第57話 ゾルディア商会での攻防〜決着(1)sideリディア


 ゾルドの掛け声と共に、一斉にゾルドの手勢が、襲いかかってきました。


 こちらで戦うのは、主に私とグレイス。


 ジラート卿の領民軍は主に、周囲を囲むように展開し、敵のうち漏らしがないようにして頂いています。


 おそらく、ゾルドが出てくる前の戦いを見る限り、魔狂薬の使用者・・・それも、戦いを生業としている者の相手であれば、領民軍は時間を稼ぐのすら、厳しいでしょう。


 今、敵は概ね30人くらい。


 最初に倒しきれずに・・・というか残った10人と、ゾルドが引き連れてきた20人。


 見る限りは全て魔狂薬使用者です。


 こちらの領民軍は倍以上いますが、普通ならば蹂躙されていたかもしれません。


 普通であれば。


「はああああっ!」


 グレイスが身体強化を全開にしています。


 以前よりも、重厚な魔力濃度であろうことが感じられます。


 私も負けてはいられません!


 私は詠唱を開始しました。


『大いなる力を持つ者、凍える吹雪の化身よ。眼前の敵に永久の眠りを与え給え』


 詠唱を終える頃には、三人ほどが私に飛びかかってきていました。


 でも大丈夫、間に合います!


 これは氷属性の上位魔法。


 リョウマさんに教えてもらった氷の理論と魔法により、使用することができるようになりました。


 まずは、数を減らします!


『カイーナ』


 私を中心に、吹雪の竜巻が形成されます。


 飛びかかってきた三人は、竜巻に触れた瞬間、氷像となり、そのまま砕けていきます。


 人の命を奪う覚悟は、既にできています。


 そう、以前リョウマさんに助けられた時、次は失敗しないように。


 リョウマさんの隣を歩けるように!


 そのまま、前方に手を振り払うように水平に動かします。


 竜巻は前方に弾け飛びました。


 こちらに向かっていたさらに4人ほどを巻き込み、凍らせながら砕いていきます。


 その場にいる人間は、全て動きを止め、私を見ています。


「ふう。まずは人数を少し減らせましたね。」


 今の私にできる一番強力な魔法・・・当然、魔力はかなり持っていかれました。


 あと半分は切っているでしょう。


 でも、初手でペースは頂きました。


 押し切って見せます!

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