第106話 獣人の姉妹との食事(1)

 僕たちは、ギルド近くの飲食店で、食事を取ることにした。


 獣人の二人は凄く畏まっているみたい。

 まずは、打ち解けるところからかな。


「まず、自己紹介かな。僕はリョウマ。冒険者をやっているんだ。ランクはCランク。」


 僕がそう言うと、続いてリディアとグレイスが笑顔で、


「私はリディアと言います。王都のセレスティア王立学院に通っています。これから実家のあるメイビス領アルメスまで行く予定で、リョウマさんに護衛をして頂いています。」


「私はグレイスという。リディア様の護衛だ。よろしく。」


と言った。


 僕たちの笑顔でようやく硬さがとれたのか、手甲をした獣人の女性が、


「あたしは狼人族のアイシャだ。さっきは助かったぜ。礼を言う。それと、飯もありがとう。感謝する。」


と、頭を下げた。

 すると、続けて、小柄な獣人族の女の子が、


「メ、メイは狼人族でアイシャお姉ちゃんの妹です。あの・・・ありがとうございました!」


 そっか〜、猫耳じゃなくて狼耳だったんだね。


 すると、リディアが、


「それにしても、獣人族の方が、王国で冒険者をしているのは珍しいですね。生まれもこちらなのですか?」


と言うと、アイシャさんが少し俯いて、


「いや・・・生まれは帝国で孤児だった。帝国は市民権の無い孤児を捕まえて奴隷にするから、上手く隠して住んでいたが、ある時、バレそうになっちまってな。メイと一緒に逃げ出したんだ。」


 ・・・大変だったんだな・・・


「幸いあたしは腕っぷしが強かったから、孤児というのを隠して冒険者をしていたんだ。メイは回復魔法の才能があったから、回復よりの魔法師として一緒に冒険していたんだ。けど・・・」


 アイシャさんが言いづらそうに下を向く。

 メイちゃんがアイシャさんを見てから、こっちを見て、


「メイが病に侵されたんです。そして、薬が必要になったのですが、その薬は高価な上、完治するわけでもなくて、発作が出たら飲まないと死んでしまいます。病気の影響か、激しい運動もできなくなって・・・それで・・・」


「あたしが、それまで稼いだ金を薬につぎ込んでなんとかしてたんだけど、王都で金が尽きてな。どうにか依頼を受けようとしたんだが、薬を含めた生活費に足りる単独の依頼がなかったんだ。そこをあいつらに誘われて・・・」


 騙されたわけですね。

 そこで食事が来た。

 食事を取りながら話を続ける。


「アイシャさんはランクはどれくらいなんですか?」


 僕が気になったことを聞くと、アイシャさんは僕を見て、


「アイシャでいい。獣人族は強い者に敬意を抱く。お前のような強者に、さん付で呼ばれるとむず痒くなる。お前の仲間達も呼び捨てで良いぞ。」


「わかった。アイシャと呼ばせてもらうよ。僕もリョウマで良いよ。同じ冒険者だしね。」


 ふむ・・・他の人だと抵抗あったけど、何故かアイシャには抵抗がないな。

 やっぱり同業者ってのが関係してるのかな?

 後は・・・僕は妹ちゃんの方を見て、


「あと・・・メイちゃん、でいいかな?」

「は・はい・・・あの・・・メイは、リョウマお兄さん、リディアお姉さん、グレイスお姉さんって呼んでもいいですか?」


 勿論!

 リディアもグレイスも目尻が下がってニヤついてる。

 嬉しいんだね。


 アイシャもメイちゃんを見て、優しく笑ってからから、


「それでランクだったな。」


 そうそう。

 どれくらいだろう?

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