第5話 一匹は寂しい?

こんばんは、コリドラス探偵のダダちゃんです。

えっ?私の姿が見えない?

そうでしたか、失礼。

私、現在、隠れている身でして…。

コリドラスは、隠れるのが好きで止められないのです。

まぁ、だからこそ探偵に向いていると思ったのですが、なかなか事件というものに巡り合わなければ、解決にも至りませんね。

おかしいです、もっと華麗に活躍できると思ったのですが、なかなか上手く行きませんね。

…あれは、もしかしてデートってやつでしょうか?

ん?しかも、ミナミヌマエビのたしか、「エビミ」という名前のメスのエビさんだった気がしますが、一緒の男性はこの間のエビさんとは違う方ですね。

なんという事でしょう!

浮気現場を目撃してしまいました!

「探偵さん、随分な所に隠れてるな」

「ヌマさん」

「おうよ、元気か?」

「ヌマさん!大変です、今、浮気現場を目撃してしまいました!」

「ん?もしかして、あそこのアベックか?浮気ってあんさん、ミナミヌマエビにそんなのねーよ、子孫繁栄の為しょうがねー行為だし、あんさんもそりゃ、異性のコリドラスが何匹か一緒に泳いでたら繁殖くらいするだろ、そういうもんだ」

「やだっ、いやらしい!私はそんな!」

「なに急に、恥じらう乙女みてーな事言ってんだ、あのなぁ、そこらへんにいるエビは、みんなそうして生きてんだよ、オスメスいて、繁殖して、子孫残して、生態系ってのは、そうやって生きてんだよ、なにも気にすることねえ」

「私が乙女かどうかは置いといて、そういう物なんでしょうか?」

「生きる者、皆そんなもんよ」

「そうですか」

その時でした、やけにフェロモンを感じたのです。

「あらぁ、ヌマさーん♡やだー、こんなとこで会えるなんて♡」

「おぅ、スナックのママじゃねーか」

「もぅ、最近、お店に顔出さないからぁ、心配してたのよぉー?」

「すまんねぇ、仕事が忙しくて」

「探偵さんだっけー?世の中、色々あるから大変ねぇー?でもー!私だって大変なのよぉー?私の話、沢山聞いてよねー?」

「わーってる、わーてるよ、おっそうだ、今から店行くか」

「うれしー!じゃ、早く行きましょ?」

「おう、じゃ、コリドラスさんよ、またな」

「コリドラス?」

「おう、今、ここにいるだろ?」

「どこー?」

「えぇ、ヌマさん、またお会いしましょう」

「やだー!声だけ聞こえるわー!こわーい!」

「大丈夫だよ」




ヌマさんは、美人なエビさんと一緒に行ってしまわれました。

あれが、噂に聞く【スナック 土管】のママ、「ミナミさん」でしょうか?

随分、お色気満載の人でした。

なんだか、私もああやって見せられると、パートナーという相手が欲しくなってきますね、羨ましです。

私がこの水槽に来たばっかりの時は、もう一匹のコリドラスさんがいました。

同じコリドラスですが、種類が違い、また、野性的な方でした。

同じような所から一緒に来たのですが、入れられていた物は違うのですが、ずっと一緒に長旅をしてきた相手でした。

とても懐かしいです。

しかし、そのコリドラスさんは、この水槽に来て直ぐの頃、亡くなりました。

私もまだ、水槽には慣れてなく、怯えていましたが、そのコリドラスさんの死骸を見て、やけに悲しかったのを覚えています。

やはり、そう考えると、一匹では寂しいのでしょうか?

しかし、無理に混泳させて、合わない者同士だと、縄張り争いになって、お互い傷つけあってしまうとも聞いてるので、どちらが良いのかは、判断し難いですね。




隠れるのを止めて、気分転換にお散歩していたら、ミナミヌマエビさんの抱卵されている所に出会ってしまいました。

大事そうに卵を守り、産み付け、子孫を残していくのですね。

確かにとても重要な事です。

私も、寿命が近付いている気がします。

いつかはこの水槽内で、最後を迎えるのですね。

私はいつそうなるのかは分かりませんが、一度で良いから大人気の探偵さんになりたいものです。


              第5話 終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る