第30話 それはどこまでもまっすぐで歪な恋
父が愛した人は私を産んだ引き換えに死んだ母だった。私には目もくれない。
なら、母になればいい。母の紅を引いて、母の着物をまとって、父を誘う。返ってきたのは、汚らわしいものを見る、凍えた月のように冷たい父の目。
諦めた私は母のベッドで喉を掻き切った。父が愛した母の居場所を汚すように。
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