初デート──記念

「やってしまいました……」

「まあ、あの場面でチンアナゴはないよな」



 フォールダウンが終わり、近くのベンチで休むことに。

 それから10分経つが、美南はまだ手で顔を覆って落ち込んでいた。



「うぅ、穴があったら入りたい……」

「まあまあ。最初に見たのがチンアナゴだったし、あのときの子供達のやり取りも見てたんだ。思い浮かんだのがチンアナゴでもしょうがないさ」



 流石の美南も、大衆の面前でチンアナゴは恥ずかしかったらしい。



「……待てよ。私は女……穴があったら入りたいではなく、穴があるから入れてほしいと言った方が正しいんじゃ……?」

「あ、そういう所はいつも通りなのね」



 逆に安定感があって安心するわ。

 念の為に買っていたペットボトルのお茶を美南に渡すと、感謝の言葉を口にして受け取った。



「ぷはっ……ふぅ。ようやく落ち着いて来ました」

「朝からずっとテンション高かったもんな」

「あはは……実は昨日も余り眠れてなくて……」



 遠足前の子供か。



「もう少し休むか?」

「そうですね……出来れば休みたいです」

「じゃ、肩貸すから好きなだけ眠ってな」

「ん……ふあぁ……ありがとうございます……」



 美南は小さく欠伸をすると、肩に頭を乗せて寝息を立てた。

 寝不足、水族館でのはしゃぎよう、慣れない絶叫系アトラクション。

 それに普段からテンションが振り切れてるような女の子だ。そりゃあ疲れるか。



「くぅ……くぅ……」



 ……可愛い寝顔だな。



「いつもお疲れ様、美南」






 3時間後。



「くかぁー……」

「あの、そろそろ起きてくれません?」



   ◆



「ごめんしゃい……」

「気にすんな気にすんな」



 結局美南は15時過ぎまで爆睡した。

 俺は本当に気にしてないのだが、美南は気にしている様子。



「せっかくのデートなのに、私ばかり爆睡してしまうなんて……」

「まだ閉園までは時間があるんだし、大丈夫大丈夫。それに眠いままじゃせっかくのデートも楽しめないだろ?」

「うぅ、裕二君優しすぎます……」



 そうかな。好きな人が辛そうだったら、こうするのが普通じゃない?

 うーん……世の中の彼氏はどうしてるのやら……。



「さあ美南。まだまだ時間はあるよ。あとちょっとでイルカショーもやるみたいだし、時間まで楽しもう」

「……はいっ……!」



 この日の残りの時間、俺達は限界いっぱいまで絶景島シーパラダイスを楽しみ。






 ラブホテルへ来ていた。






「…………」



 備え付けのガウン姿でクイーンサイズのベッドに座る俺。

 美南はご機嫌なのか、鼻歌交じりにシャワーを浴びている。



「……まさか、踏み切りに車が止まってそのまま事故になるとは……」



 幸い死人も怪我人も出なかったらしいが、明日の朝まで電車は運休。帰るに帰れなくなった。

 まあ柳谷家に連絡したら迎えに来てくれるそうだが、そんな時見つけたのがこのラブホテルだった。



『裕二君、さっきの失敗を挽回させて下さい』



 ホテルを見つけた美南が、真剣な顔でそう言った。

 あの後も楽しんでたみたいだけど、どうやら心の隅ではさっきのことをずっと考えてたらしい。


 だが……美南はまだ、俺の裸を見ると気を失う。

 大丈夫なのだろうか……。

 まあ気絶してもここでゆっくりとして、明日の朝に帰ればそれだけでいいけど。


 なんてプランを考えていると、浴室から美南が出て来た。

 俺と同じようにガウンを羽織っているが、その妖艶で圧倒的な肉体美は隠しきれていない。

 顔も、首も、鎖骨も、僅かに見える谷間も興奮のためか赤くなっている。



「裕二君、今日は私も覚悟を決めてきました。もう、同じ失敗は繰り返しません」



 ガウンの前ので結んでいた紐を解き……その場に落とすように、服を脱いだ。


 現れたのは、レースやフリルがあしらわれた黒いランジェリー。

 所々金色の刺繍が施されているが……ブラジャーの真ん中に穴が空き。ツンと立った2つのピンク色の突起や、下もスケスケで……まさしく勝負下着だ。


 俺は美南の体を見て気絶するほどウブではない。

 でも……その肉体美に目を奪われ、俺の体の中心は血液を集めていきり立っていた。



「美南……綺麗だよ」

「あ、ありがとうございます。……こんなこともあろうかと、この下着を持って来て正解でした……裕二君」

「うん?」

「裕二君は、そのままでいて下さい。……多分、大丈夫です」

「だ、大丈夫、て……」

「今私、すごく興奮しています……でも、頭の中はすごく冷静で……多分ですけど、倒れずにやり切れると思います」



 俺の股の間に座り込み……俺の脚に手を掛けた。

 細く、柔らかく、熱い指が俺の太ももを撫でる。


 まるでサキュバスに撫でられてるかのように、触れられている部分が敏感になっていた。



「み、なみ……」

「裕二君……すごく大きくなってます……」

「そ、そりゃ、こうなるとな……」

「この部分は調査しても報告は入れさせませんでしたが……日本人平均を大きく上回ってそうですね」

「し、知らん。測ったこともないし……」



 まるでテントのようにガウンを押し上げている俺の息子。

 美南はそんな俺の息子を指先で突き。



「裕二君……今楽にしますからね」



 そして、俺の着ているガウンに手を掛け──。

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