第82話 打ち上げの後 sideシエイラ(2)

 私は、落ち込んでいるリディア様に告げました。


「リディア様、私は思うのです。人の気持ちを動かすのは、やはり、正直な気持ちではないかと。リョウマさんは誠実なお方です。ですから奸計を用いても、気持ちを向けてはくれないのではないでしょうか。まっすぐぶつかって、真正面から受け止めてもらって、初めてスタートラインに立てるのだと思います。」


 リディア様とグレイス様は、目を見開き、こちらを見ておられましたが、意を決したように、グレイス様がお口をお開きになられました。


「姫様・・・いえ、リディアちゃん。私もシエイラ殿の意見に賛成です。やはり、私に計略は向きません。どうせ玉砕するかもしれないのならば、正面から行きたい。それに・・・シエイラ殿、あなたはまだ諦めていないのでしょう?」


 私は、グレイス様が、私の事を、理解してくれている事がとても嬉しくなり、思わず微笑んでしまいました。


「そのとおりです。リョウマさんにもそう言いました。諦めないこと、まずはお友達から、と。そのために、呼び捨てで呼んでいただくようお願いもして、聞き入れて頂きました。」


 それを聞いて、リディア様は一瞬震えたように見えました。

 そして、またうつむいて無言でおられます。


 私とグレイス様は、そんなリディア様を見守ります。


 少しした後、リディア様は顔をお上げになられました。


 そのお顔は、いつもの自信に満ちたお顔です。


「・・・私としたことが、初めての恋に臆病になっていたようですね。情けない。全面的にシエイラさんの意見に賛成します。まずは、私とグレイスの気持ちをリョウマさんに直接ぶつけてからですね。といっても、リョウマさんはもう気づいておられるのでは?打ち上げの時の様子がそう見えましたが・・・」


「流石でございます。実は私もリョウマさんと話していた時、それに気づきました。」


「で、あれば、早々に思いを告げましょう。まずは、一歩先にいるシエイラさんに追いつくところからです。おねえちゃん、良いですね?」


 そう言って、リディア様がグレイス様を見ると、グレイス様は不敵な笑みを浮かべられて、


「勿論だとも。今からリョウマのたじろぐ姿が楽しみで仕方がない。」


とおっしゃいました。


 それを受けて、リディア様は私に、


「まずは、スタートラインに立つ、そして、その上で、リョウマさんに、気持ちを向けて貰えるよう努力する。シエイラさん協力しませんか?リョウマさんとオウカさんに認めて頂けるように。」


 笑顔で、そう仰られた。

 その答えはもう決まっています。


「はい、一緒に頑張りましょう!」


 リョウマさん・・・覚悟して下さい。

 恋する乙女は暴走する馬と同じ。

 逃げられるとは思わないで下さいね!


 そうして私達の楽しい夜は更けていったのでした。

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