第17話 バルムス(2)

 グレイスが馬車から降り衛士達の前に立つと、衛士達に対し、

 

「バルムスの衛士はこんなに質が落ちていたとはな。クズども。気合を入れてやるからとっととかかってこい。安心しろ。剣は使わん。」

 

と静かに言う。


 すると衛士はいきり立って、

 

「なんだと!女の分際で生意気だ!後悔しろ!!」

 

と言って槍で付いて来た。

  

 グレイスはそのまま槍を躱し様に掴み引っ張ると、逆の手で頬を殴り倒した。


 衛士は3メートル位吹っ飛び気絶していた。

  

 それを見た衛士たちは、一斉にグレイスに襲いかかったが、全て殴り倒されていく。

  

 7人程殴り倒したところで、門の方からさらに衛士たちが集まってくる。


「貴様ら何をしている!衛士に手を挙げるとは・・・極刑にしてくれる!」

 

 その中でも一際偉そうな奴がそう言ってきた。

  

 グレイスはそれを聞き、

 

「ほう。これが極刑に当たるのであれば、公爵家の馬車に手を出したことがどれほどの罪になるのか見ものだな。一族郎党縛り首か?」

 

 ともう一度ネックレスを見せながら言った。

  

 すると偉そうな奴はすぐに顔を青ざめ

 

「は?・・公爵家だと・・・馬鹿な・・・いやしかしあれはたしかにメイビス家の・・待て!待ってください!少し確認したい!」

 

「ふむ・・・これだけの失態をしておいてさらに待たせるか・・・貴様名を名乗れ。この件は、領主に厳重に抗議させて貰う。それとそこで伸びている7人は、捕縛して連れて行かせて貰う。貴様に拒否権はない。これは王国法に則ったものだ。どうも、衛士にあるまじきことを常からしているようだし、場合によっては大規模な粛清が必要かもしれん。」

 

 そうグレイスが告げると、偉そうな奴は、

 

「もう少しだけお待ち下さい!今領主邸に使いの者をやっています。何卒!」


と頭を下げて言った。

 

「私は名を名乗れと言ったはずだ。どこの誰とも知れぬ者のことは信じぬ。なんなら、貴様らをすべて打倒してから、領主邸にそのままいっても良いんだぞ。」

 

と言うと偉そうな奴は観念したのか

 

「私は衛士長をしているドロスと申します。お名前を伺っても?」

 

「私はメイビス家第三公女リディア・リヒャルト・メイビス様の騎士グレイス・リュースと言う。」

 

 そう告げると、衛士長はますます冷や汗をかきながら、すでに顔色は蒼白になり、

 

「・・・グレイス・リュース?・・・王国の5剣姫の一人じゃないか・・・嘘だろ?」

 

と小声でぶつぶつ言っている。


 グレイスはさらに追い打ちをする。

 

「信じられぬか?ならば仕方がない。信じさせてやろう。」

 

 そう言いながら殺気を最大で放つ!その圧に衛士達は皆震えている。

  

 中には尻餅をつたり武器を落とすものもいる。

  

 なかなか良い殺気だね。

 

「わかった!わかりました!信じます!信じます!」


 衛士長は粟を食ってそう言った。

 

「ならば結構。にしても衛士の質がこうも落ちているのはどのような理由か。答えよ衛士長。」

 

 グレイスがそう言うと、

 

「その問には後ほどわたくしから答えさせていただきます。」

  

と声が響いた。

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