第二章 バルムス出会い編

第14話 街へ向かう(1)

「朝か・・・二人共よく寝れたかな」

 

 昨日は結構遅くまで話し込んじゃったからね。

  

 まあ、いろいろ衝撃の話だっただろうし、仕方がないのかもしれないけど・・・よく信じてくれたもんだ。

 

 リディアさんの話では、バルムスまであと二日って言ってたなあ・・・急ぎならいくらでも方法あるけど・・まあそこは流れで行こうかね。

 

 とりあえず朝ごはんの準備でもするか。

 

 僕はストレージからパンとミルク、あとべーコンを取り出してそれぞれ火にかけた。

  

 辺りにいい匂いが立ち始めたところで、馬車のドアが開いてグレイスが起きてくる。

 

「おはよう。いい匂いだ。」

 

「おはよう。よく寝られた?顔洗うならそこの樽に入ってる水を使うといいよ。」


 僕はパンにベーコンを挟みながら声をかける。

  

 グレイスは首を傾げている。


 どうしたんだろう?寝違えり?

 

「いや・・・この樽どうしたんだ?寝る前は無かっただろう?」

 

 グレイスは桶で水をすくいながら言う。

 

「ああ・・それは二人が寝てる間にストレージから出しておいたんだよ。」

 

「ストレージ?なんだそれは?」

 

 あれ?これってこの世界の魔法じゃないの?ジードから教えてもらったんだけど。

 

「ん?こうやって異空間を作って中に物を仕舞っておけるんだよ。この中は時間が経過しないからね。重宝してるんだ。ていうかこの世界の魔法って聞いたんだけど・・・」

 

 顔を洗って、口の中をゆすいだグレイスは、首を振りながら

 

「少なくとも私は知らない。今は失伝しているか秘匿されているかだろうな。つくづくとんでもない存在だったんだなその魔神は。そのパンなどもそこから出したのか?美味しそうだ。」

 

「そうだよー。ちなみにもうすぐできるけど姫様起こさなくて良いの?」

 

 僕がそう言うと、グレイスは馬車を向いて「そうだな。起きていただくか。」と言いながら馬車の中に入っていった。

 

 僕は朝ごはんを載せて準備をする。

  

 すると、ドアが開く音がして「おはようございます。」と言いながらリディアさんが出てきた。

 

「おはよう。疲れはどう?ご飯出来てるから食べよう。そこの水使っていいからね。」

 

「・・・これどうしたんですか?」

 

 ・・・またか。

 僕はグレイスにした説明を繰り返す羽目になった。

 これからは二人いるときに説明しようっと。

 

「「「ごちそうさまでした。」」」僕がそう言って手を合わせると二人も真似する。

 

 なぜ二人が真似しているのかというと、昨晩の食事後、僕がこれをしていたら、不思議に思った二人が質問してきたんだ。


 これは、命を頂くことや、作って貰ったことなんかへの感謝を示すためだよ、と教えてあげると、その考え方は素晴らしいと言いはじめ「いただきます」と「ごちそうさま」を使い始めたんだ。


 まあ、僕もいい考え方だと思うからいいんだけどね。

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