第55話 武器はバズーカなの!
「「パパー、抱っこ〜」」
そう言って、小さい子二人が俺の服を引っ張りながら抱っこをせがんでくる。
だから、俺はしゃがんで二人と目線を合わせると、そのまま二人を抱っこした。
三人目の眷属の子も、女の子だった。
小さい子で、メモリーネにそっくりな子。
髪の色は黄色で、毛先だけ銀色になっている。これは眷属共通で、テトラの髪の色を受け継いでいるのだ。
「それで、名前はなんていうのかな?」
「ジブリール。だから、ジル!」
「ジル……か」
それがこの子の名前らしい。
「ごしゅじんさまの中にいる時から、つけてもらってたおなまえだよ? 大切だから、うれしいの!」
「よしよし」
「えへへ!」
俺はそんなジブリールの頭を、抱きしめたまま撫でた。
この子もいい子で、愛くるしい子だ。
「テオ、小さい子が増えて、もっと賑やかになったね。嬉しいね」
テトラが俺の腕を抱きしめながら頬ずりをして、軽く俺の頬に口づけをしてきた。
「結局、どっちもチビっ子だったわね。……まあ、確かに可愛い見た目をしてるし、妹ができたっぽくていいかもしれないわ」
コーネリスも喜んでいる。
「それで、二人の特技はなんなのかしら?」
「「バズーカを撃てるんだよ?」」
「「「……?」」」
……バズーカ?
* * * * *
「「発射準備完了! 撃ちます! 発射……ッッ!」」
ボォンッッ!
「「「……本当にバズーカだった!!!!」」」
空中で何かが爆ぜた。あれは、火薬だ。バズーカだ。
山のてっぺん。そこに立っている青と黄色の小さい子は、大きなバズーカを肩に担いで、景気良く発射した。
「メモの武器はこれなんだよ?」
「ジルも遠距離攻撃が得意なんだよ?」
装着していたゴーグルを外し、首に巻いたバンダナを風で揺らすメモリーネとジブリール。
どうやら二人の武器は、遠距離型の武器らしい。
黒塗りの丸太のように太いそのバズーカは、魔力で作ることができるそうだ。魔力が尽きない限り、弾も無限。
迫力だけではなくて、もちろん、その威力も申し分なしのようだ。
「あ! 対象発見! メモは、ろっくおんしました!」
「ジルも、発射準備完了! いつでも、撃てます!」
晴れ渡る空。
ちょうどそこを飛んでいたのは、一体のワイバーン。
そのワイバーンも俺たちのことに気づいていて、獲物だと思ったのだろう。威嚇するような鳴き声を上げながら、こっちへと来ている。……しかしそれは自殺行為だった。
『グギャアアアアアアアアア!!!』
「「発射……ッッッ!」」
ボォンッッ! ボォンッッッッッ! ボォンッッッッッッッッ!
「「「……粉々になった!」」」
発射された砲弾。爆ぜるワイバーン。跡形も残らずに、消滅する。
二人の攻撃の衝撃で、山が揺れる。ズンッと俺たちの体内にも伝わってきて、耳がぼーっとなるぐらいだった。
「「とってもスッキリした!」」
満面の笑みで、嬉しそうにしているメモリーネとジブリール。
そして二人は照れたようにこっちに駆け寄って来てくれると、しゃがんでそれを迎えた俺にじゃれつくように頬ずりをしてくれた。
「「ごしゅじんさま、ちゅっ」」
右と左の頬に、それぞれ口づけをしてくれる二人。
……それで反応したのだろう。
「「あ……っ」」
メモリーネとジブリールの手の中に、腕輪が出現した。
「「腕輪だー」」
それは二人の『眷属の腕輪』。
メモリーネの腕輪の色は、青。
ふちの部分が銀色であしらわれていて、水色の宝石が埋まっている。
ジブリールのは、黄色だ。
ふちの部分が琥珀色であしらわれていて、オレンジ色の宝石が埋まっている。
「ごしゅじんさま、これ、ほしいです?」
「うん。くれるのならほしいかな」
「くれます! でも……その前にお腹が減ったから、ご飯を食べたいです!」
「ジルもぉ〜」
ご飯……か。
そういえばそろそろ、食事時だ。
まだご飯も食べてないし、ちょうどいい頃合いだ。
「だったら、ご飯にしよう」
「「さんせー!」」
二人が手を上げて、元気に答えてくれる。
となると、せっかくメモリーネとジブリールが出てきてくれたんだ。
初めて食べる食事は奮発したいな。
「月光龍さん。この山で採れる食料でオススメはありますか?」
『そうね……。ローカバイソンっていう牛の魔物がいるわ。私も普段はそれのお肉を食べてるの』
テトラが聞くと、月光龍さんが答えてくれた。
『気性が荒い魔物で、他の魔物を食べ尽くすから、定期的に間引いているの。食べても美味しいし、素材もいい感じのが取れるし、おすすめよ』
「だったら、それを探しながら、山菜とか木の実とかを集めるのもいいかもしれない」
出てきてくれたばかりのメモリーネとジブリールには、ここでゆっくりしてもらいながら、俺が探しにいこう。
「じゃあメモは、白い龍のおばあちゃんと一緒にいるの」
「ジルもー、ここでお留守番してるー」
『いいわ。ここで一緒に遊びましょうか』
「「コーネリスおねーちゃんもー」」
「……まあ、そうね。……しょうがない。特別に、このちびっ子たちの面倒でも見てあげるわ」
「「さすが、おねーちゃん!」」
「ふんっ」
髪の先をいじりながら、顔を逸らして言うコーネリス。
そしてコーネリスは俺とテトラのことを見ると、こんなことも言ってくれた。
「だから、ご主人様。いい機会だし、お母様と山菜採りデートでもするといいと思うの。せっかく、育ってきた村の近くに帰ってきてるんだもの。二人でのんびりしながら、楽しむといいんじゃないかしら」
「「おねーちゃん、気遣い上手ー」」
『ふふ。いい子ね』
「「コーネリスちゃん……」」
……ああ、なぜか泣きそうになった。
思えばコーネリスが最初に出てきてくれた時から、いろんなことがあった。
なかなか出てきてくれなかったコーネリス。ようやく出てきてくれたと思ったら、空を飛んで逃げて、俺たちの前からいなくなったコーネリス。
そんなコーネリスが、こんなにもーー
「ちょ、ちょっと、ご主人様、感慨にふけらないでよぉ……」
コーネリスが恥ずかしそうに、モジモジとしだした。
あの時からは考えられない表情だ。
「でも、本当にいいのかな」
「いいの! ご主人様にはあの時迷惑をかけたから、私だって成長したところを見せたいんだから。だから、私に任せてほしいの」
「……分かった。それじゃあテトラ、行こうか」
「うんっ」
俺はコーネリスの好意に甘えて、テトラの手を握ると、食材探しに行くことにした。
いつの間にか、頼もしくなったものだ。
それに報いるためにも、たくさん食材を集めないとな。
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