第52話 ゾルディア商会での攻防(1)


 一夜明け、朝食を取った後、今、僕はスキル:隠密を使用してゾルディア商会の屋根の上にいます。


 近くには、グレイスとリディア、伯爵の信用ができる領軍兵のみが、教会とゾルディア商会付近に待機している。


 僕は、内部を何度か魔法:エクスプロアとスキル:気配察知で確認しているのだけど・・・まだゾルドは一人でいるだけだ。


 もし、ゾルドが、昨日の隠し部屋に行って、誰かといたら、忍び込んで確認。


 教会からの使者だとしたら、外に向かって合図を出す。


 そのタイミングで、それぞれが建物に踏み込むことになっている。


 取りこぼしがあるといけないので、僕は教会関係者を追い、ゾルドは伯爵達にまかせる。


 そういう手はずになっていた。


 本当は、ゾルドをこの手でぶちのめしたかったんだけど・・・それは、今までいいように使われていた伯爵に譲るか。


 すると、2つ目の鐘がなる直前くらいに、一瞬、隠し部屋の壁に穴があいたのが確認できた。


 そしてそこから人が入って来るのも。


 ん?これは・・・教会の方からだ。


 もしかして、教会と商会は地下で繋がっている?


 僕は、教会の屋根に飛び乗り、エクスプロアを使用する。


 すると、教会にも地下室があり、その地下室は、極めて商会の隠し部屋に近いことがわかった。


 これは最初からそういう用途で作られてるな・・・


 僕はすぐにリディアに念話を飛ばし、伯爵に突入時、教会の出入口も包囲してもらうよう頼んだ。


 よし、すぐ侵入しよう。


 僕は昨日と同じ手順で侵入する。


 すると、隠し部屋の門番が二人になっていたので、その二人は当て身で気絶させることにした。


 隠し部屋に入ると、室内には、白色の長いローブをまとった、40代くらいの男とゾルドがいた。


 ローブの男の脇には、二人の白い騎士鎧をつけた男。


 ゾルドの脇にも男が一人いた。


 何か話し込んでいたので、僕は聞き耳をたてることにした。


「・・・という訳で、メイビスの娘と五剣姫がこちらの手に落ちそうです。これで計画はさらに万全となるでしょう。」


 そう言うゾルドに、ローブの男は、


「それは重畳だ。戦力はどれだけあっても足りぬからな。あの方もお慶びになる。」


「そうでしょうとも。薬で戦力はさらに向上するでしょうし、中毒でこちらの意のまま。他の五剣姫も、うまくいけば、こちらの手駒とできるかもしれません。」


 そう言って嫌らしく笑うゾルド。


 正直いますぐぶっ飛ばしたい。


「そうなれば尚良し。後はジラートからの報告を待つのみか。」


「そうですな。とりあえず、フェイル司教。まずは、五剣姫とメイビスの至宝を一緒に味わいませんか?」


 こいつはフェイルと言うのか。


「・・・ふむ。悪くはないな。噂の美姫の味・・・いかほどのものか確かめるのも悪くはないな。」


 ・・・こいつら絶対許さない。

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