますが、僕が両親から言われた数少ない大事なことは、人を裏切らないことと、仲間や友人や家族とは助け合うこと、優しさと厳しさは違うこと、ですので、家族を裏切るような言動と行動を取っているアゼルさんは本当に理解できない。そしてそれを子供可愛さに叱るべき時に叱らないあなたの事も。」


 本当に子供が可愛いなら、間違っている時は間違っていると教えることが優しさだと思うんだよ。

 じゃないと同じ間違いを何度もしちゃうし、人を傷つけたりしちゃうからね。


 アルザードさんは唇を噛んで俯いている。

 すると、


「あなた。今回ばかりは私も味方できないわ。悪いけど、私もメイビスを出るわねぇ。リディアちゃん達についていくわ。」

「旦那様、長い事お世話になりました。私めもお嬢様についていかせて頂きます。どうやら次期当主様と私めでは価値観が大きく違うようなので。私めの理想の貴族像とはかけ離れておいででございます。残念ですが失礼致します。」


 レイチェルさんとゼパスさんもそう言って席を立った。

 アルザードさんは愕然としている。


「・・・お前達・・・本気か?」

「はい、申し訳ありません旦那様。理はリョウマ様にあると思います。私もまた、間違っていることは間違っていると旦那様にお教えしていたのをお忘れですか?自分の子供にそれが出来ないのであれば、私の矜持が届いていなかったも同然ですので。」


 ゼパスさんがそう言うと、アルザードさんは俯き、


「あなた、私と結婚することになった時の事を覚えているかしら?私は、私を欲しがった貴族の不正で陥れられて、責任を取らされ宮廷魔術師を首になって、その貴族に妾とされそうだった所を、命の危険を顧みず飛び込んで不正を処断したあなたに助けられたからこそ好きになって結婚したのよ。そんなあなたの気高さがなくなったのなら、ここにいる意味はないわぁ。」


 レイチェルさんがそう言うと、アルザードさんは涙を一筋流した。


 僕はアゼルを放り捨てるようにして手を離した。

 アゼルは痛む手を押さえながらこちらを睨みつけ、


「貴様・・・ただの冒険者風情がいきがりやがって・・・許さんぞ・・・父上!こいつらを賊として衛士に突き出しましょう!!この国にいられないようにしてやる!!」


と言った。


 ここまで来て親の力借りるの?

 情けないなぁ・・・

 僕がそう思ってアゼルを見ていると、みんなもそう思ったようで、冷ややかにアゼルを見ている。


 ・・・ていうかレイチェルさん達まで同じ様に見てるし。


「父上!!何故何も言わないのです!?メイビスの名が舐められているのですよ!!」

 アゼルがアルザードさんに詰め寄ると、アルザードさんはため息をついてから立ち上がると・・・・バキィィっ!!


 アゼルの顔面を殴りつけた。


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