悪魔狩りをしてた僕が、明るい僧侶と地下鉄に乗って生き別れの兄に会いにいく

アイスティー・ポン太

第1話 兄さん、生きていたのか!

「トキオ、クニオ兄さんに会いたくないか?」

 17歳になったばかりの僕に、ニコライおじさんは突然こう言った。

「クニオ兄さんは、10年前の災害で父さんと母さんと一緒に亡くなったんじゃなかったの?」


 10年前……それは世界中に突如として現れた「悪魔」と呼ばれる存在達によって世界が崩壊しかけた年だ。人類は悪魔から逃れるため、地下へと逃げ込んだ。

 当時7歳だった僕は訳も分からずとにかく周りの人々と共に逃げた。その時に家族と離れ離れになってしまったのだが、後に近所に住んでいたニコライおじさんから両親が悪魔に襲われて亡くなったと聞いた。その後は両親の代わりにニコライおじさんが僕を育ててくれた。悪魔にやられないために、そして自分ひとりでも悪魔を倒せるようにおじさんから「悪魔狩り」としての技術を教え込まれた。


「いや、お兄さんは行方不明になっただけで、あの時悪魔にやられたわけではなかったんだ。ただ、まさか今でも生きているとは私も思わなかったよ。」

 

 僕はてっきりクニオ兄さんも亡くなっていたものだと思っていたが、生きていたのがわかった途端に嬉しい気持ちで胸が一杯になった。普段は信じていない神様にさえ感謝したくなったくらいだ。

 

「おじさん、兄さんは今どこにいるのですか?」

「隣町のヘリオスってところだ。一駅しか離れてないが着くまで5時間は掛かるな」


 この地下世界では都市間を移動する際の手段が地下鉄しかない。かなり不便だが、悪魔たちが侵入してくる経路を絞るためだろう。また一部の地下都市が悪魔に侵略された時に、他の都市へ悪魔が侵入してくるまでの時間を稼ぐため、都市間の距離はかなり空いている。


「ヘリオスかぁ。未成年料金でもちょっとお金百円ほど足りないなぁ……」


 現在は紙幣の大部分が焼失したため、硬貨を軸とした貨幣のやり取りが主流だ。そして、僕たちが暮らしている町「マロニエ」では「円」を基軸通貨としている。

 ここでいう百円は昔の「円」の100倍ほどの価値があるので、過去の価値に換算すると実質10000円といったところだろう。17歳にそれだけの大金は用意できない。


「トキオ、車両の護衛として乗ればタダで乗れる上に報酬ももらえるぞ」


 なるほど。確かに地下鉄も悪魔の襲撃に備えて悪魔狩りを護衛として募集しているが、タダで乗車できるのは知らなかった。やはり地下鉄は僕たちのような一般庶民には馴染みの無いものなのだと改めて実感した。


 翌日、駅の警備隊や駅長に「ヘリオスまで護衛として乗せてください」と頼みに行ったところ、本来は未成年を護衛として雇ってはいけない規則らしいが、人手不足なのだろうか。何とか乗せてもらえることになった。

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