第41話 プラン様の凱旋
その日、花の国フラワーエデンでは、その時を今か今かと待ち焦がれていた。
「プラン様……本当に帰って来てくださるんでしょうか……」
「ああ……! プラン様……! 私、まだ一回もプラン様に抱きついてないのに……!」
「……プラン様に会いたい!」
街の中、ぎゅっと胸のところで手を握っているのは、この国に住まう全ての少女たちだ。
国の外に肥料を採りに行ったプラン。
ユグドラシルフラワーを咲かせようとしてくれているプラン。
そのプランが、もうすぐこの国に帰って来るとのことだった。
そのために、この国の少女たちは今か今かと待っている。
プランはすでに、この国の少女たちに大人気の存在で、しかし、それは当たり前のことだった。
カレストラを守ってくれた時点でもそうだったし、プランがこの国に来てから、この国はかなりいい方向に向かっている。
その上で、何も綻びが出ていない。これはプランだから、成せていることなのだ。
そして、実際にこの目で見て、接したプランは優しい少年だった。あと、純粋に彼女たちのタイプだった。
どこか頼りなさそうに見える少年。庇護欲をそそる。
「「「「プラン様……。抱っこしたいっ」」」」
一度でいいから抱っこしたい。
そして、この胸に顔を埋めさせて、甘やかしてあげたい。
そんなことを思い始める彼女たち。
ああ……早く帰ってこないかな。
国の中央。
転移の魔法陣が刻まれている所で、彼女たちはいつプランが帰って来てもいいように、待機していた。全国民が、だ。
その時だった。
「……見て! 魔法陣が!」
「「「ああー!」」」
魔法陣に、反応があった。
つまり、ついにその時が来たのだ。
プランの帰還。
この魔法陣を動かせるのは、実はリーネただ一人である。
カレストラに仕えている彼女は、カレストラと同様にこの国のトップにいるのだ。
そんな魔法陣に反応があり、そこから現れたのは、待ち焦がれた少年、プランだった。
「プラン様。到着しました。皆さんが待っていてくれたようです。せっかくですので、手を振ってあげてください」
「は、はい」
帰って来たリーネがぐいぐいと、プランの背中を押す。
プランは緊張している様子で、みんなの前に立つ。
そして、恥ずかしそうに、挨拶をしてくれた。
「あ、あの、ただいま帰りました」
その瞬間だった。
「「「「キャ〜〜〜〜〜〜!!!!! おかえり〜〜〜〜〜〜〜!」」」」
「む、むぐっ」
群れだった。
黄色い声援をあげた彼女たちが、一斉にプランの元へと駆け寄り、頬を真っ赤にしながら、プランを抱きしめた。
たくさんの女の子に囲まれ、その柔らかさに包まれる。
その甘い匂いを嗅いだプランは、真っ赤な顔になりながら、照れていて。
「ふふっ。プランくん、やっぱりモテモテですね」
「ええ。プラン様はとても素敵な方ですので」
プランが帰って来たことを察したアリアとカレストラも城から出て、プランを出迎えてくれた。
「プラン様、みんなに持って帰ってきた肥料をお披露目してあげてください」
「こ、こうですか……?」
袋に詰めてきた肥料をプランが天に掲げた瞬間だった。
「「「わああああああああああああああ!」」」
それだけで、大盛り上がりの花の国。
太陽が降り注ぎ、国の中心にいるプランを明るく照らしている。
それは遥か昔、かつてこの国が誕生した日にも、披露された光景でーー。
こうして、草取りの少年、プランの凱旋が終わったのだった。
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