あくま110番の家
高井カエル
第1話
〈こども110番の家〉
PTAや自治体などが主な活動主体となり、子供が危険を感じたときや助けを求めてきたときに、子供を保護して警察などに通報することに協力してくれる家や施設のこと――。
ドンドンドンッ! ドンドンドンッ!
「開けて! 早く開けて!」
幼女の叫ぶ声がして、俺は扉は開けた。
「おじさん! 早く中に入れて! 助けて!」
「……嫌だ」
ドダンッ!
俺は扉を閉める。非常だとは思わないでくれ。これには訳がある。
「ヤダヤダヤダ! 入れて! お願い!」
仕方なく扉を開ける。俺は目をはらす幼女を見下した。
「何人目だと思う?」
「え?」
「お前で何人目だと思う?」
「そ、それは……」
「5人目だ! いいか! ここは保育園じゃねえんだ! 他を当たれ!」
「でも、扉にちゃんと書いてあるよ! ほら!」
幼女は扉を指さした。
扉には、丸く黒いおどろおどろしい紋章が書かれていた。いや、刻み込まれてい
た。
「ここは〈あくま110番の家〉なんでしょ!」
「そんなものは知らん! 俺は書いてない。頼んでもいない。よって、お前ら悪魔を助ける義理はない」
「でも、あいつらが追ってきてるんだよ!」
「お前らの事情は知るか。俺は仕事で忙しいんだ」
扉が閉ま……らない!
振り返ると、幼女の首がはさまっている。
「お願い! 何でもするから!」
「その執念が恐い!」
「とにかく入れて!」
「……事が済んだら出てくか?」
「出てく! 出てくから!」
「……10分だけだ」
「ありがとう!」
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