夏の思い出──③
◆
「ごちそーさまでした!」
「はい、お粗末様でした」
美南と冬吾が起きてきて、無事朝食を食べ終えた。
相変わらず朝らかすげー量を食うな、冬吾は。
美南は健康食オンリーだけど、珍しくエネルギーになるものを食っていた。体が疲れていて、カロリーを欲してたんだろう。
「美南嬢、今日はどんなプランで過ごす?」
「何も決めてませんよ。なので自由に過ごしましょう。海に行ってもいいですし、部屋でのんびりしてもオーケーです」
自由に、かぁ。
となると俺は美南と行動することになるな。冬吾専用ストーカーの玲緒菜は、当然冬吾と一緒だと思うし。
「冬吾はどうする?」
「昨日の疲れも残ってるし、もう少し部屋でゆっくりしたいかな。玲緒菜は?」
「私も、とー君がゆっくりするならゆっくりする」
うーん。じゃあ俺らものんびりしようかな。冬吾の言う通り、少し疲れも残っている。
どうせ2人でビーチに行っても、海に浸かったり砂浜で遊んだりするくらいだしなぁ。
「裕二君、私たちはビーチ行きましょう!」
「え?」
おめめキラキラで俺を見る美南。
俺の経験にもとずく本能が警鐘を鳴らしている。
何か期待してるような、企んでいるような……そんな時にする顔だ。
「……俺はいいけど、美南は疲れてないのか?」
「はいっ、元気もりもりです!」
昨日あれだけ遊んだのに、体力おばけか。
まあ美南が行きたいって言うなら、俺もそれについて行くけどさ。筋トレで体力付けててよかった。
「じゃ、行くか。冬吾、伊原。今日一日は自由行動ってことで」
「了解。玲緒菜、行こうか」
「ん。夫婦水入らず」
と、2人は揃って部屋へ戻って行った。
「(ふふふ。計画通り、です)」
「何がだ?」
「ひゃんっ!? ゆ、裕二君っ、そこは難聴系主人公の実力を発揮する場面ですよ!」
「別に難聴系主人公を名乗ってる訳じゃないんだが」
「世の難聴系主人公は都合のいい耳をしてるんですから、裕二君も都合のいい耳になるべきです」
「難聴系主人公と俺に失礼なこと言ってるの気付いてる?」
というか、これだけ近くにいて今の小声が聞こえなかったら病院行くレベルだぞ。
「と、とにかく気にしないでくださいっ。あ、私お皿洗ってから行くので、先に着替えて待っててください!」
「お、おう?」
……怪しい。怪しすぎる。
でもいつまでも怪しんでる訳にもいかないし……お言葉に甘えて、先にビーチに言ってるか。
昨夜のうちに洗ってもらっていた水着を着て、ビーチに降りる。
今日も今日とていい天気だなぁ。
パラソルの下で、海を眺めて待つこと30分。
別荘の方から、水着姿の美南が降りてきた。
けど、昨日のレースアップのビキニとは違う。いわゆるモノキニと呼ばれる水着だ。
前から見たらワンピース型。後ろから見たらビキニ型。
がっつり胸元が開いていて、黒い布地が美南の白さを際立たせている。
「お待たせしました、裕二君!」
「いや、大丈夫。昨日とは違うんだな」
「はい! 3泊4日分の水着を持ってきました! 裕二君を飽きさせないことに定評のある美南ちゃんですから!」
「美南はそこにいるだけで俺を飽きさせないぞ。見てると面白いし」
「でへへ〜。照れま……あれ? 今私貶されてる?」
「褒めてる褒めてる」
あと可愛さでも俺を飽きさせない。ずっと見てられる。マジ女神。
「どうです? 似合ってます?」
「ああ。さすが読モやってるだけあって、何着ても似合うな」
正直、たまりません。
昨日のビキニも良かったけど、こういうタイプもそそられる。
美南の曲線美に沿ったようなデザイン。とても眼福です、ありがとうございます。
「ふふふー、お楽しみはここからですよ!」
「お楽しみ?」
「はいっ、こっちです!」
美南に手を引かれて、砂浜から岩場に移動する。
自然の壁と大海が広がるばかりで、別荘からも死角になっていた。
「ここに何かあるのか?」
「はいっ、ひと夏の思い出が!」
「ひと夏の思い出? ……って!?」
ちょ、美南さんっ、近くないっすか……!?
妖艶な笑みを浮かべ、密着してくる美南。
フェザータッチで俺の胸に触れ、股の間に脚を入れて来た。
「み、美南、何を……!?」
「何って、ひと夏の思い出ですよ。お、も、い、で。あむっ」
「ひぅっ……!?」
く、首甘噛みするな……!
でも外という開放的な空間と背徳感で、ちょっと……いやだいぶヤバいっ。
「はっ!? まさかひと夏の思い出ってこういう……!?」
「むふふ、気付きましたか。前にも言いましたよね。夏のビーチでヤッてみたい、と!」
確かに言ってた……気もする。
いやでも、まさか今日がそれだとは思わないじゃん!?
「今高瀬君と玲緒菜ちゃんは部屋でまったりしています。ここには私と裕二君の2人きり。思う存分自分を解放できますよ」
「え、いや、そのっ。それはまずいんじゃ……!」
「いいんですか? こんな経験、そうそうできるものじゃありませんよ?」
耳元で囁かれ、肌と肌が密着する。
あ、これ、やば……!
「さあ、裕二君。は、い、と、く、しましょ♡」
プツンッ──。
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