第51話 伯爵からの事情聴取(2)
魔狂薬。
それは、人間の力を限界以上に引き出す。
ただし、強い中毒性があり、破壊衝動が強くなる。
常用していると、善悪の判断がつかなくなり、理性を失う。
最終段階は、見境なく人を襲うようになるらしいが、例外があり、とあるものを所持している人間には襲いかからないらしい。
「それがこれですか・・・」
伯爵が取り出したのはバッジ一個。
シンプルなデザインで、真ん中に紋章がある。
この紋章は・・
「それはセレス様の紋章・・・ではありませんね。なんでしょうか?」
僕は鑑定をする。
【品名:
教会において女神セレスよりも上位とされる真の神ヴァリ
スを信仰する者のみがつけられる。
教会内でも限られた者しか存在を知らず秘匿されている。
状態:真神の祝福を受けているため真神の紋章が装飾されてい
る】
そうか・・・真神ってヴァリスのことか・・・
リディアとグレイスには後で言おう。
詳しい事情を知らない伯爵達に言って、後で教会から命を狙われても困るし。
「う〜ん・・・わかんないなぁ。また今度調べてみよう。」
と言いながら、リディアとグレイスにしか見えないようにウィンクをする。
二人は、どうやらそれで、何かあると理解してくれたようだ。
「そうですね。それでジラート卿。これからどうされるおつもりで?」
伯爵は口を引き結び、
「・・・勿論捕らえる。だが、奴らは薬を投与している者を多数抱えている。そう簡単にはいかぬだろう。体制を整えて・・・」
「その役目、僕にまかせていただけませんか?僕なら多分一人でも制圧できますよ。」
あいつらボコるのは僕の役目だ。
なにせ・・・
「伯爵。僕は、昨日実は、あなたとゾルドが、密談していた現場に潜入していたんですよ。あなたもあいつが言っていた事を覚えてますよね?僕はああいう奴が大嫌いなんです。地獄を見せてやらないと気が済まない。」
僕がそう言うと伯爵は、
「・・・気持ちはわかる。私も反吐が出る思いだったからな。しかし現実的に一人では難しいぞ。グレイス殿でも、おそらく、数人がかりで押さえにこられたら、対応できないと思うが。」
伯爵がそう言うと、それを聞いていたリディアとグレイスが、
「リョウマさんが、何を聞いてそんなに怒っているかは、わかりません・・・想像はできますが。しかし、だからといってリョウマさん一人で戦わせるわけにはまいりません。お説教もう忘れたのですか?」
「そうだぞ。それに、ジラート卿の仰る私というのは、リョウマに出会う前の私だろう。今は、お前に教示された技もあるし、格段に強くなっている。置いていかれるのは癪だ。やるなら皆で、だろう?」
まあ、たしかにたった3日教えただけだけど、以前よりかは格段に強くなってるだろうね。
魔力効率が改善しているから。
グレイスは身体強化の魔法が、以前の2倍くらいにはなってるだろうし、リディアは威力が向上してるだろうし。
でも、そもそも君たちは護衛対象でしょうが。
僕は呆れてそう言うと、グレイスは、
「こんな程度、これからの事を考えたら、苦難にもならないだろうさ。実践は修行に勝ると言うしな。」
とニコッと笑った。
好戦的な笑顔だけど・・・とてもキレイに思えた。
はー・・・まあいっか。
何かあれば、僕が皆守ればいいだけのことだ。
さあ、ゾルド。
チェックメイトだ。
首を洗って待っていろ。
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